本短刀は、鎌倉時代の名工「来国光」(らいくにみつ)の最高傑作と言われる、国宝「有楽来国光」(うらくらいくにみつ)を、名工・源盛吉が写しました。
源盛吉刀匠は、幕末の名工・源清麿を写した作品で一世を風靡し、新刀名作展で特賞を数々受賞した現代の名工の1人であり、没後30年を経っても、なお高い人気を誇る刀匠です。
姿は、身幅は常より広く、重ね厚く、本歌に倣った体配。地鉄(じがね)は板目に流れ肌が交じり、地沸厚く地景盛んに入り、刃文は沸厚く付き焼きの高い丁子に互の目が交じり乱れ、金筋・砂流し盛んに入り見事です。
特筆すべきは、指表(さしおもて)の帽子で、本歌同様に沸崩れさせているところに、源盛吉師の非凡さを感じることができます。
また、本刀の沸の強さは、源清麿写しに定評があった源盛吉刀匠の個性が現れており、まさしく傑作と言える1振です。
本短刀は、銘に「應需八十二翁嘉山」とあり、『新刀大鑑』『有銘古刀大鑑』の著者である飯村嘉章氏(号・嘉山)による注文で作られたことがわかります。