本刀は、「島津家」から徳川将軍家に献上されたあと、将軍家から尾張徳川家が拝領。その後、尾張徳川本家から「尾張藩」17代藩主「徳川慶勝」(とくがわよしかつ)の11男「義恕」(よしくみ)に譲渡されたと伝えられる1振です。
貞宗は、相州伝を完成させた名匠「正宗」の門弟のひとりであると共に、同伝の代表的な刀匠と評されています。その作風は、正宗の物をよく受け継いでいますが、正宗よりも穏やかなおっとりとした湾れ乱れ(のたれみだれ)を基本とする乱れ刃が特徴的。そのほとんどが、南北朝時代に流行した相州伝の草分けになった物です。
本刀では、地刃共に沸(にえ)が厚く付き、また、穏やかな湾れ調の刃文の中に金筋・地景の働きが豊富に見られます。同工の特色をよく示す典型作であり、落ち着いた品位と威厳が感じられる名作です。