「榎並屋佐兵衛」は、摂津国堺(せっつのくに・さかい:現在の大阪府堺市)在住の鉄砲鍛冶です。その銃身には、唐獅子牡丹に松の木の真鍮象嵌(しんちゅうぞうがん)、「銃把」(じゅうは:銃床[じゅうしょう]の一部で、引き金を引く際に手で握るための窪んだ部分)には、水車模様の据文金具(すえもんかなぐ:装飾に付ける金具)、そして「火挟み」(ひばさみ:火縄を固定し、引き金と連動させて火皿に火を点けるための金具)には竹の彫刻など、様々な意匠が施されています。
また、この他にも各部位に細かい彫金が見られることから、大量生産品ではなく注文作であったことがひと目で窺える、入念に作られた作品です。