本短刀は、室町時代を代表する刀工である村正(むらまさ)の作と鑑定された物です。
たなご腹形の茎(なかご)や、刀身の表裏で模様の揃った刃文など、村正の特徴とされる要素がはっきりしています。刃文は平らな部分と丁子風に盛り上がる部分でメリハリがあり、地鉄は板目肌が流れており、肌模様が明瞭に見て取れます。
本短刀は無銘ですが、本阿弥日洲(ほんあみにっしゅう)によって金象嵌で「村正」と記入されています。本阿弥日洲は、刀剣の研ぎと鑑定を生業とする本阿弥家の第23代当主。
1908年(明治41年)生まれで、名研師と言われた父「平井千葉」(ひらいちば)に幼少のころから刀剣研磨・鑑定を学んだあと、本阿弥琳雅(ほんあみりんが)に師事し、1928年(昭和3年)に本阿弥家の養子となりました。1975年(昭和50年)に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定された名人です。