1950・1960年代の時代劇

明治百年記念時代とテレビ時代劇
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明治百年記念時代とテレビ時代劇 明治百年記念時代とテレビ時代劇
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【剣 傑作選 DVD-BOX】より
【剣 傑作選 DVD-BOX】より
剣にまつわる者達を描いた1話完結のオムニバス【剣】(1967~1968年〔C.A.L〕製作・〔日本テレビ〕系列)。第1回の主演は丹波哲郎。製作はCreative Associates Limited(C.A.L)。この大手広告代理店・電通が興したテレビ時代劇の制作会社には、黒澤明映画を支えた脚本家達(橋本忍・菊島隆三・小国英雄・井出雅人)が参画。テレビ時代劇に時代劇映画のノウハウが本格的に導入される。

(■日本テレビでは黒澤明映画の面々がテレビ時代劇を制作より)

1960年代後半は、人気映画スターが独立し、自身のプロダクションを興してテレビ時代劇に積極的に出演し始めた時期です。先駆者の三船敏郎のあとには、勝新太郎、中村錦之助(萬屋錦之介)がこの時期続きます。大手広告代理店・電通と黒澤明作品の脚本家達が組んだテレビ時代劇の制作会社もスタートするなど、テレビ時代劇でも映画のようなこだわりを持った作品が次々と登場します。折しも時代は明治100年の時期にあたっており、幕末を題材にしたテレビ時代劇も増加します。

NHK大河ドラマは豊臣秀吉から源義経へ

1960年代後半、NHK(現・NHK総合他)による「大型時代劇」(のちの大河ドラマ)は、日曜午後8時15分から45分間放送されていた時期です(〔NHK〕放送。1年間放送)。NHK自身が「大河ドラマ」という呼称を公式に使用するのは1970年代後半です(NHK大河ドラマの呼称は通称)。

1960年代後半は、大型時代劇(大河ドラマ)第4作【源義経】(1966年)で始まります。

原作・脚本は村上元三(むらかみげんぞう)です。第1作【花の生涯】の演出助手を務めた村上慧(むらかみさとし)は村上元三の息子であり、人的に深いつながりがありました。

主役の源義経には、当時23歳の4代目・尾上菊之助(おのえきくのすけ:現7代目・尾上菊五郎:おのえきくごろう)が選ばれます。ヒロインの静御前はこのドラマの共演がきっかけで尾上菊之助と夫婦になる東映の看板スター・藤純子(ふじじゅんこ:現・富司純子:ふじすみこ)です。

演出は、第3作【太閤記】から引き続き、吉田直哉(よしだなおや)が手がけます。

吉田直哉は、太閤記で主役の豊臣秀吉に選んだ緒形拳(おがたけん)を今回、弁慶に配しました。緒形拳についた豊臣秀吉のイメージを払拭する意図があったと言います。

また、アイドル歌手の舟木一夫(ふなきかずお)が平清盛の弟・平敦盛で出演。彼が討ち取られた場面の放送後に吉田直哉の自宅に舟木一夫のファンから刃物が送られてくる出来事があり、吉田直哉は映像を通じた現実と架空の世界との違いについて考えるようになったと言います(吉田直哉【映像とは何だろうか―テレビ制作者の挑戦―】)。

それまでドキュメンタリー手法を得意としていた吉田直哉は、合戦のシーンはノンフィクションでは絶対に撮れないことをふまえ、源義経では、ヘリコプター撮影による斜め上の俯瞰映像や、雑兵の姿をさせたカメラマンによる撮影など、歴史ドラマ世界と現在の世界を意図的に混在させる手法を行いました(サライ編集部【昭和のテレビ王】)。

【NHK大河ドラマ 源義経 総集編 DVD-BOX】

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明治100年のNHK大河ドラマは坂本龍馬

大型時代劇(大河ドラマ)の第5作、第6作の時期は、明治100年(1968年)の時期でした。

明治100年が意識され、大佛次郎(おさらぎじろう)が原作となる内容をドラマ化にあたって執筆した【三姉妹】(1967年)、司馬遼太郎(しばりょうたろう)原作【竜馬がゆく】(1968年)が続けて放送されます。

三姉妹は、幕末から明治を生きた架空の幕臣旗本の娘達の物語です。岡田茉莉子(おかだまりこ)・藤村志保(ふじむらしほ)・栗原小巻(くりはらこまき)の3人が主演。西郷隆盛勝海舟、中村半次郎、桂小五郎高杉晋作など歴史上の人物も数多く登場しました。

