1980年代後半から1990年代初頭の刀剣ゲーム

アニメ化する家庭用ゲームと刀剣
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アニメ化する家庭用ゲームと刀剣 アニメ化する家庭用ゲームと刀剣
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PCエンジンソフト【天外魔境II 卍MARU】より
PCエンジンソフト
【天外魔境II 卍MARU】より

ロールプレイングゲーム【天外魔境II 卍MARU】(1992年〔ハドソン〕〔レッドカンパニー〕開発・〔ハドソン〕発売)。世界初CD-ROM搭載の家庭用ゲーム機最初のヒット作で、声優陣参加によるアニメーション映画のような演出がなされた【天外魔境 ZIRIA】(1989年)シリーズの第2弾。七本の聖剣探しが物語の重要な要素となっている。

(■七本の聖剣を探す天外魔鏡シリーズ)

CD-ROMが世界で初めて搭載された家庭用ゲーム機では、生の声が収録され、アニメーション映画のようなゲーム作りが始まります。歴史シミュレーションゲームでも同様に、アニメ映画的な演出が導入されます。家庭用ゲーム機のハードの高性能化は機器の高額化を生み、そのゲーム内容は子ども向けからやがて大人向けが意識されます。

パソコンメーカーによる家庭用ゲーム機登場

通称ファミコンと呼ばれる家庭用テレビゲーム機「ファミリーコンピュータ」(1983年〔任天堂〕)の爆発的な普及は、パソコンメーカーが家庭用ゲーム機の開発に取り組むきっかけとなりました。

「PCエンジン」(1987年〔ハドソン〕開発・〔NECホームエレクトロニクス〕開発・販売)の発売です。ファミコン同様に8ビットCPU(中央処理装置)であるものの10,000円分高額だった同機は(24,800円)、グラフィック機能の充実(ファミコン最大52色に対して最大512色)と、シューティング(射撃)ゲームを中心とした人気の業務用ゲーム(アーケードゲーム)の移植版の充実が特徴でした。

「PCエンジン」本体外箱

「PCエンジン」本体外箱

同機初の刀剣ゲームは人気おまけシールに基づく

PCエンジン発売年のソフトは5タイトルです。

初年の刀剣にまつわるゲームは、菓子メーカー(ロッテ)のおまけシール「ビックリマン」に基づく漫画とテレビアニメとのメディアミックス作【ビックリマンワールド】(1987年〔ウエストン〕〔ハドソン〕開発・〔ハドソン〕発売)でした。

おまけシールの「悪魔VS天使」シリーズに基づく、この横スクロールのアクションRPGでは、プレイヤーは人気キャラクターで剣を駆使するヘッドロココを操作し、悪魔退治を行います。

同ゲームでは、ロールプレイング的要素もあるアクション(動作)ゲームの方法が採られます。ロールプレイングゲーム(RPG)では、物語性が重視された世界観のなかで経験値を上げて成長していく登場人物を操作します。著名な漫画家がキャラクターデザインを手がけたファミコン初のオリジナルRPG【ドラゴンクエスト】(1986年〔エニックス〕)の大ヒットによって広く普及しました。

おまけシールのゲーム化にあたっては、無関係のアーケードゲーム【ワンダーボーイ モンスターランド】(1987年〔ウエストン〕開発・〔セガ〕発売)のキャラクターを、おまけシールのキャラクターにそのまま差し替える方法が採られました。

ステージをクリアするごとに剣を入手するアーケードゲームの仕様も踏襲されます(グラディウス、ブロードソード、グレートソード、エクスカリバー、伝説の剣)。けれども、ビックリマンワールドでは最後に入手する剣を「伝説の尖聖剣」(でんせつのせんせいけん)と表記し、おまけシールにおけるヘッドロココの愛剣が表現されました。

  • PCエンジンソフト【ビックリマンワールド】

    PCエンジンソフト
    【ビックリマンワールド】

  • PCエンジンソフト【ビックリマンワールド】「伝説の尖聖剣獲得画面」

    PCエンジンソフト
    【ビックリマンワールド】
    「伝説の尖聖剣獲得画面」

アニメ・漫画・食玩とのメディアミックスの刀剣ゲーム

ビックリマンワールド発売の翌年、ビックリマンにも影響を受けたアニメと漫画とのメディアミックス作【魔神英雄伝ワタル】(1988年〔ハドソン〕〔レッドカンパニー〕開発・〔ハドソン〕販売)も発売されます。

