宮城県仙台市の「仙台市博物館」(せんだいしはぶつかん)は、江戸時代に仙台藩を治めた伊達家が仙台市へ寄贈した資料を所蔵、展示している博物館です。伊達家に伝わった武具類の多くも仙台市博物館に収められており、本甲冑(鎧兜)と「黒漆塗五枚胴具足」(伊達政宗[だてまさむね]所用、重要文化財)の2領は、その代表格と言えます。本甲冑(鎧兜)は安土桃山時代に作られたとされ、重要文化財になっています。
本甲冑(鎧兜)の形式は、頭を守る「兜」(かぶと)から足に巻く「臑当」(すねあて)までを一揃いにあつらえた「当世具足」(とうせいぐそく)。「兜鉢」(かぶとばち)の表に黒毛を植え、「軍配」(ぐんばい)の「立物」(たてもの)を付けた兜に、「胴」(どう)や「小具足」(こぐそく)に押された銀箔の装飾と、各所の菊桐紋蒔絵(きくきりもんまきえ)から、華麗な桃山文化の影響が感じられます。
一方、胴は室町時代までの「胴丸」(どうまる)を受け継いだ「札」(さね)仕立ての「丸胴」(まるどう)で、各部品の意匠も定型化する前の特徴がみられるため、本甲冑(鎧兜)は当世具足の様式が整う前段階の資料と言われるのです。
本甲冑(鎧兜)は、伊達政宗の年譜である「貞山公治家記録」(ていざんこうじかきろく)によれば、1590年(天正18年)の「豊臣秀吉」(とよとみひでよし)による「奥州仕置」の際、伊達政宗が豊臣秀吉から与えられたとされます。史料の記載と甲冑(鎧兜)の時代的特徴が合致する重要な1領です。