竜馬がゆくは、坂本龍馬を司馬遼太郎が独自に創作した坂本竜馬の物語です(龍の字を竜の表記に)。東映映画のスター市川右太衛門(いちかわうたえもん)の息子・北大路欣也(きたおうじきんや)が演じました。

演出は脚本家と反りが合わなかったことから、途中から和田勉(わだべん)が務めています。NHK大阪放送局所属時代に手がけたドラマが芸術祭で数多く受賞していた腕を買われました。

  • DVD 【NHK大河ドラマ 三姉妹】

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  • DVD【NHK大河ドラマ 竜馬がゆく】

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NHK大河ドラマ2度目の戦国武将主人公は上杉謙信

明治100年作品を終えると、大型時代劇(大河ドラマ)初のカラー作品が制作されます。

海音寺潮五郎(かいおんじちょうごろう)原作【天と地と】(1969年)です。同作では日曜午後8時15分から45分間の放送時間が、途中4月から日曜午後8時から45分間へ移行します。その放送時間が現在まで続いています。

太閤記に続いて戦国時代が再び題材に選ばれたのは、前2作の明治ものの視聴率が振るわなかったためでした。ここに幕末ものは視聴率が取れないと言うジンクスが生まれることになります。

大型時代劇(大河ドラマ)の演出に数多くかかわった大原誠(おおはらまこと:【樅の木は残った】、【草燃える】、【徳川家康】、【八代将軍吉宗】、【元禄繚乱】にて演出チーフ)は、「大河ドラマ終息論が浮上した時、【天と地と】では娯楽時代劇に戻しています」(【NHK大河ドラマの歳月】より)と記しています。天と地との演出チーフ・岡崎栄(おかざきさかえ)は、「戦国時代なら、鎧の色などでもカラーも映えるしね」と振り返っています(鈴木嘉一【大河ドラマの50年―放送文化の中の歴史ドラマ】より)。

主役の上杉謙信は、石坂浩二(いしざかこうじ)が演じます。武田信玄には高橋幸治(たかはしこうじ)が選ばれます。かつて太閤記では、石田三成を石坂浩二、織田信長を高橋幸治が演じており、太閤記に次ぐ娯楽作品が目指されました。

天と地とでは、上杉謙信の子供時代から始まるのも特徴です。

幼少時代を演じた中村光輝(なかむらみつてる:のち3代目・中村又五郎:なかむらまたごろう)のあまりの人気ぶりから、石坂浩二の登場を遅らせることを希望する投書が殺到した逸話を残します。

天と地とは、第2回テレビ大賞・優秀番組賞を獲得しています。

DVD 【NHK大河ドラマ 天と地と】

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【NHK大河ドラマ 天と地と】

戦後の上杉謙信役と武田信玄役の系譜

天と地とが放送された年は、武田信玄に仕えた軍師・山本勘助に関心が高まった時期でもありました。

同じ年、井上靖(いのうえやすし)原作【風林火山】(1969年〔東宝〕配給)が公開されています。主役の山本勘助を三船敏郎(みふねとしろう)、彼が軍師として仕える武田信玄を中村錦之助(なかむらきんのすけ:のち萬屋錦之介:よろずやきんのすけ)、武田信玄の側室となる由布姫(諏訪御料人)を佐久間良子(さくまよしこ)、そして上杉謙信を石原裕次郎(いしはらゆうじろう)が演じています。

同年は他に、NETテレビ(現・テレビ朝日)の開局10周年として、同じく井上靖原作の【風林火山】(1969年)を放送しています。

同作では山本勘助を東野英治郎(とうのえいじろう)、武田信玄を緒形拳、由布姫を栗原小巻がそれぞれ演じています。

天と地との放送時期は、上杉謙信、山本勘助、武田信玄への関心が高まることになった時期でもありました。

NHKの連続テレビ時代劇枠「金曜時代劇」でも明治初頭・幕末を舞台に

1960年代中盤、NHK(現・NHK総合他)では大型時代劇(大河ドラマ)以外の時代劇枠「金曜時代劇」(1965~1978年:金曜午後8時から60分間)をスタートしています。