この横スクロールのアクションゲームでは、プレイヤーは異世界で悪と戦う主人公・戦部ワタル(いくさべわたる)を操作します。戦部ワタルが乗り込むロボット・龍神丸の武器は剣です。

食玩シリーズに基づくメディアミックス作は、シネマテックRPGを謳った【ネクロスの要塞】(1990年〔ロッテ〕〔レッドカンパニー〕原著者・〔XOFDER〕開発・〔アスク講談社〕発売)も続きました。

この世の征服を企む黒魔術の帝王ネクロスを打ち倒すことを目指す8人の勇者の物語です。8人には刀剣を武器とする騎士ナイト、武士サムライなどが含まれます。ゲームのシナリオは、テーブルトークRPGの制作者の面々である冒険企画局・わきあかつぐみ・かつらつかさが手がけています。

  • PCエンジンソフト【魔神英雄伝ワタル】

    PCエンジンソフト
    【魔神英雄伝ワタル】

  • PCエンジンソフト【ネクロスの要塞】 

    PCエンジンソフト
    【ネクロスの要塞】 

戦国武将を題材にした麻雀ゲーム登場

PCエンジン発売の翌年、ソフトは22タイトル発売されます。

そのうち刀剣にまつわるゲームには、PCエンジン初の本格RPG【邪聖剣ネクロマンサー】(1988年〔ハドソン〕)と、横スクロールのアクションゲーム【魔境伝説】(1988年〔エイコム〕〔ハドソン〕開発・〔ビクター音楽産業〕発売)があります。

前者ではプレイヤーは勇者となって2人の仲間を連れ、勇者の住む王国を不安に陥れた魔空王を倒すため、邪聖剣ネクロマンサー探しに出かけます。後者ではプレイヤーは、邪神教によって生贄として連れ去られた幼馴染の少女を救うため、伝説の斧を手に立ち向かいます。

邪聖剣ネクロマンサーは、シナリオを三条陸(月刊アニメ雑誌【月刊OUT】ライター出身。OVA【装鬼兵M.D.ガイスト】脚本。少年漫画【DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】原作)が担当しました。アメリカの幻想小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創作した架空の神話・クトゥルー神話を導入しています。

  • PCエンジンソフト【邪聖剣ネクロマンサー】

    PCエンジンソフト
    【邪聖剣ネクロマンサー】

  • PCエンジンソフト【魔境伝説】 

    PCエンジンソフト【魔境伝説】

和風ゲームには、麻雀ゲーム【戦国麻雀】(1988年〔ハドソン〕)があります。

毛利輝元豊臣秀吉上杉謙信伊達政宗ねね織田信長淀君武田信玄、島津義久、一豊の妻徳川家康北条氏康の 12名が登場します。プレイヤーは上記から3名との対戦(ノーマルモード)と、上記の1人となって全員を打ち負かしていく対戦(合戦モード)と言う2種類のゲームを楽しめます。

  • PCエンジンソフト【戦国麻雀】

    PCエンジンソフト【戦国麻雀】

  • PCエンジンソフト【戦国麻雀】「戦国武将の紹介場面」

    PCエンジンソフト
    【戦国麻雀】
    「戦国武将の紹介場面」

増加する和風ゲーム:里見八犬伝と源平合戦

PCエンジン発売から3年、この年のソフトは75タイトルの発売となりました。

西洋を舞台にした刀剣にまつわるゲーム、アクションRPG【ニュートピア フレイの章】(1989年〔ハドソン〕)が発売されています。

ファミリーコンピュータディスクシステムのアクションアドベンチャー【ゼルダの伝説】(1986年〔任天堂〕)へのオマージュである同作では、プレイヤーは勇者となって、平和の国ニュートピアの姫をさらった悪魔の退治に出かけます。最強の剣・鎧・楯を集め、最後の敵(ラスボス)に挑みます。

