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沸(にえ)
「荒沸交えて叢づく」(あらにえまじえてむらづく)とは、大きい沸粒(にえつぶ)が不規則に集まっている状態のこと。
沸の粒が特に大きいものを「荒沸」(あらにえ)と呼ぶ。したがって、「荒沸交えて叢づく」(あらにえまじえてむらづく)とは、「匂口(においぐち:刃文の境界線)や刃中、平地等に沸の目立つ沸出来(にえでき:沸が刃文全体を覆うような様)の作の中に、所々、均一ではなくムラに荒沸が観て取れる」という意味である。
「輝く小沸つき」(かがやくこにえつき)とは、きらめく星粒のような粒子が、美しく光輝くように主に刃文(はもん)に付く様。
なかでも粟田口物の刃中の小沸は、とても美しい。
「小沸が微塵に付き」(こにえがみじんにつき)とは、沸(にえ)の中でも小粒のものが、ごく細かに付いていること。
上工の刀に対する表現として、使われることが多い。
「小沸よく付き」(こにえよくつき)とは、小粒の沸(にえ)が刃文(はもん)の中に詰まるほどたくさん付いていること。
新刀期以降の日本刀に多い。
「沸が凝る」(にえがこごる)とは、沸(にえ:焼入れによって刃境[はざかい]や刃中[はちゅう]に生じた刃文[はもん]の構成要素)が、集中的に1ヵ所へ寄り集まっている状態のこと。
「沸崩れる」(にえくずれる)とは、沸(にえ)が不規則に付き過ぎて、刃文(はもん)の形を崩してしまっていること。
字のごとく「崩れて」しまっているので、褒め言葉ではない。
「沸筋入る」(にえすじはいる)とは、沸が筋状に連なっているもの。
さらに帽子に沸筋(にえすじ)が集まると、「掃き掛け」(はきがけ:箒で掃いたような模様)になる。
「沸匂深く」(にえにおいふかく)とは、沸(にえ)、匂(におい)の双方が混在しつつも、厚くはっきり観えること。
名刀の働きを表す言葉のひとつ。
こういう日本刀に出会うのが、刀剣好きの目標のひとつとされる。
「沸よくつく」(にえよくつく)とは、沸(にえ)がたくさん付いていること。
相州伝に多く、上作ほど美しい沸がよく付いている。褒め言葉のひとつ。
「乱れの谷に沸が凝る」(みだれのたにににえがこごる)とは、刃文(はもん)・乱れ刃の合間に、沸(にえ)がバラバラのものが集まって固まること。肥前刀の特徴。
「叢沸がつき」(むらにえがつき)とは、焼き入れの失敗により、ポツポツとした粒子がむやみにでき、刃文(はもん)や刃縁(はぶち)に付く様。荒沸(あらにえ)出来の物によく現われる。
刃縁にムラに付くからムラ沸と言う。
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