本槍は、表に「不動明王」を表す、「倶利伽羅」(くりから:龍が巻きついた絵)が彫られているのが特徴です。
不動明王は、大日如来の化身と言われ、悪魔を退散させ、煩悩を断ち切り、諸願を成就させる神として広く信仰されました。特に、龍の息の音は、2万億の雷が一度に落ちるほどの凄まじさと言われ、これを聞いた悪魔は即座に滅びると恐れられていたのです。
作刀したのは、「越後守藤原来金道」(えちごのかみふじわららいきんどう/きんみち)。「美濃伝」の祖として名高い「志津三郎兼氏」(しづざぶろうかねうじ)の子孫にあたる初代伊賀金道の弟の系統です。古刀期の名門・山城伝「来派」を再興した初代「和泉守来金道」の2代目。越後守を受領し、法橋(ほっきょう:僧位)も叙任され、名工と讃えられました。
本槍は、室町時代の槍を思わせる、けら首(槍の穂先末端)の長い、戦に適した頑強な姿。亀山藩(現在の京都府亀岡市)藩主「菅沼家」が特別注文で作らせた、古格の趣きがある傑作です。