PCエンジンソフト【ニュートピア フレイの章】

PCエンジンソフト
【ニュートピア フレイの章】

この年、同機オリジナルのゲームでは和風の割合も高まります。

横スクロールのアクションゲーム【改造町人シュビビンマン】(1989年〔日本コンピュータシステム〕〔ウインズ〕開発・〔メサイヤ/日本コンピュータシステム〕発売)、アクションRPG【魔界八犬伝 SHADA】(1989年〔ハドソン〕)、パソコンゲーム版の発展形のシューティング・アドベンチャー・アクション【神武伝承】(1989年〔ビッグクラブ〕)などが発売されます。

この時期、ファミコンソフトでもRPG【里見八犬伝】とRPG【新里見八犬伝 光と闇の戦い】が発売されています(共に1989年)。数年前、映画【里見八犬伝】(1983年)が公開時期に配給収入1位となっており、その人気が影響していました。

  • PCエンジン【改造町人シュビビンマン】ソフト

    PCエンジン
    【改造町人シュビビンマン】ソフト

  • PCエンジン【魔界八犬伝 SHADA】ソフト

    PCエンジン
    【魔界八犬伝 SHADA】ソフト

PCエンジン【神武伝承】ソフト

PCエンジン
【神武伝承】ソフト

そして、RPG【弁慶外伝】(1989年〔サンソフト〕)が発売されます。

プレイヤーは鬼若(きじゃく)を操作し、魔物退治、そして自身の出生の秘密を知るべく日本各地を旅します。3名の仲間(伊勢三郎・沙夜香・弁慶)を集め、源頼朝の打倒を目指します。脚本は中村一朗、ゲーム内のキャラクターデザインは漫画家・本宮ひろ志です。

弁慶外伝では刀剣が重要なアイテムとなっています。弁慶を仲間に加える際にはその封印を解くために黄金の刀が必要となり、源頼朝が張った結界を破るには七星の宝刀が必要でした。

  • PCエンジンソフト【弁慶外伝】

    PCエンジンソフト
    【弁慶外伝】

  • PCエンジンソフト【弁慶外伝】「黄金の刀によって弁慶の封印を解く場面」

    PCエンジンソフト
    【弁慶外伝】
    「黄金の刀によって弁慶の
    封印を解く場面」

同作の数年前、NHK総合テレビ【武蔵坊弁慶】(原作・富田常雄)が放送されていました(1986年)。その同じ年にはアーケードゲーム【源平討魔伝】(1986年〔ナムコ〕)も発表されており、プレイヤーは壇ノ浦の戦いで源氏に敗れた平景清(たいらのかげきよ)を操作し、源頼朝打倒を目指します。この時期、源平合戦への関心は高まっていました。

CD-ROMを採用した世界初のゲーム機に

PCエンジンは発売の翌年、新たな仕様が加わります。

それまでのHuCARD(ICカード型ROMカートリッジ)とは違う、CD-ROMを採用した周辺機器CD-ROM2(シーディーロムロム)の発売です(1988年)。世界初となるCD-ROMユニットとインターフェースユニットのゲーム機(計57,300円)は、大容量化やソフトの量産の短縮などを実現。特に音楽CD同様に生の音の収録ができ(CD-DA)、それまでの家庭用ゲーム機とは違う音質の良さが大きな特徴となりました。

CD-ROM2最初のソフトは、2D対戦型格闘ゲーム【ファイティング・ストリート】(1988年〔アルファ・システム〕開発・〔ハドソン〕発売)とアドベンチャーゲーム【NO・RI・KO】(1988年〔ハドソン〕)の2作です。

前者は人気アーケードゲーム【ストリートファイター】(1987年〔カプコン〕)の移植版。後者は当時人気のアイドル小川範子との1日デートが題材となり、世界で初めてCD-ROMに肉声が収録されました。

「CD-ROM2 SYSTEM」外箱

「CD-ROM2 SYSTEM」外箱

アニメーション処理場面すべての台詞に生声付きのRPG登場

CD-ROM2仕様の最初のヒット作は、CD-ROM2初のRPGとなった【天外魔境 ZIRIA】(1989年〔ハドソン〕〔レッドカンパニー〕開発・〔ハドソン〕発売)です。

