本脇差の作者である宮崎県の刀匠「松葉國正」(まつばくにまさ)は、11歳の頃より剣道を習い始め、その後、居合(いあい)や空手など武道の修行にも励み、それぞれの有段者でもある、異色の経歴の持ち主です。その中で松葉國正は、居合に用いる刀の制作を依頼したことがきっかけとなり、1983年(昭和58年)、刀匠になるために「小林康宏」(こばやしやすひろ)のもとへ弟子入りを果たします。
その後、兄弟子にあたる岡山県の刀匠「安藤広清」(あんどうひろきよ)にも師事して作刀技術を学び、1989年(平成元年)に、文化庁から作刀承認を受けました。
翌年、新作名刀展(現・現代刀職展)に初出品した1振が入選。以後、同展に毎年出品しており、落選することなく、寒山賞(かんざんしょう)や薫山賞(くんざんしょう)などの特賞や優秀賞を受賞しています。2008年(平成20年)には、新作名刀展の最高賞である日本美術刀剣保存協会会長賞を獲得し、2014年(平成26年)、に無鑑査刀匠に認定されました。
本脇差の刃文は、互の目乱れ(ぐのめみだれ)に所々丁子(ちょうじ)が交じり、刃縁(はぶち)には荒沸(あらにえ)や小沸が付き、匂口(においぐち)が締まって明るい刃となっています。
姿は身幅のある平造(ひらづくり)であるため、地景(ちけい)や地沸(じにえ)といった地中の働きもよく見ることが可能。本脇差は、松葉國正が得意とする「長船長義」(おさふねちょうぎ)に範を取った、「相伝備前」(そうでんびぜん)の作風が顕著に現れた1振です。