日本刀の作り方

日本刀の作り方解説
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日本刀の作り方解説 日本刀の作り方解説
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日本刀を作る際には様々な工程が必要。今回はその工程のうち、特に刀匠がかかわる工程を、刀剣ワールドのYouTubeチャンネルにて無鑑査刀匠・尾川兼國さんの実演風景をもとに紹介をしています。そこで、動画の内容を文字でも見たい方に向けて、動画内の画像を使って文字で解説。動画と本ページを併せて観ることで日本刀の作り方を覚えていきましょう。

日本刀の作り方~刀匠編~:オープニング

日本刀で大切にされる「折れず、曲がらず、よく切れる」。そう、日本刀には、強さ、そして美しさがある。そこには、刀匠の手によって磨かれ、発展してきた技術がある。現代に伝わる、日本刀の作り方。尾川兼國 無鑑査刀匠の技をご覧下さい。

尾川兼國 無鑑査刀匠。1953年生まれ。父である初代・尾川兼圀 無鑑査刀匠を追い、33歳で弟子入り。厳しい修行を重ね、2009年、父に続き、無鑑査刀匠に認定された。打ち寄せる波を思わせる、相州伝の濤乱刃と呼ばれる刃文が、作品の特徴。日本刀の文化保持と、今後の発展に尽力する日々を送る。

  • オープニング1
    オープニング1
  • オープニング2
    オープニング2

日本刀の作り方~刀匠編~:炭切り

炭切り

炭切り

同じ大きさに切りそろえられた炭。

日本刀を作刀する際、鋼を加熱する燃料として炭が使われる。

刀鍛冶の修行に入ると、最初は、炭切りを覚える期間であると言われる。

刀匠となるためのはじめに修得する技、それが炭切りである。

日本刀の作り方~刀匠編~:水減し・小割り

日本刀誕生までの道のり。その本格的な第一歩と言えるのが、玉鋼を選別する作業。

玉鋼を火床で熱する。そして、5mm程度の厚さになるまで薄く打ち延ばす。打ち延ばし、熱された状態である玉鋼を水に入れて、急激に冷やす。次に煎餅状になった玉鋼を小槌でおよそ2cm四方に小割する。

ここでは、その材質を見極める。炭素量が多く、硬い鉄は、すぐに割れる。一方、炭素量が少なく、やわらかい鉄は、割れにくいと言われる。

そして、炭素量が少なく、やわらかい鉄は、刀身の中心部分となる心鉄用に、炭素量が多く、硬い鉄は、心鉄を外側から包む皮鉄用に選別される。この鉄の見極めが、のちの日本刀の出来を左右する重要な工程。刀匠による熟練の眼が、必要とされる。

  • 水減し・小割り1
    水減し・小割り1
  • 水減し・小割り2
    水減し・小割り2

日本刀の作り方~刀匠編~:折り返し鍛錬

日本刀が強くあるために欠かせない工程へと入る。小割され、心鉄用と皮鉄用に分けられた玉鋼を梃子皿に、それぞれ別に積み上げ、火床で熱する。

ここでは、1300度以上で熱する。その温度の見極めにも刀匠の経験から打ち出された、熟練の技が活かされる。そして折り返し鍛錬が始まる。

飛び散る火花とともに、含まれていた不純物が取り除かれる。折り返し鍛錬は、充分に沸かされた素材を平たく打ち延ばしていき、さらに2枚に折り返す。

この作業を繰り返し、繰り返し行う。その数、皮鉄はおよそ15回、心鉄はおよそ8回。その結果、幾重にも連なった層となる。これこそが、日本刀が強靭である理由のひとつなのだ。

  • 折り返し鍛錬1
    折り返し鍛錬1
  • 折り返し鍛錬2
    折り返し鍛錬2

日本刀の作り方~刀匠編~:造込み

造込み

造込み

この工程では、炭素量が少なくやわらかい心鉄を、炭素量が多く硬い皮鉄で包み、鍛接していく。

これは、日本刀の折れず、曲がらず、よく切れるを追求するため、切れる、曲がらないを実現するためには硬く、そして折れないを実現するには、やわらかくなければならないという矛盾を解決した、日本刀作刀の工程における、大きな特徴である。日本刀独特の強靭さがここで生まれる。

