司馬遼太郎原作【新選組血風録】(2011年〔NHK BSプレミアム〕放送「BS時代劇」)。「BS時代劇」枠の第1弾。1960年代以来、映画やテレビ、舞台などの原作・原案となっていた司馬遼太郎の新選組の物語がBS時代劇の最初に据えられた。主演は土方歳三を演じた永井大。(■司馬遼太郎の新選組物語でBS時代劇がスタートより)
2010年代前半のテレビ時代劇では、国営の衛星放送で新しいテレビ時代劇の放送枠がスタートします。旧作の放送が中心だった民間の衛星放送局・時代劇専門チャンネルでも新作の制作・放送が開始。民放ではSF的な時代劇漫画を原作とするテレビ時代劇が量産されるなど、2010年代前半は各局でテレビ時代劇が花盛りとなります。
2010年代前半、NHK「大河ドラマ」(〔NHK〕→〔NHK総合〕他放送・日曜午後8時から45分間。1年間放送)では、ドラマの題材が男性主人公と女性主人公を交互に取り上げた時期となっています。この傾向は2010年に始まり2018年まで続きます。主役の性別への配慮が改めて高まった時期にあたります。
2010年代は、土佐藩脱藩浪人・坂本龍馬を主人公とした【龍馬伝】(2010年)に始まります。
以後、徳川秀忠(江戸幕府第2代将軍)の正室・江(ごう:浅井長政の三女)を主人公とした【江 ~姫たちの戦国~】(2011年)。
平安時代末期の武将・平清盛を主人公とした【平清盛】(2012年)。
会津藩の砲術師範の娘・山本八重(やまもとやえ)を主人公とした【八重の桜】(2013年)。山本八重はのちに同志社大学創設者・新島襄(にいじまじょう)の妻に。
戦国武将・黒田官兵衛を主人公とした【軍師官兵衛】(2014年)。
長州藩の吉田松陰(杉寅之助-吉田大次郎)の末妹・杉文(すぎふみ)を主人公とした【花燃ゆ】(2015年)。杉文はのちに吉田松陰の弟子・久坂玄瑞(くさかげんずい)の妻に。
以上が順に放送されました。
このうち、福山雅治(ふくやままさはる)が坂本龍馬を演じた龍馬伝は、第37回放送文化基金賞・テレビドラマ番組部門・優秀賞、「国際ドラマフェスティバル in TOKYO」内の東京ドラマアウォード2010で作品賞・連続ドラマ・優秀賞、エランドール賞2010で作品賞 ・TV ガイド賞など、複数の賞を獲得しました。
坂本龍馬が主人公のNHK大河ドラマは、龍馬伝で2度目です。その最初は42年前、第6作【竜馬がゆく】(1968年)です。
竜馬がゆくは、司馬遼太郎(しばりょうたろう)原作の時代小説に沿って描かれました。主演は北大路欣也(きたおおじきんや)です。モロクロ放送で、ビデオテープが高額だった当時はすべてを記録する体制が整っておらず、現存する映像は全52回のうち第16回の1本のみとなっています。
一方、龍馬伝には原作はなく、香川照之(かがわてるゆき)が演じた岩崎弥太郎(三菱創業者)の視点から独自に描かれたのが特徴です。
物語は、下士の坂本龍馬と地下浪人の岩崎弥太郎が、幼き頃に身分の高い上士(土佐藩・藩祖山内一豊土佐入封後の武士身分)から屈辱を受ける第1回「上士と下士」で始まります。最終回となる第48回「龍の魂」では、大政奉還という偉業を成し遂げた坂本龍馬と、坂本龍馬のおかげで武器の売買で財を成した岩崎弥太郎が描かれ、対象的となる男2人の別々の生き様が主題でした。
NHK(現・NHK総合)ではNHK大河ドラマだけでなく、正月のテレビ時代劇の単発番組シリーズNHK「正月時代劇」を1990年代中盤からスタートしています(1995年~)。
2010年代前半は、佐伯泰英(さえきやすひで)原作【陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜海の母】(かげろうのつじ いねむりいわね えどぞうし うみのはは:2010年)、金子成人(かねこなりと)脚本によるドラマオリジナル作【隠密秘帖】(2011年)、佐伯泰英原作【御鑓拝借〜酔いどれ小籐次留書〜】(おやりはいしゃく よいどれことうじとめがき:2013年)、宮部みゆき(みやべみゆき)原作【桜ほうさら】(2014年)が放送されました(2015年は未放送)。