総監督は広井王子。原作は、P.H. チャダ【FAR EAST OF EDEN】。脚本は、あだちひろし、美術監督は辻野寅次郎です。P.H. チャダとは架空の人物です。外国人から見た間違った日本のイメージを楽しむブームをふまえた遊びとなっています。この頃、アメリカでは忍者映画ブームをきっかけに日本文化に関する誤解が様々に生じていました。

音楽プロデュースと主題曲を含む3曲の楽曲を坂本龍一が手がけたことも話題となります。映画【ラストエンペラー】で坂本龍一が日本人初のアカデミー賞・作曲賞を受賞した翌年の出来事です。

  • PCエンジンソフト【天外魔境 ZIRIA】

    PCエンジンソフト
    【天外魔境 ZIRIA】

  • PCエンジンソフト【天外魔境 ZIRIA】「アニメーション処理パート」

    PCエンジンソフト
    【天外魔境 ZIRIA】
    「アニメーション処理パート」

プレイヤーは3人の火の一族の勇者を操作し、平和を乱す悪の組織に立ち向かいます。舞台は18世紀、東洋の島国ジパングの板東(関東)地方。主人公は江戸時代後期の読本【児雷也豪傑譚】(じらいやごうけつたん)に基づく自来也(じらいや:岩田光央)と仲間の綱手(つなで:渡辺菜生子)と大蛇丸(おろちまる:塩沢兼人)。そして敵は大門教十三人衆で、江戸のショーグン(銀河万丈)に取り入った彼らはかつて主人公の先祖が封印した鬼マサカド(野田圭一)の復活を目論みます。

当時、荒俣宏が首都・東京の転覆のため平将門の復活を目論む魔人との争いを描いた小説【帝都物語】が映画化(1988年)されていました。

天外魔境 ZIRIAの最大の特徴は、アニメーション処理パートの導入とその台詞に付けた声優の声です。声優には、大竹まこと(お笑い芸人)、永井真理子(歌手)、横山智左(ジャンプ放送局アシスタント)など特別出演を含む24名がクレジットされています。

刀剣要素は次のようなものです。

ゲーム内で主人公は、ボクデン(矢田耕司)、ジュウベイ(戸谷公次)、千葉シュウサク(森功至)といった剣豪から必殺技を教わります。それぞれ、塚原卜伝(つかはらぼくでん)、柳生十兵衛、千葉周作がモデルです。

そして、あおいの剣、トノ様の剣、夕なぎの剣、妖刀村正、白狼の剣、白虎の剣、神通の剣などが次々と登場します。武蔵国(東京都埼玉県神奈川県の一部)の富士見神社の白リュウから授かる神通の剣が、最後の敵(ラスボス)を倒すのに必要な剣となっています。

PCエンジンソフト【天外魔境 ZIRIA】「神通の剣獲得場面」

PCエンジンソフト
【天外魔境 ZIRIA】
「神通の剣獲得場面」

PCエンジン版歴史シミュレーションゲーム

CD-ROM2の普及には少し時間がかかります。

以前の仕様HuCARDで、PCエンジンオリジナルの戦略シミュレーションゲーム【関ヶ原】(1990年〔トンキンハウス/東京書籍〕)が発売されます。

シミュレーションゲームとは、戦争や経営などを題材に模擬実験を楽しむジャンルです。「歴史シミュレーションゲーム」と言う言葉は、【シミュレーションウォーゲーム 信長の野望】(1983年〔光栄マイコンシステム/光栄〕・PC-8001/PC-8801版他)の大ヒットがひとつの起点です。

関ヶ原では、関ヶ原の戦いが模されます。プレイヤーは石田三成となって西軍(15名)を操作し、東軍(15名)の大将・徳川家康の打倒を目指します。ゲームは西軍と東軍とが交互に進行されます。進行するマス目に仕込まれた士気を下げる、暗殺をしてくる忍者、さらには雨などに対処しながら、各ポイントで用意された1部隊同士による戦闘に勝利していきます。

