本太刀は、鎌倉時代初中期に興った備前国(現在の岡山県東部)の「福岡一文字派」に属する刀工「吉平」が制作した太刀です。
紀州徳川家に伝来し、銘の上に菊紋の細い毛彫りがあるのが特徴。華やかな匂で、丁子乱れの刃文に特色があり、古来より珍重されてきました。吉平が属した刀工一派・福岡一文字派は名匠揃いで、国宝に指定されている太刀も少なくありません。
なお、近年になって重要文化財が所有者の転居等を理由に所在不明となる件数が増えており、2015年(平成27年)1月21日に発表された第2次調査の結果で、新たに国宝の刀剣2件を含む重要文化財72件が所在不明であることが明らかになりました。本太刀もそのうちのひとつでしたが、令和3年3月5日、文化庁より所有者からの情報提供により、所在が確認されています。