なかでも、陽炎の辻は2007年に「木曜時代劇」で初ドラマ化されて以来の人気シリーズ作となっています。主演は山本耕史(やまもとこうじ)です。
同じくNHK(現・NHK総合)では「土曜時代劇」(2008~2011年:各回30分・全9~13回)も放送していました。
藤本有紀(ふじもとゆき)脚本によるオリジナルドラマ【咲くやこの花】(2010年)、佐伯泰英原作【まっつぐ〜鎌倉河岸捕物控〜】(2010年)、藤原緋沙子(ふじわらひさこ)原作【桂ちづる診察日録】(2010年)、金子成人脚本によるオリジナルドラマ【隠密八百八町】(2011年)です。
土曜時代劇は、地上波デジタルテレビ放送、通称地デジにテレビ放送が完全移行するまで続きました。
このうちオリジナル作品、咲くやこの花では江戸時代の町娘による百人一首かるた腕くらべの物語が描かれ、隠密八百八町では江戸時代後期を舞台に庶民のために生きる隠密(おんみつ:主君などからの秘密の命令を帯びた者。忍者や下級武士が担った)の物語が描かれます。主演はそれぞれ、成海璃子(なるみりこ)、舘ひろし(たちひろし)です。
土曜時代劇と同様のテレビ時代劇枠は地デジに完全移行後、「木曜時代劇」として蘇りました(2013~2016年)。
2013年には、ジェームス三木(じぇーむすみき)脚本によるオリジナルドラマ【あさきゆめみし 〜八百屋お七異聞】の1作品。
2014年は、赤川次郎(あかがわじろう)原作【鼠、江戸を疾る】、髙田郁(たかだいく)原作【銀二貫】(2014年)、佐伯泰英原作【吉原裏同心】(2014年)、宮部みゆき原作【ぼんくら】の4作品。
2015年は、葉室麟(はむろりん)原作【風の峠〜銀漢の賦〜】、火坂雅志(ひさかまさし)原案【かぶき者 慶次】、畠中恵(はたけなかめぐみ)原作【まんまこと〜麻之助裁定帳〜】、宮部みゆき原作【ぼんくら2】の4作品。
そして、木曜時代劇は藤本有紀脚本によるオリジナルドラマ【ちかえもん】(2016年)が、この枠の最後の作品となります。江戸時代前期を生きた浄瑠璃・歌舞伎作者の近松門左衛門を主人公に描いた物語です。藤本有紀は同作で第34回向田邦子賞を獲得しています。主演は、青木崇高(あおきむねたか)と松尾スズキ(まつおすずき)です。
2011年、地デジにテレビ放送が完全に移行します。通信用途の多様化により、周波数帯の再割当が2003年に開始。地デジの視聴地域を徐々に拡大し、2011年にそれまでのアナログテレビ放送が完全に終了しました。
それに伴ってNHK BSプレミアムにてテレビ時代劇枠「BS時代劇」が日曜午後6時45分からスタートします(各回45分・全5~12回。現在は金曜午後8時から45分間)。
BS時代劇の第1弾は、司馬遼太郎原作【新選組血風録】です(全12回)。
司馬遼太郎が新選組の面々を描いた短編集【新選組血風録】は、それまで映画やテレビ、舞台などの原作・原案となっていた人気時代小説で、それがBS時代劇の最初に据えられました。主演は、土方歳三を演じた永井大(ながいまさる)です。
BS時代劇では2010年代前半は以下の内容が放送されています。
<2011年>
<2012年>
<2013年>
<2014年>
<2015年>
なかでも、かねてよりテレビ時代劇では人気のシリーズだった大岡越前や、池波正太郎の生誕90周年を期に復活した雲霧仁左衛門が大きな話題となりました。それぞれ主演は、東山紀之(ひがしやまのりゆき:少年隊)と中井貴一(なかいきいち)です。
2011年、現在フジテレビが主導する時代劇専門チャンネル(1998年開局〔スカイパーフェクTV!〕→〔スカパー!〕他放送)では、過去のテレビ時代劇の放送だけでなく、初めてのオリジナル時代劇を制作・放送します。