  • PCエンジンソフト【関ヶ原】

    PCエンジンソフト【関ヶ原】

  • PCエンジンソフト【関ヶ原】「地図場面」

    PCエンジンソフト【関ヶ原】
    「地図場面」

CD-ROM2発売から3年後、歴史シミュレーションゲームが増加します。

CD-ROM2における最初の歴史シミュレーションゲームは、漫画とのメディアミックス作、戦略シミュレーションゲーム【三国志 英傑天下に臨む】(1991年〔ナグザット〕)でした。原作・原画・監修は漫画【三国志】を描いた横山光輝です。音楽は高橋幸宏が担当しています。

三国志 英傑天下に臨むでは、プレイヤーは劉備玄徳(りゅうびげんとく)や曹操孟徳(そうそうもうとく)など6人に君主から1人を選び、天下統一を目指します。

オープニングなどのアニメーション処理パートのナレ-ションを政宗一成、劉備・曹操・呂布などを松尾銀三、孔明・関羽・張飛などには若本規夫が声をあてました。

同作は【横山光輝 真・三国志】(1992年〔ナグザット〕)が続き、シリーズ化されました。

  • PCエンジンソフト【三国志 英傑天下に臨む】

    PCエンジンソフト
    【三国志 英傑天下に臨む】

  • PCエンジンソフト【三国志 英傑天下に臨む】「地図場面」

    PCエンジンソフト
    【三国志 英傑天下に臨む】
    「地図場面」

PCエンジンソフト【三国志 英傑天下に臨む】「アニメーション処理場面」

PCエンジンソフト
【三国志 英傑天下に臨む】
「アニメーション処理場面」

次に、戦国シミュレーションゲーム【戦国関東三国志】(1991年〔トーセ〕開発・〔インテック〕発売)が発売されます。

戦国関東三国志では、プレイヤーは武田信玄・上杉謙信・北条氏康のいずれか三国の長となって、関東(現在の茨城県栃木県群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)・甲信越(現在の山梨県長野県新潟県)・北陸(現在の富山県石川県福井県)の平定、そして織田信長との関ヶ原を舞台にした合戦で打破と言う2段階のクリアを目指します。

オープニングのアニメーション処理パートでは戦国武将の経歴が語られ、【歴史群像】シリーズ】(学習研究社)も制作協力しています。声優陣は、上杉謙信(内海賢二)、北条氏康(辻親八)、武田信玄(中田和宏)などです。

  • PCエンジンソフト【戦国関東三国志】

    PCエンジンソフト
    【戦国関東三国志】

  • PCエンジンソフト【戦国関東三国志】「プレイヤー選択場面」

    PCエンジンソフト
    【戦国関東三国志】
    「プレイヤー選択場面」

 PCエンジンソフト【戦国関東三国志】「アニメーション処理された織田信長」

 PCエンジンソフト
【戦国関東三国志】
「アニメーション処理された織田信長」

さらに、歴史シミュレーションゲーム+アドベンチャーゲーム【太平記】(1991年〔インテック〕)も発売されます。吉川英治原作のNHK大河ドラマ【太平記】が放送された年でもありました。

同ゲームの原作は吉川英治【私本太平記】。台本は水野征樹。原画は漫画家・横山まさみちです。プレイヤーは新田義貞(南朝)か足利尊氏(北朝)を選び、全国統一を目指します。

オープニングのアニメーション処理パートの声優陣は、足利尊氏(平拳兒)、新田義貞(辻親八)、後醍醐天皇(キートン山田)、楠木正成(中田和宏)などです。

  • PCエンジンソフト【太平記】

    PCエンジンソフト【太平記】

  • PCエンジンソフト【太平記】「プレイヤー選択場面」

    PCエンジンソフト
    【太平記】
    「プレイヤー選択場面」

PCエンジンソフト【太平記】「アニメーション処理された新田義貞と足利尊氏」

PCエンジンソフト
【太平記】
「アニメーション処理された
新田義貞と足利尊氏」

翌年には、リアルタイムシミュレーションゲーム【ライジングサン】(1992年〔ビクター音楽産業〕)も続きます。プレイヤーは源頼朝・源義経平清盛のいずれかを選び、三つの物語を楽しみます(マルチ・エンディング)。

