本甲冑(鎧兜)は、垂(たれ)や前立挙(まえたてあげ)、当世袖(とうせいそで)、草摺(くさずり)にまで、惜しみなく金小札を使用した眩いばかりに美しい豪華絢爛な1領です。
特徴は、「南無阿弥陀佛」(なむあみだぶつ)の6文字の「念仏」が書かれた前立(まえだて)。念仏とは、浄土宗または浄土真宗において、ご本尊「阿弥陀如来」(あみだにょらい)への救済を願って唱えられる言葉のこと。命懸けの戦において、武将の勝利を叶える心強い至極の言葉であったと言えるのです。
同じく、南無阿弥陀佛を前立とした兜を被った武将として有名なのが、「森蘭丸」(もりらんまる)。森蘭丸は「織田信長」の小姓として、1582年(天正10年)「本能寺の変」まで、織田信長に尽くしました。
この甲冑(鎧兜)を所持していた人は分かりませんが、本甲冑(鎧兜)は、胴にも丸い龍の金蒔絵が描かれ、星の形をした鋲が打たれるなど、とても贅沢な仕様。このことから、経済的にゆとりのある人物が所持していた物だと考えられるのです。