池波正太郎原作の人気テレビ時代劇シリーズの派生作「鬼平外伝」です。時代劇専門チャンネルとスカパー!で共同制作。オリジナル本格時代劇が掲げられ、CSチャンネル史上初のオリジナル時代劇となりました。
第1弾は【鬼平外伝 夜兎の角右衛門】(2011年〔松竹京都撮影所〕制作協力・〔スカパーJSAT〕協力・〔日本映画衛星放送〕〔松竹〕共同制作)。続く第2弾は【鬼平外伝 熊五郎の顔】(2011年〔松竹京都撮影所〕制作協力・〔スカパーJSAT〕協力・〔日本映画衛星放送〕〔松竹〕共同制作)でした。
以後、第3回衛星放送協会オリジナル番組アワード・優秀賞を獲得した【鬼平外伝 正月四日の客】(2012年〔松竹撮影所〕制作協力・〔スカパーJSAT〕協力・〔日本映画衛星放送〕〔松竹〕共同制作)、【鬼平外伝 老盗流転】(2013年〔松竹撮影所〕制作協力・〔スカパーJSAT〕協力・〔日本映画衛星放送〕〔松竹〕共同制作)と年に1本ペースで制作されました。
主演はそれぞれ、2代目・中村梅雀(なかむらばいじゃく)、寺島しのぶ(てらしましのぶ)、松平健(まつだいらけん)、橋爪功(はしづめいさお)です。
中村梅雀主演作は、池波正太郎原作【闇の狩人】(2014年〔松竹撮影所〕制作協力・〔スカパーJSAT〕〔時代劇専門チャンネル〕〔松竹〕共同制作)が続きます。同名の原作小説が20年ぶりの映像化となります。
前篇をBSスカパー!で先行放送後、時代劇専門チャンネルで前・後篇を放送しました。同作は、第5回衛星放送協会オリジナル番組アワード・オリジナル番組賞・ドラマ番組部門・最優秀賞を獲得しています。
その間、時代劇専門チャンネルでは、「時代劇専門チャンネルpresents supported byスカパー!」が掲げられた【新・御宿かわせみ】(2013年〔スカパーJSAT〕〔日本映画衛星放送〕〔NHKエンタープライズ〕共同制作)も単発で制作・放送しました。
原作は、平岩弓枝(ひらいわゆみえ)。幕末の江戸の旅籠を舞台にしたこの物語は、真野響子(まのきょうこ)主演によるNHK「水曜時代劇」で人気を博したテレビ時代劇シリーズです。
新・御宿かわせみは、時代を明治時代初頭に移した続編に仕上げられました。主演は真野響子が引き続き務めました。NHKエンタープライズがNHK以外で放送されるドラマの制作を初めて手がけることも話題となりました。
そして、時代劇専門チャンネルとスカパー!と共同で、藤沢周平原作の3作の新作短編を制作・放送します。
仲代達矢(なかだいたつや)主演【果し合い】(2015年〔松竹撮影所〕制作協力・〔時代劇専門チャンネル〕〔スカパー!〕〔松竹〕共同制作)、檀れい(だんれい)主演【遅いしあわせ】(2015年〔松竹撮影所〕制作協力・〔時代劇専門チャンネル〕〔松竹〕共同制作)、中村梅雀(2代目)主演【冬の日】(2015年〔松竹撮影所〕制作協力・〔時代劇専門チャンネル〕〔松竹〕共同制作)です。
これらの企画は、第6回衛星放送協会オリジナル番組アワード・オリジナル編成企画賞・ドラマ番組部門・最優秀賞を獲得しました。
なかでも、監督を杉田成道(すぎたしげみち:フジテレビ出身のドラマ演出家。代表作【北の国から】シリーズ、映画【最後の忠臣蔵】など)が手がけた果し合いは、アメリカ合衆国のテレビ界の賞ニューヨーク・フェスティバルのベストテレビ&フィルム部門2017で「Drama Special部門」金賞を獲得しています。
兄の家に住み込む厄介者の老いた武士が、自分の面倒を見てくれる娘(甥の娘)に生じた縁談を巡るトラブルのために身を捨てる物語が描かれます。
2010年代前半は他にも、民間の衛星放送各局で新作のテレビ時代劇が制作・放送されます。
