本甲冑(鎧兜)は鹿角形脇立が人目を惹く、実戦的で纏まりの良い当世具足です。
兜(かぶと)は、鹿角を立体的に象った黒漆塗脇立(くろうるしぬりわきたて)が特徴的な、鉄黒漆塗十八枚張突盔形兜(てつくろうるしぬりじゅうはちまいばりとっぱいなりかぶと)。脇立(わきたて)とは、兜鉢の左右両脇に取り付けられた立物(たてもの)です。また、天辺が尖った兜を、「とっぱいなり」(突配形/突盔形)と呼びます。
錣(しころ)は、鉄黒漆塗りの板物五段紺糸素掛威(いたものごだんこんいとすがけおどし)。板札(いたざね)を用いて仕立てられた甲冑(鎧兜)を「板物」(いたもの)と呼びます。「素懸威」(すがけおどし)は、小札(こざね)を1枚ずつ細かく結び合わせず間隔を置いて、2本の縅糸を並べて縅していく(結び合わせる)連結手法です。はげしく怒った形相をした鉄黒漆塗りの烈勢面頬(れっせいめんぽお)は、鼻のある面頬である「目の下頬」(めのしたぼお)の一種で、顎下に錣と同形式4段の垂(たれ)が付いています。
胴は、金具廻を雁木篠黒漆塗(がんぎしのくろうるしぬり)とした鉄黒漆塗りの伊予札二枚胴具足(いよざねにまいどうぐそく)。板の端が重なるように階段状に並べて連結した篠(しの:細長い平板状の部品)を「雁木篠」(がんぎしの)と呼びます。草摺(くさずり)は帯状一文字の伊予札を素掛に威した、黒漆塗りの一文字伊予札五段七間(いちもんじいよざねごだんしちけん)。袖は鉄黒漆塗りの伊予札を六段にした構成です。
さらに、実用的な鉄黒漆塗りの篠籠手(しのごて)、黒漆塗りのカルタ佩楯(かるたはいだて)、鉄黒漆塗りの篠臑当(しのすねあて)の三具が揃っています。