地鉄(じがね)
地鉄(じがね)
「乱れ映り鮮明に立つ」(みだれうつりせんめいにたつ)とは、地鉄(じがね)に現われる働きである映りに関する表現の一種。
1振の刀を明かりにかざして観ると、刀身全体が一色には観えず、やや白っぽく観える部分があったり、黒っぽく観える部分があったりする。その変化は、匂(におい)や沸(にえ)のつきかたや焼き入れによって鉄が硬化する度合いが一様でなく、結果として、部分ごとに硬さに差があることから、研磨によって微妙に凸凹ができ、乱反射することによって生じる物である。この変化を包括的に映りと表現する。
刀の制作された時代や国、作者によって現われ方の異なる映りの内、鎌倉期の備前国長船物に典型的に現われる、鎬(しのぎ)から刃先に向けて波打つ(匂口[においぐち]との間にできる影の部分も、波打つ)映りを「乱れ映り」と呼ぶ。この乱れ映りが、かなりはっきり現われている物を表現する。