民間初の衛星放送局・WOWOWでは、オリジナルドラマ「ドラマW」(2003年~)枠をスタート後、「連続ドラマW」を設けます(2008年~)。両枠共に、有料放送であることからスポンサーの制限を受けず、演出に映画監督を、原作に人気作家を、主演に実力派俳優を、がこだわられたテレビドラマ枠です。
2010年代前半、連続ドラマWに初の時代劇が登場します。オノナツメの漫画原作【ふたがしら】(2015年〔ホリプロ〕制作協力・「土曜オリジナルドラマ」)です。
監督は入江悠(いりえよう)、脚本は劇団☆新感線の中島かずき(かなじまかずき)、松山ケンイチ(まつやまけんいち)と大衆演劇の劇団を率いる早乙女太一(さおとめたいち)のダブル主演です。【ふたがしら2】(2016年〔ホリプロ〕制作協力・「土曜オリジナルドラマ」)も続きました。
2010年代前半、BSジャパン(現・BSテレ東)では開局15周年特別企画として、「松本清張ミステリー時代劇」、「山本周五郎人情時代劇」、多岐川恭(たきがわきょう)原作「男と女のミステリー時代劇」、横溝正史(よこみぞせいし)原作「人形佐七捕物帳」(2015~2017年〔BSジャパン〕〔ドラマデザイン社〕製作・「火曜スペシャル」枠)をスタートさせます。
「山本周五郎人情時代劇」(2015~2016年)では、山本周五郎の短編集12話に基づき、1話完結で全12話を放送。主演は、高橋一生(たかはしいっせい)、秋元才加(あきもとさやか)、平山あや(ひらやまあや)など多くの若手俳優がテレビ時代劇に挑みました。
2010年、民間放送におけるテレビ時代劇では、SF要素を含む時代劇漫画を原作とする作品が続けて制作されました。
村上もとか(むらかみもとか)の青年漫画を原作とする【JIN-仁-】(2009年〔TBSテレビ〕制作・〔TBS〕製作・〔TBSテレビ〕系列「日曜劇場」)が前年に平均視聴率25.3%の高視聴率を記録。東京ドラマアウォード2010で作品賞・連続ドラマ・グランプリを獲得しました。
同作は、TBS開局60周年記念番組を掲げた続編【JIN-仁- 完結編】(2010年〔TBSテレビ〕制作・〔TBS〕製作・〔TBSテレビ〕系列「日曜劇場」)も制作され、平均視聴率21.3%とこちらも高い視聴率を記録しました。
同年、よしながふみの少女漫画を原作とする時代劇映画【大奥】(2010年〔松竹/アスミック・エース〕配給)が公開。その続編として【大奥〜誕生[有功・家光篇]】(2010年〔アスミック・エース〕制作協力・〔TBSテレビ〕制作・〔TBS〕製作・〔TBSテレビ〕系列「金曜ドラマ」)も放送されます。
その2年後には、時代劇映画【大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]】(2012年〔松竹/アスミック・エース〕配給)も公開され、大奥は3部作となっています。
JIN-仁-は現代の脳外科医が幕末へタイムスリップ、大奥は男女逆転SF大河ロマンと謳われ、共にSF的な内容が特徴のテレビ時代劇でした。
このJIN-仁-、大奥に続くかのように他局でも、SF時代劇漫画を原作とする連続テレビ時代劇が放送されます。
2013年には、西村ミツル(にしむらみつる)原作/梶川卓郎(かじわらたくろう)漫画によるグルメ漫画を原作とする【信長のシェフ】(2013年〔テレビ朝日〕〔東映〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列「金曜ナイトドラマ」)が深夜帯(金曜午後11時15分~午前12時15分)に放送されます。同作は好評を博し、第2期シリーズの制作にあたり、ゴールデンタイム(木曜午後7時58分~午後8時54分)に放送されました(2014年)。
2014年には、石井あゆみの漫画を原作とする【信長協奏曲】(2014年〔フジテレビ〕制作・系列「月9」)が放送されます(3ヵ月前にテレビアニメ化も)。1980年代後半に新設された「月9」(月曜午後9時)と呼ばれるゴールデンタイムの枠で、初のテレビ時代劇となりました。好評から劇場版も制作されました(2016年)。
