本刀の制作者「八鍬靖武」(やくわやすたけ)は、1909年(明治42年)12月7日、山形県鮭川村に生まれました。
1935年(昭和10年)、上京して日本刀鍛錬会に入会。のちに同郷の「池田靖光」(いけだやすみつ)、「阿部靖繁」(あべやすしげ)に師事。5年間、2人の先手(さきて:鍛刀に協力する弟子)を務めました。
1944年(昭和19年)11月13日、杉山陸軍大臣より刀匠銘「靖武」を受名、靖国神社に奉納刀を供えます。
第2次世界大戦の終戦と同時に日本刀鍛錬会を退会しますが、1954年(昭和29年)に作刀を再開。その後、伊勢神宮式年遷宮に伴い太刀を制作するなど、実力を発揮すると、1981年(昭和56年)には、刀剣界の最高賞である「正宗賞」を受賞し、日本美術刀剣保存協会の無鑑査に認定されます。これは、靖国刀匠(靖国神社境内に設けられた鍛錬所で作刀に携わった刀工)としては、唯一無二の快挙です。