本長巻は、陸奥国二本松藩(現在の福島県)10万石「丹羽家」(にわけ)に伝来した「備前長船住重真」(びぜんおさふねじゅうしげざね)在銘の作品で、徳川家に献上され、徳川第15代将軍「徳川慶喜」(とくがわよしのぶ)の愛刀としても有名な1振です。
長巻とは、長い刀身に、それより少し短い柄を付けた武器のこと。平均的な長さは、刀身が2尺3寸(約70cm)ならば柄は2尺(約60cm)になります。
「織田信長」や「上杉謙信」も有利さに目を付け、部下に持たせて戦場で活用しました。
本長巻の制作者である「次郎兵衛重真」(じろうべいしげざね)は、備前(現在の岡山県)の刀工「大蔵允元重」(おおくらのじょうもとしげ)の弟で、1326年(嘉暦元年)~1360年(延文五年)頃にかけて作られた作品があります。
本長巻は、身幅(みはば)広く、反りが浅い、静形の薙刀の姿で、板目肌に杢目肌(もくめはだ)交じり、備前特有の鍛えで、映りが鮮やかです。「静形の薙刀」とは、「源義経」の側室「静御前」(しずかごぜん)が使った薙刀と同じ型とされる薙刀を指します。刃文は、中直刃(ちゅうすぐは)に匂深く小沸(こにえ)つき。帽子(ぼうし:鋒/切先の刃文)は直ぐに掃きかけて焼き詰めています。鎌倉・南北朝時代の姿でそのまま現存する貴重な作品です。