日本刀を作る際には様々な工程が必要。今回はその工程のうち、特に刀匠がかかわる工程を、刀剣ワールドのYouTubeチャンネルにて無鑑査刀匠・尾川兼國さんの実演風景をもとに紹介をしています。そこで、動画の内容を文字でも見たい方に向けて、動画内の画像を使って文字で解説。動画と本ページを併せて観ることで日本刀の作り方を覚えていきましょう。
同じ大きさに切りそろえられた炭。
日本刀を作刀する際、鋼を加熱する燃料として炭が使われる。
刀鍛冶の修行に入ると、最初は、炭切りを覚える期間であると言われる。
刀匠となるためのはじめに修得する技、それが炭切りである。
日本刀誕生までの道のり。その本格的な第一歩と言えるのが、玉鋼を選別する作業。
玉鋼を火床で熱する。そして、5mm程度の厚さになるまで薄く打ち延ばす。打ち延ばし、熱された状態である玉鋼を水に入れて、急激に冷やす。次に煎餅状になった玉鋼を小槌でおよそ2cm四方に小割する。
ここでは、その材質を見極める。炭素量が多く、硬い鉄は、すぐに割れる。一方、炭素量が少なく、やわらかい鉄は、割れにくいと言われる。
そして、炭素量が少なく、やわらかい鉄は、刀身の中心部分となる心鉄用に、炭素量が多く、硬い鉄は、心鉄を外側から包む皮鉄用に選別される。この鉄の見極めが、のちの日本刀の出来を左右する重要な工程。刀匠による熟練の眼が、必要とされる。
日本刀が強くあるために欠かせない工程へと入る。小割され、心鉄用と皮鉄用に分けられた玉鋼を梃子皿に、それぞれ別に積み上げ、火床で熱する。
ここでは、1300度以上で熱する。その温度の見極めにも刀匠の経験から打ち出された、熟練の技が活かされる。そして折り返し鍛錬が始まる。
飛び散る火花とともに、含まれていた不純物が取り除かれる。折り返し鍛錬は、充分に沸かされた素材を平たく打ち延ばしていき、さらに2枚に折り返す。
この作業を繰り返し、繰り返し行う。その数、皮鉄はおよそ15回、心鉄はおよそ8回。その結果、幾重にも連なった層となる。これこそが、日本刀が強靭である理由のひとつなのだ。
この工程では、炭素量が少なくやわらかい心鉄を、炭素量が多く硬い皮鉄で包み、鍛接していく。
これは、日本刀の折れず、曲がらず、よく切れるを追求するため、切れる、曲がらないを実現するためには硬く、そして折れないを実現するには、やわらかくなければならないという矛盾を解決した、日本刀作刀の工程における、大きな特徴である。日本刀独特の強靭さがここで生まれる。
造込みが終わった鋼を、再び熱し、棒状に打ち延ばしていく。延ばされた鋼を、小槌で叩きながら、刀剣の造込み作法にしたがって、形状を整えていく。鋒/切先は、先端を斜めに切り、小槌でその形を整えていく。刀身の形が徐々に見え始めてきた。
刀匠の思い、魂の込められた日本刀。
ここに、命が宿る。
日本刀を作る技術は、世界の中で、ここ日本にだけ存在する唯一無二の技術なのだ。
刀匠の魂がつなぐ、日本の伝統、ここにあり……。