1960年代後半は、野村胡堂(のむらこどう)原作【大岡政談 池田大助捕物帳】(1966~1967年)に始まります。

以後、松本清張(まつもとせいちょう)原作、和田勉演出・倉本聰(くらもとそう)脚本【文五捕物絵図】(1967~1968年)、島田一男(しまだかずお)原作【開化探偵帳】(1968~1969年)、大佛次郎原作【鞍馬天狗】(1969~1970年)を放送しました。

主演はそれぞれ、2代目・尾上松緑(おのえしょうろく)、同作がテレビ時代劇の初主演となった日活の若手俳優・杉良太郎(すぎりょうたろう)、緒形拳、こちらも同作がテレビ時代劇の初主演となった日活の若手俳優・高橋英樹(たかはしひでき)です。

なかでも、文五捕物絵図は、第1回テレビ大賞・最優秀ドラマ番組賞などを獲得しています。

金曜時代劇でも明治100年の年は、明治を舞台にした作品が選ばれました。

開化探偵帳は、明治初頭の浅草を舞台にした、ざんぎり頭となった浅草屯所の探索方の主人公の物語でした。続けて放送された鞍馬天狗の物語も幕末が舞台でした。

日本テレビでは黒澤明映画の面々がテレビ時代劇を制作

日本テレビでは1960年代後半、木曜の夜に、6代目・市川新之助(いちかわしんのすけ:のちの12代目・市川團十郎:いちかわだんじゅうろう)主演による連続テレビ時代劇を放送しました(午後8時から56分間)。

城昌幸(じょうまさゆき)原作【若さま侍捕物帳】(1967年)、山手樹一郎(やまてきいちろう)原作【遠山の金さん】(1967年)です。

その同じ年、黒澤明(くろさわあきら)映画で数多くの主演を務めた三船敏郎が、テレビ時代劇の制作に本格的に取り組みます。日本テレビの「火曜枠」(午後8時から54分間)をテレビ時代劇のレギュラー枠とします。

山手樹一郎原作【桃太郎侍】(1967~1968年〔東宝〕制作協力・〔三船プロ〕共同制作)、【昔三九郎】(1968年〔東宝〕制作協力・〔三船プロ〕共同制作)、主役ではなく三船敏郎がテレビ時代劇に初出演した【五人の野武士】(1968年〔東宝〕制作協力・〔三船プロ〕共同制作)が放送されます。

主演はそれぞれ、尾上菊之助(現7代目・尾上菊五郎)、林与一(はやしよいち)、宝田明(たからだあきら)他です。

DVD 【時代劇スペシャルコレクション 五人の野武士 一】

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五人の野武士 一】

「三船敏郎シリーズ」(1968年:土曜午後8時から86分間)もスタート。三船敏郎主演の時代劇映画を放送しました。

同枠には、黒澤明映画を敬愛するさいとう・たかをの少年向け劇画原作【無用ノ介】(1969年〔国際放映〕共同制作:土曜午後8時から56分間)が続きます。主演は伊吹吾郎(いぶきごろう)、監督を内田吐夢(うちだとむ)が務めました。

【無用ノ介 DVD-BOX 1】

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以後も、佐々木味津三(ささきみつぞう)原作【右門捕物帖】(1969~1970年〔東宝〕共同制作)、矢田挿雲(やだそううん)原作【青春太閤記 いまにみておれ!】(1970年〔歌舞伎座テレビ室〕共同制作)を放送。主演はそれぞれ、2代目・中村吉右衛門(なかむらきちえもん)、なべおさみです。

この時期、黒澤明映画を支えた脚本家達(橋本忍・菊島隆三・小国英雄・井出雅人)も、大手広告代理店・電通が興したCreative Associates Limited(C.A.L)に参画。テレビ時代劇へ本格的に取り組みます。

その始まりは、剣にまつわる者達を描いた1話完結のオムニバス【剣】(1967~1968年〔C.A.L〕製作:月曜午後9時から56分間)です。

第1回の主演は丹波哲郎。織田信長が生きる時代、主人公の天下一の剣豪を演じます。引退を決意し安息した日々を過ごしていた剣豪の前に、真剣勝負を望む若き宮本武蔵が現れます。けれども、剣豪はじつは知恵者で無銘の愛刀は不思議な力を有しており…と展開される物語です。脚本は、橋本忍(はしもとしのぶ)です。