オープニングとエンディングのアニメーション処理パートの声優陣は、源頼朝(屋良有作)、源義経(古谷徹)、静御前(鶴ひろみ)、平清盛(家弓家正)、弁慶(北川米彦)、 北条政子(武藤礼子)、後白河法皇(田中康郎)です。

  • PCエンジンソフト【ライジングサン】

    PCエンジンソフト
    【ライジングサン】

  • PCエンジンソフト【ライジングサン】「プレイヤー選択場面」

    PCエンジンソフト
    【ライジングサン】
    「プレイヤー選択場面」

七本の聖剣を探す天外魔鏡シリーズ

PCエンジンは、PCエンジンDuo(1991年9月21日〔NECホームエレクトロニクス〕販売)と、CD-ROM2の上位機種SUPER CD-ROM2(1991年12月13日〔NECホームエレクトロニクス〕販売)とその仕様は発展します。SUPER CD-ROM2も高額でした(47,800円)。

「SUPER CD-ROM2」外箱

「SUPER CD-ROM2」外箱

大人気作となった天外魔境はシリーズ化され、SUPER CD-ROM2仕様でさらに充実します。

第2弾は、声優陣24名と音楽監督に久石譲を迎えたRPG【天外魔境II 卍MARU】(1992年〔ハドソン〕〔レッドカンパニー〕開発・〔ハドソン〕発売)です。

原作はP.H. チャダ【FAR EAST OF EDEN】。企画・監修に広井王子。監督は桝田省治。演出は岩崎啓眞(いわさきひろまさ)。シナリオユニットは、脚本・構成を桝田省治、翻案はあだちひろしです。

  • PCエンジンソフト【天外魔境II 卍MARU】

    PCエンジンソフト
    【天外魔境II 卍MARU】

  • PCエンジンソフト【天外魔境II 卍MARU】「アニメーション処理された物語導入場面」

    PCエンジンソフト
    【天外魔境II 卍MARU】
    「アニメーション処理された
    物語導入場面」

プレイヤーはジパングに住む火の一族の末裔・戦国卍丸(せんごくまんじまる:伊倉一恵)となって、ジパング征服を企む出雲国にある根の国の王ヨミ(池田秀一)に挑みます。

戦国卍丸の仲間は、目立ちやがりのカブキ団十郎(山口勝平)と力持ちの極楽太郎(赤星昇一郎)、そして予知能力を持つヒロインの絹(井上あずみ)です。戦国卍丸らは、根の一族がジパング征服のために生み出した人の生気を吸い取る暗黒ラン(7本)を切るために、「七本の聖剣」探しに出かけます。

聖剣は根の一族が住む七つの城に隠されています。鬼骨城、密林城、幻夢城、砂神城、暗闇城、魔海城、白銀城にそれぞれあり、聖剣は獲得するたびにかつて根の一族を退治した火の一族の勇者がひとりずつ現れます。

PCエンジンソフト【天外魔境II 卍MARU】「聖剣獲得場面」

PCエンジンソフト
【天外魔境II 卍MARU】
「聖剣獲得場面」

そのあとも、天外魔境シリーズは続きます。

当時の人気女優・牧瀬里穂を含む声優陣31名と音楽に田中公平を迎えたRPG【天外魔境 風雲カブキ伝】(1993年〔ハドソン〕〔レッドカンパニー〕開発・〔ハドソン〕発売)。2D対戦型格闘ゲーム【カブキ一刀涼談】(1995年〔ハドソン〕〔レッドカンパニー〕開発・〔ハドソン〕発売)が制作されました。

  • PCエンジンソフト【天外魔境 風雲カブキ伝】

    PCエンジンソフト
    【天外魔境 風雲カブキ伝】

  • PCエンジンソフト【カブキ一刀涼談】

    PCエンジンソフト
    【カブキ一刀涼談】

総合評価を重んじる歴史シミュレーションゲームの登場

SUPER CD-ROM2仕様の歴史シミュレーションゲームも発売されます。

リアルタイム戦国シミュレーションゲーム【1552天下大乱】(1993年〔アスク講談社〕)です。

デザイン・演出に、ファミリーコンピュータ用シミュレーションゲーム【不如帰】(ほととぎす:1988年〔タムテックス〕開発・〔アイレム〕発売)で監督を務めた岡野修身(おかのおさみ)を迎えます。

