扇
江戸時代 中期
しゅうるしぬりこよみもんぐんばいうちわ 朱漆塗暦文軍配団扇/ホームメイト
「軍配団扇」とは、いわゆる「軍配」として知られる武具の1種。戦場において、軍の進退や配置などを指揮する際の合図として使用されていました。
通常の軍配団扇は、日の丸や月、家紋などの単純化された意匠を、表裏に蒔絵(まきえ:漆で描いた文様に、金や銀などの粉を蒔き付ける加飾技法)で施した物が多く見られますが、本軍配は、黒漆地の面には鳳凰の意匠が配され、朱漆地の面には「方位計算機」が付属されています。「方位計算機」とは、「九星気学」(きゅうせいきがく)という東洋占術に基づき、日時や方位の吉凶を見るために用いられた道具のこと。戦が盛んに行なわれていた時代には、占術や呪術といった類のものが戦局を読むうえで重要な意味を持っており、このような軍配団扇が必需品であったのです。
実際に、知略に富み武勇にも優れていた「織田信長」でさえ、僧侶であった「伊束法師」(いそくほうし)を、自身の呪術的な軍師として召し抱えていたと伝えられています。