同枠でC.A.Lは、続けて数回で1作品が完結するシリーズ【お庭番】(1968年〔C.A.L〕製作)も製作します。主演は、石坂浩二他です。

【剣 傑作選 DVD-BOX】

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TBSテレビではNHK大河ドラマ対抗作【戦国太平記 真田幸村】を放送

TBS(現・TBSテレビ)では1960年代後半も、引き続きふたつの枠で連続テレビ時代劇を放送します。

「ブラザー劇場」(1964~1979年:月曜午後7時30分から30分間)では、松田定次(まつださだつぐ)他監督作、川口松太郎(かわぐちまつたろう)原作【新吾十番勝負】(1966~1967年〔松竹テレビ室〕共同制作)、【彦左と一心太助】(1969~1970年〔東映京都撮影所〕共同制作)を放送しました。

主演はそれぞれ、田村正和(たむらまさかず)、山田太郎(やまだたろう)です。

ブラザー劇場の30分後に続いて放送される「ナショナル劇場」(1964~2008年:月曜午後8時から54分間、のち56分間)では、それまで現代劇かバラエティ番組を基本としていたもののこの時期、民放初の1時間の「連続大河ドラマ」を放送します。

NHKの大型時代劇(大河ドラマ)に対抗し、連続大河ドラマと呼称した自社制作の【戦国太平記 真田幸村】(1966~1967年)です。

主演は中村錦之助(萬屋錦之介)、原案は映画監督で脚本家の松山善三(まつやまぜんぞう:代表作【人間の條件】脚本など)、脚本は早坂暁(はやさかあきら)、演出は大山勝美(おおやまかつみ)と久世光彦(くぜてるひこ)、ナショナル/松下電器(現パナソニック ホールディングス)側のプロデューサーは逸見稔(へんみみのる)です。

演出の大山勝美は、「NHKの大河ドラマに負けない民放初の大型時代劇をやると言うので、すごく意識させられました。」と共著で当時を振り返っています(【テレビは何を伝えてきたか】)。

逸見稔は、「1966年秋の超目玉番組として、民放初の1時間連続大河ドラマとして、【真田幸村】がスタートした。(中略)私としては、真田十勇士がブラウン管狭しと暴れまくる講談調の娯楽時代劇大作を目指していた。」と記しています。けれども、娯楽大作として大いに意気込んだものの、その結果はシリアスで暗い内容となり、満たされなかったことを明かしています。(【黄門様はテレビ好き】より)。

1960年代後半、TBS(現・TBSテレビ)は他にも大作を自社制作しています。

長谷川一夫(はせがわかずお)主演、岡本綺堂(おかもときどう)原作【半七捕物帳】(1966、1967~1968年:水曜午後9時から54分間枠「水曜劇場」)です。映画スターだった長谷川一夫がテレビに初めて出演したNHKの大型時代劇(大河ドラマ)第2作【赤穂浪士】に次ぐテレビ主演作でした。

天保年間を生きる元・義賊のドラマ【風】(1967~1968年〔京都映画〕制作協力・〔松竹〕共同制作:水曜午後8時から56分間)では、松竹が多額の資金を投入して制作しています。

主演は栗塚旭(くりづかあさひ)。演出を、東映出身の時代劇映画監督の松田定次と、【ウルトラマン】の演出で人気となっていた飯島敏宏(いいじまとしひろ)と実相寺昭雄(じっそうじあきお)の自社スタッフが手がけました。

同枠では、1原作で1話完結シリーズ【仇討ち】(1968~1969年〔東京映画〕製作)を続けます。第1回の原作は菊池寛(きくちかん)、主演は伊藤雄之助(いとうゆうのすけ)、脚本は池田一朗(いけだいちろう)こと、のちの時代小説家・隆慶一郎(りゅうけいいちろう)です。

子供向けの時間帯で時代劇も放送します。

松山英太郎(まつやまえいたろう)主演、林不忘(はやしふぼう)原作【丹下左膳】(1967年〔東京映画〕共同制作:火曜午後6時から30分間)。佐々木功(ささきいさお)主演、特撮時代劇【妖術武芸帳】(1969年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:日曜午後7時から30分間枠「タケダアワー」)です。

