本槍は、十文字槍の穂の部分から出ている鎌の片方が長く、もう一方が短いという特徴をもった「手違上下十文字槍」(てちがいじょうげじゅうもんじやり)。片側の長い鎌が下方を向き、もう一方の短い鎌が上方を向いています。
本槍の茎(なかご)に刻まれた銘から、1836年(天保7年)5月に制作されたということが判別可能。
さらに銘から分かるのは、長州藩(現在の山口県)に在住していた刀工「正平」(まさひら)が鍛造したという点。正平は、新々刀が盛んに制作された時期の刀工で、「石堂派」(いしどうは)に分類されます。備前一文字伝に倣った石堂派は、丸い丁子(ちょうじ)の実が連なっているような刃文の丁子刃が、華やかな印象を与えるのが特徴です。