「刀 銘 肥前国唐津住河内守源本行作」を作刀した本行(もとゆき)は、豊後国(ぶんごのくに:現在の大分県)の出身で、初銘を「行春」、のちに「行平」(ゆきひら)と改め、紀新大夫行平(きしんだゆうゆきひら)の末裔と称しました。延宝年間(1673~1681年)に、当時砂鉄の産地であった肥前国(ひぜんのくに:現在の佐賀県)唐津へ作刀の拠点を移します。
後年、江戸の麻生鷹石に居住し本阿弥家より「本」の字を授かると、本行と改名。その頃に鎌倉相州伝の綱広(つなひろ)の門下となり、鍛刀法を改修し、唐津に帰郷しました。「本」の字を崩して松葉のように銘を切ったことから、「松葉本行」と称されます。
本刀の姿(すがた)は、身幅(みはば)広く、反り浅く、踏張りつき、中鋒/中切先(ちゅうきっさき)が延びています。地鉄(じがね)は、小板目肌(こいためはだ)詰み、地沸(じにえ)細かに付き、色が冴えたもの。
刃文(はもん)は、直刃(すぐは)調に焼き出し、焼幅広く湾れ(のたれ)を主調に小湾れと互の目(ぐのめ)を交え、足(あし)が入り、匂(におい)深く、小沸(こにえ)が付くのが特徴です。匂口(においぐち)は明るく冴え、刃中に沸筋(にえすじ)が入り、帽子(ぼうし)は直ぐに丸く返っています。茎(なかご)は生ぶ、先刃上(さきはあがり)の栗尻(くりじり)、鑢目(やすりめ)は切り、目釘穴(めくぎあな)はひとつ。差表(さしおもて:打刀の場合、刃を上にしたときの茎の左側)の棟寄りに長銘があり、差裏棟寄りに「元禄十一年」の年紀があります。
本刀は、本行の最高傑作であり地刃ともに明るく冴え、保存状態もすこぶる健全となっています。附属する「変り塗鞘 安親金具 打刀拵」と合わせて特別重要刀装・刀剣に指定されました。