PCエンジンソフト【1552天下大乱】

PCエンジンソフト
【1552天下大乱】

プレイヤーは戦国武将やその家臣となって軍令・編成・政治・計画の4つの行動指示(コマンド)を操作し、天下統一を目指します。

キャンペーンモードでは、3つのシナリオ:1552・1582年・1600年が用意され、それぞれお勧めの武将の名前が挙げられます。

下剋上時代の始まりとして北条氏康・武田晴信(武田信玄)・長尾景虎(上杉謙信)・織田信長、本能寺の変の混乱時期として羽柴秀吉(豊臣秀吉)・明智光秀柴田勝家・徳川家康、そして関ヶ原の戦いの時期として徳川家康・石田三成・豊臣秀頼小早川秀秋となっています。

また、グラフィックによるアイコンはすべて武将の顔ではなく、城で表現されました。

岡野修身が不如帰で初めて試みた、戦国武将の能力値を伏せる仕様(マスクデータ)をふまえたうえで、武将の評価は数値ではなく、闘(闘志)・理(理論)・知(知力)・信(信用)・察(洞察)が色の濃淡で示されます。不如帰で初めて試みた官位も表記されました。

リアルタイム性にも重きが置かれます。随時、内外の情報が示され、状況が刻々と変化するなかでプレイヤーは選択を迫られます。

PCエンジンソフト【1552天下大乱】「基本画面」

PCエンジンソフト【1552天下大乱】「基本画面」

1552天下大乱の最大の特徴は、ゲーム終了後に出る総合評価(領地評価・威信評価・内政評価)です。地図を塗り替える天下統一だけが目的ではなく、ゲームの質が重んじられました。

そのため、戦国武将の名前は、プレイヤー自身の名前の代入も可能でした。

PCエンジンソフト【1552天下大乱】「総合評価」

PCエンジンソフト【1552天下大乱】「総合評価」

同作でも声優パートがもうけられます。

メインゲームとは別の「高円寺博士の歴史講座」です。「応仁の乱」、「御恩と奉公と負け戦さ」、「下剋上と軍師」、「奇襲と研究」、「鉄砲と兵農分離」、「ハカセの質問コーナー」、「雪と都と町と金」、「茶器と官位と大義名分」、「クイズ」、「最後の挨拶」の計10本(各2分程度)でした。

高円寺博士に千葉繁(【うる星やつら】メガネなど)、助手のさくら子ちゃんにアイドル出身の日高のり子(【タッチ】浅倉南、【らんま1/2】天道あかねなど)が起用されました。

PCエンジンソフト【1552天下大乱】「高円寺博士の歴史講座の場面」

PCエンジンソフト
【1552天下大乱】
「高円寺博士の歴史講座の場面」

青年向けへ

PCエンジンオリジナルの和風RPGや歴史シミュレーションゲームが多数制作されるのと並行して、声優を活かした同機オリジナルの西洋RPGも制作されていました。

ドラゴン育成RPG【聖竜伝説モンビット】(1991年〔ハドソン〕)では、ミスCD-ROM コンテスト優勝者のアイドル、井上麻美が声優として参加しています。

同作はまた、シナリオメッセージに榎本一夫(ジャンプ放送局レイアウト担当)、スペシャルサンクスにさくまあきら(ジャンプ放送局局長。【桃太郎伝説】)と桝田省治(【天外魔境 ZIRIA】)がクレジットされ、少年漫画雑誌とつながりの深いゲームでした。

ケルト神話をモチーフに結婚を間近に控えた男女の恋愛が軸となったファンタジーRPG【天使の詩】(1991年〔日本テレネット〕)は、キャラクター&モンスターデザインを富士宏(ナムコ出身。【ワルキューレの冒険時の鍵の伝説】など)が手がけました。

主演の男女キャラクターは、井上和彦(【サイボーグ009】島村ジョー、【蒼き流星SPTレイズナー】アルバトロ・ナル・エイジ・アスカなど)と江森浩子(【蒼き流星SPTレイズナー】アンナ・ステファニーなど)が務めました。

