平安時代の重要用語

曼荼羅 
/ホームメイト

「曼荼羅」(まんだら)とは、仏教のなかでも特に「密教」で考えられている世界観を分かりやすく表現した仏画。曼荼羅は、もともと仏教が誕生した古代インドのサンスクリット語で「本質を有する物」を意味します。この曼荼羅には幾つかの種類があり、宗派によって絵柄や世界観に違いがあります。日本においては、「真言宗」の世界観を表現した「両界曼荼羅」(りょうかいまんだら)が有名。両界曼荼羅は、「胎蔵界曼荼羅」(たいぞうかいまんだら)と「金剛界曼荼羅」(こんごうかいまんだら)の2つの世界からなり、それぞれ「理」(ことわり:真実)と「智」(ち:智慧[ちえ]と実践)という教えを伝えています。

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曼荼羅 
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「曼荼羅」(まんだら)とは、仏教のなかでも特に「密教」で考えられている世界観を分かりやすく表現した仏画。曼荼羅は、もともと仏教が誕生した古代インドのサンスクリット語で「本質を有する物」を意味します。この曼荼羅には幾つかの種類があり、宗派によって絵柄や世界観に違いがあります。日本においては、「真言宗」の世界観を表現した「両界曼荼羅」(りょうかいまんだら)が有名。両界曼荼羅は、「胎蔵界曼荼羅」(たいぞうかいまんだら)と「金剛界曼荼羅」(こんごうかいまんだら)の2つの世界からなり、それぞれ「理」(ことわり:真実)と「智」(ち:智慧[ちえ]と実践)という教えを伝えています。

両界曼荼羅

空海と両界曼荼羅図

804年(延暦23年)の遣唐使(中国王朝・唐へ遣わした使節団)にて唐で仏教を学んだ「最澄」(さいちょう:天台宗開祖)と「空海」(くうかい:真言宗開祖)により、日本へ密教がもたらされます。なかでも空海は、密教の正当な継承者とされる「恵果」(けいか:中国唐代の密教の名僧)から、後継者として指名されるとともにその奥義を伝授され、密教思想を図解した胎蔵界(たいぞうかい)・金剛界(こんごうかい)の両界曼荼羅を経典類や密教法具などとともに託されました。

恵果の「密教の教えは、その意味するところが広く深い。そのため絵画によってその意味を視覚的に示すことで、初めて弟子へ正しく伝えることができる」という言葉を深く刻んだ空海は、密教の布教に仏画が果たす重要性を強く認識。

日本へ帰国後、様々な仏画を画師(えし)達に描かせました。「東寺」(とうじ:京都府京都市)の「両界曼荼羅図」は、まさにその最たる物で、密教の到達した最高理念を説く「大日経」(だいにちきょう)と「金剛頂経」(こんごうちょうぎょう)の2つの経典をもとに、胎蔵界と金剛界の2つの世界を描いた仏画の傑作です。

胎蔵界曼荼羅

胎蔵界曼荼羅の概念図・配置図

胎蔵界曼荼羅の概念図・配置図

真言密教には、「胎蔵界と金剛界の2つの世界でひとつ」という考えが根本にあり、胎蔵界と金剛界は両界曼荼羅において必ず対で描かれます。胎蔵界曼荼羅は、経典「大日経」に基づき、密教の理を表すとされています。

全体が「院」と呼ばれる12の区画で分けられ、中央には、密教の本尊(ほんぞん:信仰対象)である「大日如来」(だいにちにょらい:宇宙、森羅万象とされる仏)が座す「中台八葉院」(ちゅうだいはちよういん)があります。その周りを、如来・菩薩・明王らの諸仏がいる院で囲まれています。

大日如来から遠ざかるにしたがい、諸仏の姿は小さく描かれ、その諸仏の数は全部で414体。円心円状に院を配しているのは、大日如来の慈悲が放射状に伝わり、教えが実践されていくなかで帰依(きえ:力にすがること)していく様子を表しているのです。

また、中台八葉院は蓮の花の形をしており、これは、蓮の種が芽生えて花開き、実を結ぶように、人は誰もが仏性に目覚め、大日如来と一体化できることを表現。考え方や生き方が違うすべての人を認め、肯定する大きな世界を具現化しています。大きな慈悲によって子どもを育てる母胎のようなイメージから、胎蔵界曼荼羅と呼ばれているのです。

金剛界曼荼羅

金剛界曼荼羅は、経典の金剛頂経に基づき、密教の智を表すとされています。智慧とは、一切の現象や現象の背後にある道理を見きわめる仏教用語。そして、金剛とはダイヤモンドのこと。つまり、大日如来の智慧は、堅固かつ常に輝きを放つことを意味しているのです。

全体像は、「会」(え)と呼ばれる9の区画(縦3段、横3段)からなり、本尊の大日如来は上段中央の「一印会」(いちいんえ)に大きく描かれるだけでなく、他の会の中心にも描かれています。

この9会は、9つの諸仏の集会(しゅうえ:集まり)という意味。悟りに至るまでの9段階を説いているため「九会曼荼羅」とも呼ばれています。なお、東寺の両界曼荼羅図において、金剛界曼荼羅に描かれている仏の数は、1,464体。

中央の「成身会」(じょうしんえ)の周縁部には、「賢劫千仏」(けんごうせんぶつ)という合掌する1,000体の仏の姿を描写しています。これらすべての諸仏が、最上部にいる大日如来の教えに導かれて、悟りに至る過程を示した図とされます。

立体曼荼羅

世界にも類がない仏教空間

空海は823年(弘仁14年)、「平安京」(へいあんきょう:京都府京都市)に朝廷が建立した東寺の運営を任されますが、その講堂に驚くべき曼荼羅を展開します。

曼荼羅は、これまで両界曼荼羅図のように平面図で作成されてきました。ですが空海は、密教の教えをより現実的に伝えるために、密教の真意を21体の諸仏によって三次元的(立体的)に表現しました。それが東寺にある「羯磨曼荼羅」(かつままんだら)で、一般的に「立体曼荼羅」として知られている物です。

東寺境内のほぼ中心、密教の根本道場として建てられた講堂に足を踏み入れると、21体の仏像が迫力ある姿で鎮座。その配置は、金剛頂経や鎮護国家の経典「仁王経」(にんのうぎょう)などを参考に、空海が独自に考案したものです。

具体的には、平面の曼荼羅図の中心に大日如来が描かれているように、横長の基壇の中央に大日如来を中心とする「五智如来」(ごちにょらい)を、その両側に各如来と関係の深い「五智菩薩」、仏法の守護神である「五大明王」(ごだいみょうおう)を安置。

そして周囲に「四天王」(してんのう)、「梵天」(ぼんてん)、「帝釈天」(たいしゃくてん)といった守護神の諸仏を配置して、寺域を巨大な曼荼羅としました。このような大規模な東寺の立体曼荼羅図は、世界にも類がなく非常に貴重な物です。

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