日本刀を売却したいと言っても、理由は様々あるでしょう。相続で引き継いだけれど手入れができない。新しい日本刀が欲しいから下取りに出したい。生前整理で処分しておきたいためなど。そこで、はじめて日本刀を売却する場合でも、知っておくと役に立つ、売却の注意点についてご紹介します。
日本刀を売却したい場合は、どうしたら良いと思いますか。刀剣好きの人を探して「個人間売買」をするか。リサイクルショップに持ち込むか。
個人間売買は、トラブルに巻き込まれるケースが多いと聞くし、安易にリサイクルショップや骨董店、遺品整理店に刀を持ち込んだ結果、0円と査定されたなんて聞くと、悲しくなってしまいます。
そうかと言って、刀剣を取り扱うお店を、どうやって見付けたら良いか分からない。そんな人におすすめしたいのが、刀剣を取り扱う刀剣商、しかも「刀剣評価鑑定士」(とうけんひょうかかんていし)がいる、選りすぐりの刀剣商をインターネットで検索する方法です。
刀剣評価鑑定士とは、「全国刀剣商業協同組合」が創設した刀剣商の専門資格。刀剣は、古物であることから、「古物営業法」により古物営業の許可を得た古物商でなければ、売買することができません。
しかし、古物商でありさえすれば売買が可能なことから、価値が分からない古物商が刀剣を不当に扱っていた状態が存在していました。そこで、同じ古物商の中でも差別化が図られ、刀剣評価鑑定士の資格制度が生まれたのです。
つまり、刀剣評価鑑定士がいる刀剣商は、刀剣を売却するのにふさわしい、安心の専門店であると言えます。大切な日本刀を売却するときには、近くのリサイクルショップや骨董店に持ち込んでは絶対にいけません。ぜひ、インターネット検索で刀剣評価鑑定士がいる刀剣商を見付けましょう。「売却、刀剣評価鑑定士、あなたの家の最寄り駅」などがおすすめのキーワード。最良の刀剣商を選びましょう。
日本刀を売却する場合、用意するべき物があります。それは、次の3点です。
まずは、売却したい日本刀に、「銃砲刀剣類登録証」があるかを確認し、用意しましょう。銃砲刀剣類登録証は、人間の「戸籍」のような物。登録証のない刀は、「銃刀法[銃砲刀剣類所持等取締法]違反」となり、売ることも、所持することもできません。
銃砲刀剣類登録証があったなら、すみやかに「所有者変更手続」を行ないましょう。日本刀は、所有者が変更した場合、所有者変更手続を行なうことが義務付けられているからです。旧所有者の名前・住所から、あなたの名前・住所に変更しないと、刀を売ることはできません。
所有者変更手続の方法は簡単。銃砲刀剣類登録証に記載されている都道府県の教育委員会に郵送で連絡します。必ず、銃砲刀剣類登録証に記載されている内容(登録証記号番号、交付年月日、種別、長さ、反り、目くぎ穴、銘文)、旧所有者の名前と住所、新所有者の名前と住所、電話番号を記入しなければなりません。
各都道府県の教育委員会のホームページでは、所有者変更手続のPDFフォーマットを作成している場合もあるので、利用しましょう。なお、ほとんどの教育委員会は受理したかどうかの連絡がありませんので、心配な人は電話で確認する必要があります。
また銃砲刀剣類登録証がない場合でも、慌てなくて大丈夫です。相続で受け継いだ場合など、最近まで日本刀があることを知らなかった場合は、仕方がありません。罪にはなりませんので安心して、すみやかに警察の生活安全課にまずは電話で連絡をしましょう。
警察で「刀剣類発見届出済証」(無料)を交付してもらい、交付から20日以内に、その刀剣類発見届出済証をお住まいの地域にある教育委員会の審査を受ければ、銃砲刀剣類登録証(有料:6,300円)を発行してもらえます。
次に「身分証明書」を用意しましょう。なぜなら、日本刀は「古物」に該当するため、「古物商」の資格をもって売買を行ないますが、「古物営業法 第十五条」により、買取相手の氏名、住所、職業、年齢が記載された文書などを確認する、「本人確認」が義務付けられているからです。
これは、盗品などの不正品の混入を防ぐため。売却時には、身分証明書(運転免許証、健康保険証など)の提示が求められますので、あらかじめ用意しておきましょう。なお、「古物営業法 第四条」により、未成年者や刑に処せられた人、暴力団員などは刀の売却はできません。
銃砲刀剣類登録証があったとしても、本体がなければ、売却はできません。日本刀本体があってはじめて、売却という行為ができます。また、「付属品」があるかも確認しましょう。日本刀が白鞘に収められている場合は、他に付属品がある可能性があります。
付属品とは、拵(こしらえ:鞘や柄などの外装)、鍔(つば)などの刀装具のこと。「三所物」(みところもの)と言って、小柄(こづか)、笄(こうがい)、目貫(めぬき)を同一意匠で揃えている場合は高級品と見なされることも多く、高価となります。
「鑑定書」があるかどうかも、売却額に大きな差がでますので、ある場合は、忘れずに必ず添えましょう。
あなたの日本刀はいくらで売れると思いますか。売却する前に、「相場」(そうば)を知っておけば、騙されることや落胆しすぎることはありません。一般的に日本刀の買取相場は、購入時の60~80%。また、以下のポイントに基づいて、決められているのです。
制作年代は、古いほど良いと言っても過言ではありません。材料である「玉鋼」(たまはがね)という面から考えても、現代刀よりも新々刀、新々刀よりも新刀、新刀よりも古刀のほうが、質が良いと言われ、高価となります。
人気の刀工、流派は「ブランド力」があり、高額で取引されています。刀剣をモデルにした映画やアニメが流行るなど、その時代の流行によっても変動されます。
日本刀のできとは、日本刀の「名物」(めいぶつ)や「業物」(わざもの)、「位列」(いれつ:等級)に入っているかということ。名物とは、1719年(享保4年)に、8代将軍「徳川吉宗」(とくがわよしむね)が「本阿弥光忠」(ほんあみこうちゅう)に命じて編纂させた書物に収載された約250振の刀剣。これらは名刀中の名刀と評価され、ものすごい高値が付いています。
業物とは、1797年(寛政9年)編纂された「懐宝剣尺」により付けられた評価のこと。試し斬り役人「山田浅右衛門吉睦」(やまだあさえもんよしむつ)の協力を得て、切れ味が鋭い最強の日本刀を評価しました。切れ味の高い順から、最上大業物、大業物、良業物、業物の4段階になっています。
位列とは、日本刀というよりも、刀工に付けられたランキングのこと。古刀では「本朝鍛冶考」(ほんちょうかじこう)、「掌中古刀銘鑑」(しょうちゅうことうめいかん)、新刀では「新刀弁疑」(しんとうべんぎ)により評価が付けられています。評価が高い順から、最上作、上々作、上作、中上作、中作の5段階になっています。
現代では、「日本美術刀剣保存協会」が発行している鑑定書の評価が重要視される傾向が強いです。評価が高い順から、特別重要刀剣、重要刀剣、特別保存刀剣、保存刀剣の4段階。なお、重要刀剣ならば、約100~300万円が相場だと言われています。
