松田次泰は、「古備前派」(こびぜんは:五箇伝のひとつ「備前伝」のはじまりと言われる刀工一派)の古刀を再現することを目標にしてきました。1996年(平成8年)に、科学的な技術を導入して炭素量などを数値化し、ついに鎌倉時代の古刀を再現することに成功します。完成した1振は逸品として認められ、「日本美術刀剣保存協会会長賞」を受賞。その後も数々の受賞歴を経て、2009年(平成11年)には「新作名刀展無鑑査刀匠」に認定されました。
古備前に倣った優美な太刀姿に、刃文はゆったりと湾れ(のたれ)、部分的に小丁子や小互の目交じり。明るく冴えた匂口に、刃縁(はぶち)はよく沸(にえ)がつき、刃中には砂流し(すながし)や湯走りなどの働きが見えます。地鉄(じがね)は杢目交じりの板目肌。地沸(じにえ)よく付き、地景も現れており、小乱れの刃文からは松田刀匠の特徴的な作風がよく出ています。