日本式甲冑は、膨大な数の部品で構成されていますが、それらのパーツをつなぎ合わせているのが「縅毛」(おどしげ)です。縅毛の種類や色、さらには縅毛によって作り出される模様などについてご紹介します。
縅毛には様々な色や素材が使われており、これらの色や素材がそのまま縅毛の名前として名付けられます。
例えば、絹の組紐を萌黄色に染めた縅毛であれば、「萌黄絹糸縅」(もえぎきぬいとおどし)など。
では、縅毛の基本的な素材である組紐(糸)、韋(かわ)、綾(あや)について見ていきましょう。
縅毛には、赤、萌黄/萌葱、紺など、様々な色が使われており、それぞれに意味や願いが込められています。現代の五月人形にも通ずる主な縅毛の色が持つ意味を見ていきましょう。
浅葱色は日本で特徴的に見られる色で、日本の伝統色のひとつとされています。
縅の本来の目的は、小札や小札板をつなぎ合わせて甲冑を成形すること。しかし、数種類の縅毛を組み合わせることにより、大きな1領の甲冑を仕上げたときに、美しい文様を浮かび上がらせることもできるのです。代表的な縅の模様について見ていきましょう。
沢瀉縅は、上を狭く、下を裾開きに縅す方法で、鎧に浮かび上がる大きな色違いの三角形が特徴。
地の色が紫だった場合、地の色に合わせて「紫地沢瀉縅」(むらさきじおもだかおどし)というような呼び方をします。
愛媛県今治市の「大山祇神社」(おおやまづみじんじゃ)は、現存最古と言われている大鎧 、国宝「沢潟縅鎧」(おもだかおどしよろい)が現存していますが、甲冑の形ではなく「残欠」(ざんけつ:一部が欠けて不完全なこと)の状態となっています。
ただし、腰取縅は兜などにも使われる言葉なので、肩裾取縅とは区別されています。千葉県の有形文化財に指定されている「黒糸肩裾取縅胴丸」(くろいとかたすそどりおどしどうまる)などは、この代表例です。
様々な色の縅毛を使った方法で、3~5色程度の色が使われるのが一般的。
重要文化財の「色々糸縅腹巻」(いろいろいとおどしのはらまき)は、肩裾部分が紅と白の段縅のようになっており、腰が茶を基調とした配色です。
決して派手な色だとは言えませんが、縅毛の色の対比が目を引きます。