信長のシェフは現代の料理人が戦国時代へタイムスリップし、織田信長のシェフに。信長協奏曲は現代の男子高校生が戦国時代へタイムスリップし、織田信長の身代りになるという、共にSF的な内容でした。
黒江S介(くろええすすけ)の漫画原作【サムライせんせい】(2015年〔MMJ〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列「金曜ナイトドラマ」)も続きます。
こちらは、土佐勤王党を率いた幕末の志士・武市半平太が150年後の日本にタイムスリップし、学習塾の先生となるSF時代劇でした。
信長のシェフではKis-My-Ft2の玉森裕太(たまもりゆうた)、サムライせんせいでは錦戸亮(にしきどりょう:当時関ジャニ∞)がそれぞれ主演務めるなど、大手男性アイドル事務所所属の面々によるテレビ時代劇が続きました。
この時期、関西の放送局の深夜枠や、いわゆる独立放送局(*ネットワーク系列に所属しない地域放送局)でも多彩なテレビ時代劇が制作・放送されています。
黒乃奈々絵(くろのななえ)の漫画の実写版【新撰組PEACE MAKER】(2010年〔ジョリー・ロジャー〕制作・〔毎日放送〕放送「金曜ナイト劇場」・〔TBSテレビ〕系列)、家庭用ゲームからテレビアニメ化と舞台化に続くテレビ時代劇【戦国BASARA -MOONLIGHT PARTY-】(2012年〔サモワール〕制作・〔毎日放送〕〔BS-TBS〕放送)。
新感覚お茶の間歴史バラエティ番組【戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜】(2010~2012年〔tvk〕〔チバテレ〕〔テレ玉〕〔サンテレビ〕放送)や、戦国特撮ドラマ【戦国★男士】(2011~2012年〔tvk〕〔チバテレ〕〔テレ玉〕〔サンテレビ〕放送)などです。
そして、人情時代劇【猫侍】(2013年〔東名阪ネット6〕〔5いっしょ3ちゃんねる〕他放送)が続きます。それまで東名阪ネット6で放送されていた人気の動物ドラマシリーズの第10弾で、このとき時代劇の題材が導入されました。
猫侍の物語は、幕末を生きる浪人剣士が、生活のために猫を暗殺するという依頼を引き受けたことから始まります。けれども暗殺対象だった白猫の愛らしさを知り、命を助けることに。以後、白猫と共に暮らすことで自身の生き方を改めていく浪人剣士の日常が描かれます。
好評から、翌年に映画化(2014年)、SEASON2(2015年)、第2弾映画化(2014年)、スピンオフ(派生作)化(2016年)と制作された息の長い作品となりました。
2010年前半、テレビ朝日の単発テレビ時代劇では、次の作品が制作されています。
吉村昭(よしむらあきら)原作【遺恨あり 明治十三年最後の仇討】(2011年〔東映京都撮影所〕制作協力・〔ホリプロ〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列)は、第37回放送文化基金賞・テレビドラマ番組部門・本賞獲得、東京ドラマアウォード2011で作品賞・単発ドラマ部門・優秀賞を獲得しました。
同作は、もと秋月藩藩士・臼井六郎(うすいろくろう)による日本最後の仇討ちとされる史実に基づきます。明治に改元される直前、攘夷派によって藩家老だった両親を殺された息子が、仇討ちが禁止されたあとに宿願を果たすという時代の狭間を描いた物語です。
主演は藤原竜也(ふじわらたつや)です。
