本鍔は木瓜(もっこう)形で、地(鍔の地肌)は赤銅磨地(しゃくどうみがきじ)となっています。磨地とは、彫刻などを施していない部分を凹凸のないように美しく磨き上げた地肌のことです。
耳は角耳小肉(かくみみこにく)。角耳(かくみみ:断面が平になって、角立った耳のこと)に平肉が付いています。
意匠は水草と鷺(さぎ)。据紋象嵌(すえもんぞうがん)の技法が用いられています。据紋象嵌は、紋様を別に作り、鍔の地肌にはめ込む物です。
本鍔は無銘ですが、奈良派(ならは)に極められています。奈良派は江戸の金工で、後藤家(ごとうけ)・横谷派(よこやは)と共に金工界の三大流派のひとつです。鉄地金を使い、地肌には鏨(たがね)で石目(いしめ)や千鳥(ちどり)などを象嵌している点、自由な画題である点などが特徴として挙げられます。