妖術武芸帳の脚本・伊上勝(いがみまさる)と企画の平山亨(ひらやまとおる:東映)は、同枠で大ヒットした忍者ブームを後押した一作となった【隠密剣士】の制作陣です。

【妖術武芸帳 DVD-BOX [HDリマスター版]】

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そののち、逸見稔が主導するナショナル劇場では、若林豪(わかばやしごう)主演、久生十蘭(ひさおじゅうらん)原作【顎十郎捕物帳】(1969年〔TBS〕制作)を放送。演出は久世光彦(くぜてるひこ)、脚本は向田邦子(むこうだくにこ)他です。

そして、東野英治郎(とうのえいじろう)主演【水戸黄門】(1969~2008年〔C.A.L製作〕)をスタートさせます。

逸見稔と、C.A.Lに転職したばかりの西村俊一(にしむらしゅんいち:宣弘社時代に【月光仮面】と【隠密同士】を企画してヒット)による国民的連続テレビ時代劇の第1歩となります(~2011年)。第1話の脚本は、東映出身の宮川一郎(みやがわいちろう)が手がけました。

DVD【水戸黄門 第一部 壱】

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テレビ朝日では幕末作品【俺は用心棒】シリーズが人気に

NETテレビ(現・テレビ朝日)では1960年代後半、日曜の夜、司馬遼太郎原作【新選組血風録】(1965~1966年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:月曜午後9時30分から60分間)を引き続き放送します。

主役は、栗塚旭が演じる土方歳三です。けれども同枠の時代劇はここで終了しました。入れ替わるように、月曜の夜に時代劇の放送をスタートします(月曜午後9時から56分間)。

結束信二(けっそくしんじ)脚本による幕末を舞台にしたオリジナルドラマ【俺は用心棒】(1967年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)に始まります。

主演は栗塚旭。他に、新選組血風録の沖田総司役で人気を博した島田順司(しまだじゅんじ)が同じく沖田総司役で出演。斎藤一役の左右田一平(そうだいっぺい)も同役で出演しました。

人気から同作はシリーズ化されました(~1969年)。3人が出演する幕末を舞台にしたオリジナルドラマ【天を斬る】(1970年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)まで続きました。

これらのテレビ時代劇は、明治100年の年の時期にあたる幕末ものとなっています。

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また、木曜の夜、現代劇も時代劇も取り上げた「ナショナルゴールデン劇場」(1966~1979年:主に木曜午後10時から56分間)もスタートします。

司馬遼太郎原作、早坂曉脚本【夫婦物語 功名が辻】に始まります。主演は、団令子(だんれいこ)です。

以後同年は、長谷川伸(はせがわしん)原作【暗闇の丑松】(1966年「中村錦之助ドラマ集」)、山本周五郎(やまもとしゅうごろう)原作【いのち】(1966年「中村錦之助ドラマ集」)などを放送。東映退社後初めてのテレビ出演となった映画スター中村錦之助(萬屋錦之介)の作品です。

明治100年の年には高杉晋作を描いた司馬遼太郎原作【十一番目の志士】(1968年)を、開局10周年としては井上靖原作【風林火山】(1969年)を放送しています。

主演はそれぞれ、加藤剛(かとうごう)、東野英治郎です。

その翌年、「土曜時代劇」もスタートします(1967~1971年:午後8時から56分間)。

南條範夫(なんじょうのりお)原作【素浪人 月影兵庫】の第2シリーズ(1967~1968年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)に始まります。

主演は、近衛十四郎(このえじゅうしろう)と品川隆二(しながわりゅうじ)のコンビです。

以後、【素浪人 花山大吉】(1969~1970年〔歌舞伎座プロ〕共同制作)、【さむらい飛脚】(1971年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)、横溝正史(よこみぞせいし)原作【人形佐七捕物帳】(1971年〔東宝〕共同制作)を放送しました。

主演はそれぞれ、品川隆二と近衛十四郎に南弘子(みなみひろこ)を交えた3人、大友柳太朗(おおともりゅうたろう)と品川隆二のコンビ、林与一です。

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テレビ朝日では子供向けと女性主人公が増加

NETテレビ(現・テレビ朝日)では1960年代後半、子供向けや、時に色気を伴う女性が活躍する連続テレビ時代劇も増加します。

藤子不二雄(ふじこふじお)の少年漫画原作を実写化した【忍者ハットリくん】(1966年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:午後7時から30分間)を放送しています。

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女性を主人公とする時代劇では、吉屋信子(よしやのぶこ)原作【徳川の夫人たち】(1967年〔東映京都撮影所〕共同制作:日曜午後9時から60分間)を放送します。