造込みが終わった鋼を、再び熱し、棒状に打ち延ばしていく。延ばされた鋼を、小槌で叩きながら、刀剣の造込み作法にしたがって、形状を整えていく。鋒/切先は、先端を斜めに切り、小槌でその形を整えていく。刀身の形が徐々に見え始めてきた。

日本刀の作り方~刀匠編~:土置き・焼き入れ

日本刀の美しさの象徴であり、醍醐味のひとつである刃文。そのもととなるのが、土置きの工程。粘土に、炭の粉や砥石の細粉を混ぜて作られた焼刃土を刃文の種類にしたがって、土置きしていく。刃には薄く塗り、それ以外は厚く塗る。

その厚みの境界線が刃文となり、模様が形作られていく。そして、日本刀の作刀工程において、クライマックスと言える「焼き入れ」へと入る。土置きが終わり、乾燥した刀身をおよそ800~850度に熱する。

そして頃合いを見て、急冷する。この瞬間の見極めこそが、真骨頂。熟練の技が試される一瞬。そして日本刀の大きな特徴である、反りと刃文が生まれた。

  • 土置き
    土置き
  • 焼き入れ
    焼き入れ

日本刀の作り方~刀匠編~:エンディング

エンディング

エンディング

刀匠の思い、魂の込められた日本刀。

ここに、命が宿る。

日本刀を作る技術は、世界の中で、ここ日本にだけ存在する唯一無二の技術なのだ。

刀匠の魂がつなぐ、日本の伝統、ここにあり……。

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名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク) 名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)
名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)では、重要文化財などの貴重な日本刀をご覧いただくことができます。
キャラクターイラスト
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日本刀の作り方(作刀方法と鍛錬)

日本刀の作り方(作刀方法と鍛錬)
武器としての強靭さはもちろん、美術品としての美しさもかね備えているのが日本刀です。そんな日本刀は「水減し」「折り返し鍛錬」「焼き入れ」といった工程を経て完成します。鉄を鍛錬する技術が平安時代にユーラシア大陸から伝わって以来、日本刀の作刀技術は長い歴史の中で磨かれ、発展してきました。現代に伝わる日本刀の作り方について、その一例を詳しくご紹介しましょう。 日本刀の作り方(作刀方法と鍛錬)関連YouTube動画 日本刀 日本刀の作り方~刀匠編~

日本刀の作り方(作刀方法と鍛錬)

刀鍛冶の道具

刀鍛冶の道具
日本刀の鍛錬(たんれん)と、その制作にかかわる全工程において、刀鍛冶が用いる鍛冶道具は30点近くあります。例えば、「火床」(ほど)、「切り鏨」(きりたがね)、「捩り取り」(ねじりとり)など、刀鍛冶の道具は名前を読むのが難しい物ばかり。 現代では市販されている道具もありますが、刀鍛冶が使いやすいように手を加えたりすることや、はじめから刀鍛冶自ら作ったりすることもあります。いずれも刀鍛冶の長年の経験に基づいた創意工夫がなされている鍛冶道具です。ここでは、刀鍛冶の鍛冶道具それぞれの用途や材質についてご説明します。

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たたら製鉄の歴史と仕組み

たたら製鉄の歴史と仕組み
「日本刀」の材料として使われる「玉鋼」(たまはがね)は、「たたら製鉄」法によって生産される鋼。砂鉄を原料、木炭を燃料として粘土製の炉を用いて比較的低温度で還元することによって、純度の高い鉄が精製されるのです。日本においては、西洋から大規模な製鉄技術が伝わった近代初期にまで、国内における鉄生産のすべてがこの方法で行なわれていました。ここでは、日本刀作りに欠かすことのできない、たたら製鉄についてご紹介します。

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刀鍛冶になるには

刀鍛冶になるには
現在、日本刀を作刀するためには、「都道府県公安委員会」に登録して許可を受けることが必要です。そのためには先輩刀匠に弟子入りし、日本刀制作の技術はもちろん、日本の歴史、文化などを深く学ぶことが求められます。修行期間は最短で5年。日本を代表する美術工芸品である日本刀の作刀を許された刀鍛冶は、鉄(玉鋼:たまはがね)を鍛える技術と科学知識を有するのみでなく、歴史・文化への造詣も深い、現代における「日本文化のプロフェッショナル」と言うべき特別な存在なのです。ここでは、刀鍛冶という「職業」に着目し、そこに至る道のりをご紹介します。

