本刀の作者である「宗昌親」(そうまさちか)は、新作名刀展(現・現代刀職展)無鑑査刀匠の「宗勉」(そうつとむ)を父に持つ、福岡県在住の名匠。宗昌親の祖父にあたる「宗正光」(そうまさみつ)も宗一門の始祖である名匠であり、宗昌親は、刀工として名門の生まれであったと言えます。
1983年(昭和58年)に父・宗勉のもとへ入門した宗昌親はめきめきと頭角を現し、独立した1990年(平成2年)、新作名刀展への初出品となった1振が優秀賞を受賞しました。これを皮切りに宗昌親は、同展において文化庁長官賞や日本美術刀剣保存協会名誉会長賞など、数々の特賞を授与され、2006年(平成18年)には、同展の無鑑査刀匠に認定されたのです。
本刀の刃文は、「大坂新刀」を思い起こさせる「濤瀾乱刃」(とうらんみだれば)。
高低差のある刃文は変化に富んでおり、刃中には厚く沸(にえ)が付き、地鉄(じがね)にはよく詰んだ小板目肌(こいためはだ)が見られます。濤瀾乱刃は、大坂新刀を代表する名匠「津田越前守助廣」(つだえちぜんのかみすけひろ)が創案した刃文。表銘に「偲助廣」(すけひろをしのぶ)と切られていることからも、同工を狙って作刀された、宗昌親の意欲作であることが窺えます。