徳川家光江戸幕府第3代将軍)の実在の側室・お万の方が主役です。佐久間良子が演じました。

そののち佐久間良子は、川口松太郎(かわぐちまつたろう)原作【皇女和の宮】(1968年〔東映京都撮影所〕共同制作:月曜午後10時から54分間枠「ポーラ名作劇場」)でも主演しています。

この時期は他に、【おせん捕物帖】(1967~1968年〔国際放映〕〔東宝〕共同制作:火曜午後9時から56分間)。【野次馬がいく】(1967~1968年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:木曜午後8時から56分間)も放送されます。

主演はそれぞれ、重山規子(しげやまのりこ)、松方弘樹・里見浩太郎(さとみこうたろう)・浅野順子(あさのじゅんこ)3人です。

棚下照生(たなかてるお)の劇画原作【旅がらすくれないお仙】(1968~1969年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:日曜午後8時から56分間)、続く【緋剣 流れ星お蘭】(1969~1970年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:日曜午後8時から56分間)も放送します。

主演はそれぞれ、松山容子(まつやまようこ)と大信田礼子(おおしだれいこ)、花園ひろみ(はなぞのひろみ)と大信田礼子で、共に女性剣客ものでした。

DVD【旅がらすくれないお仙 伜と呼びたい】

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テレビ朝日では【日本剣客伝】シリーズがスタート

NETテレビ(現・テレビ朝日)では1960年代後半、剣客ものが増加します。

東映映画では当時、マキノ雅弘(まきのまさひろ)監督作【日本侠客伝】(1964年〔東映〕配給)以降、任侠映画が人気を博しており、その影響がテレビ時代劇にも及びます。

まず、【日本剣客伝】(1968年〔東映京都撮影所〕共同制作)を放送しました(水曜午後8時から56分間)。

第1話は、司馬遼太郎原作【宮本武蔵】。主演は三國連太郎(みくにれんたろう)、監督は降旗康男(ふるはたやすお)、脚本は早坂暁です。

以後、人気の時代小説家の作品を映像化しました。

題材は、小野次郎左衛門、上泉伊勢守塚原卜伝、柳生十兵衛、堀部安兵衛、針谷夕雲、高柳又四郎、沖田総司、千葉周作です。

そして、【新・日本剣客伝】(1968年〔東映京都撮影所〕共同制作)を続けて放送しました(水曜午後8時から56分間)。

題材は、後藤又兵衛、中村半次郎、伊藤一刀斎、平手造酒です。

さらに、【日本侠客伝】シリーズ(1969年〔東映京都撮影所〕共同制作)も続きます(水曜午後9時から56分間、のち月曜午後9時から56分間)。

国定忠治、笹川繁蔵、会津の小鉄を取り上げています。

以後も、日本侠客伝の第2シリーズ(1969年:月曜午後8時から56分間)、オムニバスによるオリジナルドラマ【剣豪】(1970年〔東映東京撮影所〕共同制作)と続きました。4作品放送された題材は、宮本武蔵、斎藤一、坂本龍馬、荒木又右衛門でした。主演は天地茂(あまちしげる)、中山仁(なかやまじん)、倉島襄(くらしまじょう)、舟木一夫です。

村上元三の人気時代小説で人気映画でもあった【次郎長三国志】を、中野誠也(なかのせいや)主演によって初めてのテレビ時代劇化も行います(1968年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:日曜午後8時から56分間)。

そして、池波正太郎(いけなみしょうたろう)【鬼平犯科帳】の初の映像化が始まります(1969~1970年〔東宝〕共同制作:火曜午後9時から56分間)。

主演は、8代目・松本幸四郎(まつもとこうしろう:のち初代松本白鸚:まつもとはくおう)です。そののち定番の連続テレビ時代劇となる第1歩です。

フジテレビでは【銭形平次】がスタート

フジテレビでは1960年代後半、木曜の夜、引き続き五社英雄(ごしゃひでお)監督作【三匹の侍】シリーズが人気を博しました(1963~1969年:木曜午後8時から56分間)。

同シリーズ終了後は、【花のお江戸のすごい奴】(1969年〔東映京都テレビプロ〕〔新国劇〕共同制作:木曜午後8時から86分間)を放送します。主演は、若林豪です。

金曜の夜でも時代劇は続きます。

「シオノギテレビ劇場」(1964~1967年:金曜午後9時から30分枠、木曜午後10時から45分間)では、1960年代後半、1原作1話完結の次の内容を放送しました。

