本脇差は、「山田朝右衛門」(やまだあさえもん)の7代目「吉利」(よしとし)の所持と伝えられている「寸延び短刀」(すんのびたんとう)です。寸延び短刀とは、刃の長さが1尺(30.3cm)を超える長めの短刀のこと。現代では、脇差として登録されます。
山田朝右衛門家は、「試刀術」(しとうじゅつ)を受け継ぐ試し切りの名手と言われており、将軍家の「御様御用」(おためしごよう)として、9代まで続きました。初代から4代は浅右衛門を名乗り、5代目が朝右衛門に改名して以降は、「朝」の漢字を使用しています。
吉利は、「吉田松陰」(よしだしょういん)、「橋本左内」(はしもとさない)、「頼三樹三郎」(らいみきさぶろう)ら、安政の大獄で捕らえられた人物を斬首しました。
一方で吉利は、刀剣鑑定にも優れていたと言われ、そんな吉利が所持していた本脇差も、重ねが非常に厚く、直刃調(すぐはちょう)の小乱れとなり、地鉄(じがね)は無地風によく詰んだ、美しい作品です。