扇
江戸時代
ぐんせんさんてん 軍扇3点/ホームメイト
「軍扇」は軍配団扇(ぐんばいうちわ)の1種で、武将が戦場の指揮具として用いた扇です。形式は時代によって異なりますが、共通の特徴としては、黒漆塗りで仕上げた骨と、地紙の中央に金色か朱色で太陽を模した円が描いてあることが多く、裏に月を表す円が描かれている軍扇もあります。
本軍扇は、漆をかけた竹が中骨に使用されており、地紙にも漆が施されているため、水に強いのが特徴。左上の軍扇は表裏とも、金箔押地に朱色の日輪が描かれています。
右上及び下の軍扇は、表裏とも同じ絵柄となっており、片面には金箔押地に朱色の日輪、もう片面には朱地に金色の日輪が描かれていて、3点とも補修の跡は見られず、状態が良い軍扇です。
扇の歴史は古く、平安時代頃には折りたたんで使用した扇の記録が残されており、現在一般に見られる末広がりの形を作る扇もこの頃に作られました。扇は、あおいで涼を取る以外に、儀礼や贈答の品、扇の上に花を乗せて贈る等、主に貴族の間で贈り物の道具として流行。
また、弓矢の的や呪具、舞踊、落語など、時代が進むにつれてその使用用途は幅広くなり、現在では海外でも、美術品や日用品として人気を集める道具となっています。
端午の節句のときには、甲冑(鎧兜)などと一緒に軍扇が飾られます。「陣笠」、「太鼓」、「軍扇」の3つをあわせて「三品」(さんぴん)と呼び、これは戦国時代、合戦の必須品だったことに由来。いずれも「戦争道具」としての意味はなく、「子の身を守り、健やかに成長しますように」という願いが込められています。