「信国」は、南北朝時代から室町時代にかけて、山城国(やましろのくに:現在の京都府南半部)で隆盛を極めた名工です。
この一派の中でも、応永年間(1394~1427年)に入ってから活躍した「源左衛門尉信国」(みなもとさえもんのじょうのぶくに)と「式部丞信国」(しきぶのじょうのぶくに)が特に有名。両工は、共にそれぞれの銘に応永年紀を切るため、「応永信国」と呼ばれて高評価を受けており、濃厚な彫刻の名手でもあります。
左衛門尉の銘は、信国の「国」の字が左字(逆字)になっているところが最大の特色です。
初代信国の主な作風は、伝統的な京物の直刃(すぐは)と、「貞宗」(さだむね)を彷彿とさせる湾れ刃(のたれば)の2種類。しかし、南北朝時代末期の2代・信国を経て応永信国に代替わりすると、互の目(ぐのめ)乱れを主調とした作柄が、初代の刀に新たに加味されるようになりました。
本太刀には、「応永十五年」(1408年)の年紀のみならず、左字である「国」の字の銘が確認できます。また、全体的な書風から見ても、左衛門尉信国による作と鑑することが可能。
鍛えは板目が肌立ち気味で、得意としていた小沸(こにえ)出来で互の目主調の乱れ刃が焼かれています。これらは、同工の典型的な特色であり、大変良い出来を示しているのです。