  • PCエンジンソフト【聖竜伝説モンビット】

    PCエンジンソフト
    【聖竜伝説モンビット】

  • PCエンジンソフト【天使の詩】り

    PCエンジンソフト【天使の詩】

それらの翌年に発売された、ネオ・メタル・ファンタジーと謳ったRPG【ファージアスの邪皇帝】(1992年〔ヒューマン〕)は、ゲーム雑誌【マル勝PCエンジン】内の読者参加企画と連動作です。プレイヤーは、破壊神復活を目論むファージアスの邪皇帝に挑みます。

男女主役のキャラクターには、速水奨(【超時空要塞マクロス】マクシミリアン・ジーナスなど)と本多知恵子(【機動戦士ガンダムΖΖ】エルピー・プルなど)が声をあてました。

プレイヤーが戦士となって少女を助けるシナリオシミュレーションゲーム【機装ルーガ】(1993年〔工画堂スタジオ〕)では、声優に三木眞一郎と井上喜久子(【らんま1/2】天道かすみなど)による主演コンビの他、高山みなみ(【魔女の宅急便】キキ/ウルスラ、【らんま1/2】天道なびきなど)、アイドルグループ出身の椎名へきるなども参加しています。

  • PCエンジンソフト【ファージアスの邪皇帝】

    PCエンジンソフト
    【ファージアスの邪皇帝】

  • PCエンジンソフト【機装ルーガ】

    PCエンジンソフト【機装ルーガ】

タイトル数ピーク1992年以後

PCエンジンのソフトは、新しいゲーム雑誌が次々と創刊された時期をピークに(1992年創刊:【マル勝スーパーファミコン】、【電撃PCエンジン】、1993年創刊:【電撃メガドライブ】)、そのタイトル数は減少を辿ります。

ピークの年には、パソコン版アダルトゲーム【ドラゴンナイト】(1989年〔エルフ〕)が【ドラゴンナイトⅡ】(1992年〔NECアベニュー〕)のタイトルで移植されています。1992年は、パソコンのソフトウェアの業界団体による18禁のシールが作成された年でもあり、PCエンジンにおける青年向けの傾向はタイトル数の減少と反比例するように相対的に増加します。

RPGを装ったアダルト麻雀ゲーム【聖戦士伝承-雀卓の騎士-】(1994年〔ニチブツ/日本物産〕)も1作です。その業務用ゲーム(アーケードゲーム)にて「脱衣麻雀」のジャンルを生み出したメーカーから発売されました。

声優陣は、中原茂(【聖戦士ダンバイン】ショウ・ザマなど)、田中秀幸(【キン肉マン】テリーマンなど)など。キャラクターデザインには湖川友謙(【伝説巨神イデオン】、【聖戦士ダンバイン】など)が迎えられました。

そして、【ときめきメモリアル】(1994年〔コナミ〕)がPCエンジン後期の人気タイトルとなりました。のちに恋愛シミュレーションゲームと呼ばれることになるパソコンゲームの人気ジャンルだった美少女ゲームの影響から制作されています。

  • PCエンジンソフト【聖戦士伝承-雀卓の騎士-】

    PCエンジンソフト
    【聖戦士伝承-雀卓の騎士-】

  • PCエンジンソフト【聖戦士伝承-雀卓の騎士-】「アニメーション処理された冒頭場面」

    PCエンジンソフト
    【聖戦士伝承-雀卓の騎士-】
    「アニメーション処理された冒頭場面」

世界初となるCD-ROMが採用されたパソコンメーカーによる家庭用ゲーム機PCエンジン。その特性を活かし、声優を起用したアニメーション映画のようなゲームが多数生み出されました。刀剣にまつわるゲームも同様にアニメ映画的な演出が導入されました。そのハードの高性能化は機器の高額化と共に、その内容は子どもよりも大人向けへと変化しました。

著者名:三宅顕人

アニメ化する家庭用ゲームと刀剣
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名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク) 名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)
名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)では、重要文化財などの貴重な日本刀をご覧いただくことができます。
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