日本刀の保存状態とは、疵(きず)や錆(さび)がないかどうか。疵や錆がないほうが高値になると言えますが、疵や錆がある場合でも「味」がある物として高値が付くこともあります。なお、錆は素人が簡単に取れるものではありません。下手に触れてしまうと価値が下がってしまう場合もありえます。
研師に研磨してもらうのが最適ですが、1寸あたり、6,000~1万円、一般的な刀のサイズである、2尺3寸の場合は約20万円かかる場合も。はじめから売却を考えるならば、錆があっても触れないで、そのまま査定に出したほうが無難でしょう。
インターネット検索で、刀剣評価鑑定士のいる最寄りの刀剣商を、見付けることはできましたか。目ぼしいお店が見つかったら、次はどのように持ち込むのかを考えてみましょう。
日本刀をお店に持ち込む方法としては、「店頭」、「訪問」、「郵送」の3つの方法があります。それぞれに、メリット、デメリットがありますので、よく考えて選びましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
店頭 | 対面で店員と交渉ができる。 | 日本刀を運ぶ手間がかかる。 |
訪問 | お店に行く手間が省ける。 対面で店員と交渉ができる。 |
訪問してもらっているので、売却したくない場合に断りにくい。 |
郵送 | お店に行く手間が省ける。 | 相手の顔が見えない。 売却したくない場合に、無事に返却されるか心配。 |
郵送を選んだ場合、どのように梱包して良いのか困ると思いますが、刀剣評価鑑定士がいる刀剣商の多くが、査定前に「梱包材セット」を送ってくれる場合があります。また、お店によっては「直接買取」と「刀剣オークションに代理出店した結果の買取」を選べるところも。「刀剣オークション」には全国各地の刀剣商や刀剣好きな人が集まるので、より客観的に自分の日本刀の価値を知ることができるかもしれません。
あとは、あなたがどの刀剣商を選んで、どの売買方法を選ぶかどうか。急ぐなら別ですが、売却するならば最低2~3件の刀剣商に査定をお願いして、比較検討することをおすすめします。
第二章 古物営業の許可等
第一節 古物商及び古物市場主(許可の基準)
第四条 公安委員会は、前条の規定による許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、許可をしてはならない。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、又は第三十一条に規定する罪若しくは刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十五条、第二百四十七条、第二百五十四条若しくは第二百五十六条第二項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して五年を経過しない者
三 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
四 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第十二条若しくは第十二条の六の規定による命令又は同法第十二条の四第二項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの
五 住居の定まらない者
六 第二十四条の規定によりその古物営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前六十日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から起算して五年を経過しないものを含む。)
七 第二十四条の規定による許可の取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該取消しをする日又は当該取消しをしないことを決定する日までの間に第八条第一項第一号の規定による許可証の返納をした者
(その古物営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で、当該返納の日から起算して五年を経過しないもの
八 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人であって、その法定代理人が前各号及び第十号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
九 営業所又は古物市場ごとに第十三条第一項の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
十 法人で、その役員のうちに第一号から第七号までのいずれかに該当する者があるもの第三章 古物商及び古物市場主の遵守事項等
(確認等及び申告)
第十五条 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれかに掲げる措置をとらなければならない。
一 相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認すること。
二 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるものに限る。)の交付を受けること。
三 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢の電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下同じ。)による記録であって、これらの情報についてその者による電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名をいい、当該電子署名について同法第四条第一項又は第十五条第一項の認定を受けた者により同法第二条第二項に規定する証明がされるものに限る。)が行われているものの提供を受けること。
四 前三号に掲げるもののほか、これらに準ずる措置として国家公安委員会規則で定めるもの2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、同項に規定する措置をとることを要しない。
一 対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満である取引をする場合(特に前項に規定する措置をとる必要があるものとして国家公安委員会規則で定める古物に係る取引をする場合を除く。)
二 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受ける場合3 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとする場合において、当該古物について不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。
『e-Govウェブサイト 古物営業法(http://www.e-gov.go.jp)』より