「石州直綱」は、石見国(いわみのくに:現在の島根県西半部)の刀工。同銘を切る刀工は数人存在し、様々な古伝書などによれば、初代は建武年間(1334~1336年)、2代は永和年間(1375~1379年)、3代は応永年間(1394~1428年)頃に作刀していたと伝えられています。
しかし、それぞれの厳密な区別については、今後の研究の余地があると考えられており、その中でも初代・直綱は、「正宗十哲(まさむねじってつ)」のひとりに挙げられていますが、直綱には相州伝上位作と評される作刀がほとんど見られず、さらには、年代的な観点からも正宗との関係があったことを認めるにはいくらか無理が生じるため、一概に決定付けることは難しいと言われているのです。
本刀は、地鉄(じがね)は板目に杢目(もくめ)が交じって肌立ち、地沸(じにえ)がよく付き、刃文は互の目(ぐのめ)に角張る刃や尖り(とがり)ごころ刃などが交じるだけでなく、沸も厚く付くなど、石州直綱の特徴が顕著に表れています。
また、金筋・砂流しや、湯走り、飛焼(とびやき)といった活発な働きは、幅広で大鋒/切先の豪壮な南北朝時代の姿によく映えて地刃共に健全な出来映えを示しており、保存状態も非常に良い優品です。