山本周五郎原作【釣忍】(1966年)、【男の花道】(1966年)、大佛次郎原作【築山殿始末】(1966年)。山本周五郎原作【日々平安】(1967年)、長谷川伸原作【沓掛時次郎】(1967年)などです。

主演はそれぞれ、仲代達矢(なかだいたつや)、長谷川一夫と島田正吾(しまだしょうご)、6代目・市川新之助(いちかわしんのすけ:のちの12代目・市川團十郎:いちかわだんじゅうろう)、加東大介(かとうだいすけ)、仲代達矢です。

そして、水曜の夜に新たな連続テレビ時代劇がスタートします(午後8時から56分間)。

野村胡堂原作【銭形平次】(1966~1984年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)です。

主演は、2代目・大川橋蔵(おおかわはしぞう)です。のちにギネスブックにも載ることになるフジテレビ定番の連続テレビ時代劇の第1歩の始まりです。

日曜の夜も不定期に連続テレビ時代劇を放送します(日曜午後8時から56分間、のち45分間)。

公開収録【勢ぞろい清水港】(1966年)、山手樹一郎原案・結束信二原作【ひばり・与一の花と剣】(1966~1967年)、小国英雄(おぐにひでお)共同脚本によるオリジナルドラマ【風来坊】(1968~1969年〔C.A.L製作〕)です。

主演はそれぞれ、森川信(もりかわしん)、美空ひばり(みそらひばり)と林与一、中村賀津雄(なかむらかつお:のち中村嘉葎雄)です。

月曜の夜にも連続テレビ時代劇を放送します(午後10時から45分間)。

五社英雄企画による柴田錬三郎(しばたれんざぶろう)原作【眠狂四郎】(1967年)、山手樹一郎原作【ご存知からす堂】(1967年)、川口松太郎原作【幕末姉妹】(1968年)と続きました。

主演はそれぞれ、平幹二朗(ひらみきじろう)、三橋達也(みはしたつや)、高千穂ひづる(たかちほひづる)と北条きく子(ほうじょうきくこ)です。

テレビ東京でも幕末ものと女性剣客もの

東京12チャンネルプロダクション(現・テレビ東京)は1960年代後半、司馬遼太郎原作【燃えよ剣】(1966年:金曜午後9時30分から30分間)を初めて連続テレビ時代劇化します。主役の土方歳三を内田良平(うちだりょうへい)が演じました。

以後、棚下照生の劇画原作【女殺し屋 花笠お竜】(1969年〔国際放映〕共同制作:土曜午後9時30分から116分間)を放送。主演は、久保菜穂子(くぼなほこ)です。

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関西テレビから【仮面の忍者 赤影】と【大奥】が人気に

関西テレビでは1960年代後半、日曜夜の主に時代劇枠「白雪劇場」(1959~1966年)や、「山本周五郎アワー」で時代劇を放送していました(1966年:火曜午後10時から45分間)。

1960年代後半の新たな取り組みとしては、水曜夜の子供向けのアニメ枠で放送した特撮時代劇があります。

横山光輝(よこやまみつてる)の少年漫画とのメディアミックス【仮面の忍者 赤影】(1967~1968年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:水曜午後7時から30分間)です。東映初のカラー特撮テレビ映画でした。

主演は、坂口祐三郎(さかぐちゆうざぶろう)。木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)に仕える竹中半兵衛の指示を受けて働く赤影を演じます。隠密剣士の忍者役で人気を博した牧冬吉(まきふゆきち)も白影として出演。脚本は、隠密剣士の伊上勝です。

テレビ放送終了後には映画化もなされるなど(1969年〔東映〕配給)、人気作となりました。

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また、開局10周年を記念した【大奥】(1968~1969年〔東映京都撮影所〕共同制作:土曜午後10時30分から60分間)を放送します。主役の春日局を三益愛子(みますあいこ)が演じました。

同作は人気となり、以後の大奥を題材にしたテレビ時代劇の礎となります。

大奥の次には【あゝ忠臣蔵】(1969年〔東映京都撮影所〕共同制作:土曜午後10時30分から60分間)が続きます。大石内蔵助を山村聡(やまむらそう)が演じました。

毎日放送では定番の時代劇を放送

NHKで大型時代劇(大河ドラマ)がスタートした時期、毎日放送では連続テレビ時代劇に力が入れられます。

火曜の夜、連続テレビ時代劇を放送します(火曜午後9時から56分間)。

吉川英治の人気作で2度目のテレビ時代劇化となる【鳴門秘帖】(1966年〔日本映画新社〕共同制作)。続いて、白井喬二の人気作を初めてテレビ時代劇化した【富士に立つ影】(1967年〔松竹テレビ室〕共同制作)です。

