「葵紋散金具 黒蝋色塗鞘 大小拵」は、紀州徳川家(きしゅうとくがわけ)伝来の正式殿中差し(せいしきでんちゅうざし)の大小拵(だいしょうこしらえ:打刀と脇差のセット)です。「正式殿中差し」は江戸時代の武士が公式の場で用いた拵で、基本的な決まりがあります。
鞘(さや)は黒蝋色漆塗(くろろいろうるしぬり:油分を含まない漆を塗る。艶やかな光沢が出る)。鐺(こじり)は、打刀が一文字(まっすぐ切ったような形状。切鐺とも)で、脇差が栗尻(丸みを帯びた形状)。金具は後藤家作の赤銅(しゃくどう:銅と金の合金)を使用。柄巻(つかまき)は黒色で、菱巻(ひしまき)を施し、菱の基本数は13個半。頭(かしら)は牛角を使います。
この拵様式は幕府の規定によるものではなく、幕府から大名への下賜刀がこの造りだったので、各大名もこれに倣い、自然と不文律になったものです。