本槍は、無銘ではありますが、安土桃山時代から江戸時代にかけての刀工、「出羽大掾国路」(でわだいじょうくにみち)の作と伝わる、「上向十文字槍」(うわむきじゅうもんじやり)です。
出羽大掾国路は、美濃国(現在の岐阜県南部)発祥の刀工集団である三品派(みしなは)の影響を受けたのち、新刀の祖と呼ばれる「堀川国広」の門人になった刀工。数多くの秀作の中には、出羽大掾国路が84歳のときの作品もあり、当時としては非常に長命でした。
また、師の堀川国広よりも作域が広く、沸(にえ)・匂(におい)等の変化に富んだ作風で、新刀初期を代表する名工のひとりです。
本槍は、出羽大掾国路の初期、慶長年間(1596~1615年)の作と鑑せられ、がっちりとした肉置の十文字槍で、地刃(じは)に出羽大掾国路の特徴が現われた名槍です。