主演は、高橋悦史(たかはしえつし)、中山仁です。

月曜の夜も連続テレビ時代劇を放送します(月曜午後9時から30分間)。

大佛次郎の人気作の5度目のテレビ時代劇化となる【鞍馬天狗】(1967~1968年〔松竹テレビ室〕共同制作)です。主演は、月光仮面と隠密剣士で人気を博した大瀬康一(おおせこういち)です。監督は、松田定次他です。

鳴門秘帖、富士に立つ影、鞍馬天狗はいずれも戦前から映画化されている定番の作品です。

朝日放送テレビでは子供向け・女性向けを中心に

朝日放送大阪テレビ(現・朝日放送テレビ)は1960年代後半も、藤田まこと(ふじたまこと)と白木みのる(しらきみのる)コンビによる珍道中【てなもんや三度笠】(1962~1968年:日曜午後6時から30分間)の人気は続きました。

以後も同枠では、藤田まことが織田信長を演じた【てなもんや一本槍】(1968~1970年)、藤田まことが宮本武蔵の落とし子を演じた【てなもんや二刀流】(1970~1971年)で、てなもんやシリーズは終わりました。

この間、てなもんやシリーズのプロデューサーの澤田隆治(さわだりゅうじ)は、高田浩吉(たかだこうきち)主演による陣出達朗(じんでたつろう)原作【伝七捕物帳】(1968年:土曜午後8時5分から56分間)を手がけています。

また、のちに【必殺】シリーズを生み出すプロデューサー山内久司(やまうちひさし)は、有吉佐和子(ありよしさわこ)原作【助兵衛四代記】(1968年:金曜午後8時から56分間)を手がけています。

山田五十鈴(やまだいすず)、池内淳子(いけうちじゅんこ)、藤村志保、岡田茉莉子、樫山文枝(かしやまふみえ)が出演しました。

朝日放送大阪テレビ(現・朝日放送テレビ)では、日曜夕方に子供向けテレビ時代劇を放送していました(1958~1969年:日曜午後6時から30分間枠「ダイハツ工業」提供)。

1960年代後半は、中島たを(なかじまたを)の少年漫画原作【わんぱく砦】(1966~1967年〔山崎プロ〕共同制作)を放送しています。ブーメランの達人など孤児達を主人公とした物語です。

以後、同枠は松竹が共同制作します。

吉川英治原作【神州天馬侠】(1968年〔松竹テレビ室〕共同制作)、大佛次郎原作【海の次郎丸】(1968年〔松竹テレビ室〕共同制作)、【黒い編笠】(1968年〔松竹テレビ室〕共同制作)。【白頭巾参上】(1969~1970年〔松竹テレビ室〕共同制作)まで時代劇が続きました。

黒い編笠と白頭巾参上では、大瀬康一が主演を務めました。

土曜の夜、自社制作で新たな取り組みも始めます(午後10時5分から55分間)。

【悪一代】(1969年)です。三隅研次(みすみけんじ)他による監督作【座頭市物語】シリーズ(〔大映〕配給)をヒットさせていた映画スター・勝新太郎(かつしんたろう)が初めてテレビに出演した主演作品でした。

以後も、本郷功次郎(ほんごうこうじろう)主演による村上元三原作【天保つむじ風】(1969年)、若尾文子(わかおあやこ)・岩下志麻(いわしたしま)・星由里子(ほしゆりこ)主演【戦国艶物語】(1969~1970年)を放送しました。同枠はそこで現代劇枠となりました。

1960年代後半のテレビ時代劇は、1960年代前半から続く子供向けの忍者作品や女性剣客ものの人気が続きました。この時期ならではの特徴としては、明治100年の時期にあったことから幕末を題材にした作品の増加でした。そして何より、黒澤明映画を支えた三船敏郎や脚本家達がテレビ時代劇に本格的に参画し、テレビ時代劇の質が向上した時期となりました。

著者名:三宅顕人

明治百年記念時代とテレビ時代劇
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