本太刀は、鎌倉時代後期に備前国(現在の岡山県東部)で活躍した刀工「長船長光」が作刀した太刀です。長さ75.0cm、反り2.9cm、元幅3.0cmの大きさで、銘に「熊野三所権現」と切られていることから、奉納するために鍛えたのではないかと推測されます。
熊野三所権現とは、「熊野本宮大社」(くまのほんぐうたいしゃ)の主祭神・家都御子大神(けつみみこのおおかみ)、「熊野速玉大社」(くまのはやたまたいしゃ)の主祭神・熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)、「熊野那智大社」(くまのなちたいしゃ)の主祭神・熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)のことです。
本太刀を所有していたのは、熊野地方の豪族「九鬼家」(くきけ)。その後、「滝川一益」(たきがわいちます・かずます)を経て「織田信長」へと献上されました。明治時代になってから子爵家の「細川利文」のもとへ渡り、1931年(昭和6年)に旧国宝指定されます。
1948年(昭和23年)に売りに出されて個人蔵となったのち、1952年(昭和27年)に国宝指定されました。現在は、大阪府茨木市にある「株式会社ブレストシーブ」が本太刀を所蔵しています。