山形県米沢市に鎮座する「上杉神社」（うえすぎじんじゃ）は、戦国時代に越後国（現在の新潟県）で活躍した「上杉謙信」（うえすぎけんしん）を祀る神社。
上杉家は「関ヶ原の戦い」後に出羽国南部の米沢藩（現在の山形県米沢市）に移りますが、上杉謙信の霊も引き続き祀られ、明治時代に神社が建立。上杉家に伝来した宝物類も併せて納められ、現在は境内の稽照殿（けいしょうでん）にて収蔵、展示されています。
本甲冑（鎧兜）は、上杉謙信の所用として特に大切に伝えられてきた「腹巻」（はらまき）1領。「胴」（どう）と「袖」（そで）は中世甲冑の基本形である「小札」（こざね）の「毛引威」（けびきおどし）で、伝統を感じさせますが、「兜」（かぶと）は「阿古陀形筋兜」（あこだなりすじかぶと）に代わり、より頑丈な新式の「六十間筋兜」（ろくじっけんすじかぶと）を採用。
後頭部から首を守る「錣」（しころ）も、首筋へ近い部分に「内錣」（うちじころ）を加えた二重構造とし、戦いが激化した当時の様子を示します。「前立」（まえだて）には修験道の神である「飯縄権現」（いづなごんげん）が表され、上杉謙信の信仰がうかがえます。
上杉神社には、他にも上杉謙信が用いたとされる甲冑（鎧兜）がありますが、本甲冑（鎧兜）はそれらより格式が高く、儀礼など晴れの場で着られ、威厳を添えたと考えられます。また、特殊な構造の錣は、江戸時代の米沢藩主の兜にも受け継がれました。