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沸し(わかし)

沸し(わかし)
「折れず・曲がらず・よく切れる」。日本刀に興味がある人なら誰もが1度は耳にしたことがある、日本刀の優れた強靭性を表す言葉です。日本刀制作には、いくつもの工程がありますが、そのような刀を完成させるために、「玉鋼」(たまはがね)を叩いて鍛える「鍛錬」(たんれん)という工程が欠かせないことはよく知られています。しかし、完成した刀が良質な物になるかどうかは、実は鍛錬の直前に行なわれる、「沸し」(わかし:「積み沸し」とも)と呼ばれる工程のできによって左右されるのです。ここでは、そんな沸しの工程について順を追ってご紹介しながら、沸しが日本刀制作において重要な役割を果たす理由について探っていきます。

沸し(わかし)

玉鋼の特徴

玉鋼の特徴
日本刀の原料として広く知られる「玉鋼」(たまはがね)。世界で最も純粋な鋼とも言われていますが、その製法は限定的であり、玉鋼を使用して作り出される製品もまた限られています。そこで、玉鋼がなぜ刀の原料として最適と言われているのか、またその名前の由来や、他の鉄と比べて良質であると評される理由についてご紹介します。

玉鋼の特徴

時代別の火造りの方法

時代別の火造りの方法
日本刀制作において「火」は欠かせない要素のひとつ。バラバラになっている「玉鋼」(たまはがね)に熱を入れ、鍛接してひとつにする「積み沸し」(つみわかし)や、玉鋼を叩き伸ばして不純物を取り除き、含まれる炭素量を均一化して刀身の強度を増加させる「鍛錬」(たんれん)など、火が使われる工程はいくつもあります。その際に、火の温度や火力を正しく見極め、いかに自在に操れるかが刀匠の腕の見せどころ。 そんな火という言葉が入った「火造り」(ひづくり)という工程は、日本刀制作の中でも刀身の姿を決定付ける最も重要なもの。 ここでは、時代によって異なる火造りの詳細についてご紹介しながら、火造りの全貌についてご説明します。 日本刀の作り方~刀匠編~ YouTube動画

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焼刃土

焼刃土
「焼刃土」(やきばつち)とは、刀身に「焼き入れ」(やきいれ)を行なう際に、刀身に塗る特別に配合された土のこと。日本刀制作においては、大まかに「たたら製鉄」によって、材料となる「玉鋼」(たまはがね)を精製することに始まり、刀匠による鍛錬や「火造り」(ひづくり:日本刀の形に打ち出すこと)などを経て、焼き入れが行なわれます。焼き入れによって刀身を構成する鋼が変態して硬化すると共に「刃文」などが出現することで、日本刀の美術的価値にも直結。焼刃土が登場するのは、言わば、日本刀に命を吹き込む総仕上げの場面なのです。 日本刀の作り方~刀匠編~ YouTube動画

焼刃土

棟焼(むねやき)とは

棟焼(むねやき)とは
日本刀制作における「焼き入れ」は、刀身の強さや刃の切れ味を左右する最重要工程のひとつです。その際、「焼刃土」(やきばつち)を刀身に塗る「土置き」(つちおき)が行なわれます。刃側には薄く焼刃土を塗ることで、刀身を熱したあとに水で冷やした際の冷却速度を上げ、刃部分を硬くして切れ味の良い刃にすると共に、刃文を作出するのです(=焼きが入る)。他方、棟側には厚く焼刃土を塗ることで、冷却速度を緩やかにして刀身の靭性(じんせい:粘り強さ)を高め、刀身を折れにくくします(=焼きが入らない)。このように、棟側には焼きを入れない(入らない)のが通常ですが、例外的に棟に焼きを入れた(入った)作も。ここでは棟に焼きを入れる(入る)「棟焼」(むねやき)についてご説明します。

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