本甲冑(鎧兜)は、兜の錣(しころ)や草摺(くさずり)などに鮮やかな白色で毛引威(けびきおどし)された華麗な作品です。
兜は「鉄地錆色漆塗六十二間筋兜」(てつじさびいろうるしぬりろくじゅうにけんすじかぶと)と言い、兜鉢(かぶとばち)はやや膨らみ、先は緩く尖った形になっています。兜の前正中(兜の正面)は一筋のみ鍍金(めっき)で毛彫をした唐草紋様(からくさもんよう)で、眉庇(まさびし)や吹返(ふきかえし)には、白地藻獅子(しろじもじし)の絵韋(えがわ:絵の描かれた動物の革)が貼られている手の込んだ仕立です。さらに吹返表面には、金工で「四つ盛り釘抜き紋」が据えられています。
胴は横矧(よこはぎ:横向きの継ぎ目がある胴)にして白糸で素懸威(すがけおどし)をし、草摺は当世具足に多い7間5段。籠手(こて)や佩楯(はいだて)、臑当(すねあて)と呼ばれる「三具」は、草花文緞子(そうかもんどんす:数種の花を唐草風に織り出した織物)で統一されています。