同局ではこの時期、他にも、高田郁(たかだかおる)【みをつくし料理帖】の初のテレビドラマ化(2012、2014年〔東映太秦映画村〕制作協力・〔東映〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列「ドラマスペシャル」)や山岡荘八(やまおかそうはち)原案【濃姫】(2012、2013年〔東映〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列「ドラマスペシャル」)も放送しています。
主演はそれぞれ、北川景子(きたがわけいこ)、観月ありさ(みづきありさ)です。
そして、テレビ朝日開局55周年記念ドラマスペシャル、吉川英治(よしかわえいじ)原作【宮本武蔵】(2014年〔東映〕制作協力・〔テレビ朝日〕制作・〔テレビ朝日〕系列)も放送します。
映画、テレビ時代劇、漫画などで人気の題材で、11年ぶりにテレビ時代劇化された宮本武蔵を演じたのは、出演作品の多くが高視聴率を誇るアイドル・木村拓哉(きむらたくや:当時SMAP)です。
1980年代初頭からテレビ東京では、正月恒例の長時間特別番組枠「新春ワイド時代劇」を放送していました。シリーズが終了することになった2010年代は次の内容が放送されました。
<2010年>
<2011年>
<2012年>
<2013年>
<2014年>
<2015年>
<2016年>
ほとんどが、これまでにも映像化された内容や定番の題材ですが、戦国疾風伝 二人の軍師 秀吉に天下を獲らせた男たちでは、新しい題材が登場しています。羽柴(豊臣)秀吉に仕えた2人の軍師、竹中半兵衛と黒田官兵衛が主人公です。NHK大河ドラマ軍師官兵衛の放送3年前でした(軍師官兵衛の制作発表は2012年)。
豊臣秀吉を西田敏行、黒田官兵衛を高橋克典、竹中半兵衛を山本耕史がそれぞれ演じました。
2010年代前半は、ベテラン俳優がテレビ時代劇に回帰しています。
田村正和(たむらまさかず)は、スペシャルドラマ【忠臣蔵 音無しの剣】(2008年〔東映〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列)で、久しぶりにテレビ時代劇で主演を務めます。
2010年代に入ると、山本周五郎原作のスペシャルドラマ【樅ノ木は残った】(2010年〔東映〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列)、ドラマスペシャル【忠臣蔵〜その男、大石内蔵助】(2010年〔東映〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列)、テレビ朝日開局55周年記念ドラマスペシャルで滝口康彦(たきぐちやすひこ)原作【上意討ち 拝領妻始末】(2013年〔東映〕〔テレビ朝日〕共同制作・〔テレビ朝日〕系列)で主演しました。
一方、数々のテレビ時代劇で人気を博した藤田まこと(ふじたまこと)が逝去します(2010年)。
亡くなった年、藤田まこと主演の人気シリーズ作で、3年前に東山紀之主演による新たな内容となっていた単発のテレビ時代劇【必殺仕事人2010】(2010年〔松竹京都撮影所〕製作協力・〔朝日放送〕〔テレビ朝日〕〔松竹〕共同制作・〔朝日放送〕〔テレビ朝日〕系列)にて、追悼がなされました。
また、藤田まこと主演による池波正太郎原作の人気テレビ時代劇シリーズは、北大路欣也が新たに主演を継承します。
池波正太郎の生誕90周年を期に以後、単発で【剣客商売】(2012、2013、2014、2015、2018、2020年〔松竹撮影所〕製作協力・〔フジテレビ〕〔松竹〕共同制作・〔フジテレビ〕系列「金曜プレミアム」)が放送されています。
2010年代前半のテレビ時代劇は、民間放送ではSF要素を含む漫画原作作品が人気となり量産化。時代劇専門チャンネルでは新作のオリジナルテレビ時代劇の制作を開始。そして、国営放送では地デジへの完全移行によってスタートしたBS時代劇がスタートするなど、テレビ時代劇が改めて活況をみせる時期となりました。