目貫
江戸時代 後期
ぐんばいにさいはいのず きばためい おつりゅうけん
みぼくかおう めぬき
軍配に采配の図 際端銘 乙柳軒
味墨花押(四代・政信) 目貫/ホームメイト
本目貫は明るく、かつ優れた金無垢の地に、端正な文字で際端銘(目貫の側面に刻んだ銘)を配しています。緩やかな曲線と、作り込まれた腰のある姿が印象的。打ち出しが力強く、抜穴(目貫の透彫)の切れも秀逸です。表目貫に軍配、裏目貫に采配を表現。
軍配には七星(しちせい:北斗七星のこと)が施され、星と星の間は丸鏨(まるたがね)で刻み目を入れて繋いでいます。緒(お:紐のこと)は繊細な毛彫(細い線で文様を彫ること)です。軍配、采配、それぞれ柄の上下にある金具部分は、鏨で細かな点を打ち出し、石のような質感で、裏側には、表目貫と裏目貫を合わせてはめ込むための根があり、根の周りには力金が付けられています。
本目貫の制作者は、「濱野派」(はまのは)を興した「政随」(しょうずい)の4代目にあたる「政信」(まさのぶ)です。政随は、奈良派の名工「利寿」(としなが)に学び、独立後は多くの優れた弟子を輩出。濱野派を奈良派と並ぶ一大流派へと発展させました。本目貫の銘にある「乙柳軒」、「味墨」は、濱野派にとって由緒ある号であり、政信を含む代々の名工が使用しています。