刀工の「経家」は銘に「長船」(おさふね)と切りますが、長船派(光忠、兼光等)ではなく、畠田派(守家、真家等)の刀工です。
同銘数代(門弟などが先代と同じ銘を切ること)であり、銘鑑によると初代は鎌倉時代(正応年間1288年)とありますが、応永の日本刀が現存しているのは稀で、主な活躍年代は応永~文安(1394~1449年)、最もよく目にするのは永享~文安(1429~1449年)の脇差・太刀が多いです。
経家の特徴として、強い姿に反りは浅く、重ねの厚い重鈍な造込み、身幅のわりに長寸で、刃文は腰が開き、応永備前物としては珍しい作柄。同じ頃に活躍していた盛光(備前長船派盛光)に比べ、姿は強く、反対に刃文は微妙な変化を見せる均一な匂口の直刃(すぐは)、小足(こあし)が入り、この時代独特の棒映りがもとから先まで入っています。
経家の作柄を象徴する「しっかりした姿」を本刀からも感じることができ、古雅で格調の高い名品と言えます。