1990年代の刀剣ゲーム

進化する家庭用RPGと刀剣
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進化する家庭用RPGと刀剣 進化する家庭用RPGと刀剣
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スーパーファミコンソフト【クロノ・トリガー】より
スーパーファミコンソフト
【クロノ・トリガー】より

ロールプレイングゲーム(RPG)【クロノ・トリガー】(1995年〔スクウェアソフト/スクウェア〕)。ファイナルファンタジーシリーズの制作陣にドラゴンクエストシリーズの制作陣が参加したドリームプロジェクト。主人公の少年クロノは剣術の達人で日本刀を主要な武器とする。

(■アクティブタイムバトルシステムの登場と刀剣)

家庭用ゲーム機におけるCPU(中央処理装置)の演算処理能力は13年かけて8ビット、16ビット、32ビット、64ビットと向上します。それに伴って複雑なゲーム表現が可能になり、ロールプレイングゲーム(RPG)においては、より細やかな仕様が開発されます。アクション(動作)ゲームでは3Dを活かした視点が開発されるなど、技術進歩に伴って刀剣の存在もリアルさが増します。

ファミコンソフト数ピークと刀剣

8ビット家庭用ゲーム機、ファミリーコンピュータ(通称ファミコン)〔任天堂〕は誕生から6年後、そのソフト数はピークを迎えました(1990年)。

その年発売されたアクションゲームでは、定番の人気ジャンルである忍者物や、数年前から流行していた西洋人が想像する不可思議な日本イメージを描いたゲーム内容が量産されました(【仮面忍者花丸】、【影狼伝説】、【魔天童子】、【闇の仕事人 KAGE】、【忍者クルセイダーズ 龍牙】、【暴れん坊天狗】など)。

  • ファミリーコンピュータソフト【闇の仕事人 KAGE】

    ファミリーコンピュータソフト
    【闇の仕事人 KAGE】

  • ファミリーコンピュータソフト【忍者クルセイダーズ 龍牙】

    ファミリーコンピュータソフト
    【忍者クルセイダーズ 龍牙】

ロールプレイングゲーム(RPG)ではこの時期も、ドラゴンクエスト(通称ドラクエ)によって人気の題材となった中世西洋の世界観に基づく竜退治やモンスター物が引き続き多数制作されます(【サンサーラ・ナーガ】、【ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣】、【メタルマックス】、【百の世界の物語】、【カオスワールド】など)。

そのなかには、新しい取り組みも始まります。

オリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)【機動警察パトレイバー】とアニメ映画【攻殻機動隊】の制作陣による竜を育成すると言う着想の独自作や、家庭用ゲーム機におけるシミュレーションゲーム+ロールプレイングゲームの人気シリーズが初登場しています。

  • ファミリーコンピュータソフト【サンサーラ・ナーガ】

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    【サンサーラ・ナーガ】

  • ファミリーコンピュータソフト【ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣】

    ファミリーコンピュータソフト
    【ファイアーエムブレム
    暗黒竜と光の剣】

和風のRPGでは忍者物の他、宮本武蔵や柳生十兵衛の剣豪が登場しています(【忍者らホイ! 痛快うんがちょこ忍法伝!!】、【ムサシの冒険】、【じゅうべえくえすと】など)。

  • ファミリーコンピュータソフト【ムサシの冒険】

    ファミリーコンピュータソフト
    【ムサシの冒険】

  • ファミリーコンピュータソフト【じゅうべえくえすと】

    ファミリーコンピュータソフト
    【じゅうべえくえすと】

アドベンチャーゲーム(ADV)では、人気のテレビ時代劇が題材となっています(【必殺仕事人】)。

ファミリーコンピュータソフト
【必殺仕事人】

シミュレーションゲーム(SLG)ではこの時期、ファミコンに参入したロボットアニメを中心としたアニメ制作会社が戦国武将物を発売します。また、史実に基づく「歴史シミュレーションゲーム」の言葉を生み出した開発会社は、「イマジネーションゲーム」と称した剣と魔法の世界に基づくシリーズを開始しています(【SD戦国武将列伝 烈火のごとく天下を盗れ!】、【ロイヤルブラッド】)。

  • ファミリーコンピュータソフト【SD戦国武将列伝 烈火のごとく天下を盗れ!!】

    ファミリーコンピュータソフト
    【SD戦国武将列伝
    烈火のごとく天下を盗れ!】

  • ファミリーコンピュータソフト【ロイヤルブラッド】

    ファミリーコンピュータソフト
    【ロイヤルブラッド】

16ビット家庭用ゲーム機の初期はアクションゲームが中心

ファミコンのソフト数がピークを迎える2年前、その次世代機の試作品が披露されていました(1988年)。ここに16ビット家庭用ゲーム機の時代が幕を開けることになります。

けれどもファミコンの次世代機は開発が遅れ、他社に2年先を越されたのち(メガドライブ)、発売されます。それがスーパーファミコンです(1990年11月21日発売。価格9,800円)。通称スーファミではCPU(中央処理装置)の演算能力は16ビットへと向上し、ゲームの表現機能が高まりました。

「スーパーファミコン」外箱

「スーパーファミコン」外箱

スーファミ発売年のソフトは全9タイトルです。人気の業務用ゲーム(アーケードゲーム)の移植作やパソコンゲームの移植作が多く、アクション(動作)ゲームが中心でした。

そのうちの1本で、同機専用となった横スクロールのアクションゲーム【アクトレイザー】 (1990年〔クインテット〕開発・〔エニックス〕発売)では、プレイヤーは石像型の神を操作します。剣を武器に魔王サタンの打倒と、サタンが支配する地上の人間を救出することを目指します。

アクション要素の間には、人間が暮らす町の発展に取り組むモードが用意され、同作はシミュレーション(模擬実験)ゲームの側面もありました。

スーパーファミコンソフト【アクトレイザー】

スーパーファミコンソフト
【アクトレイザー】

以後、スーファミでは刀剣が登場するアクションゲームは、様々なものが制作されました(【豪槍神雷伝説「武者」】、【負けるな!魔剣道】、【アルカエスト】など)。忍者物も制作されています(【少年忍者サスケ】、【おとぼけ忍者コロシアム】)。

海外発のパソコンゲームの移植作品も多かったスーファミでは、イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)発のパソコンゲームでマルチスクロールアクションゲーム【ファーストサムライ】(1991年)も発売されています(1993年〔Vivid Image〕開発・〔ケムコ〕国内発売)。

プレイヤーは、破霊の剣を武器とするファーストサムライを操作し、妖術使いの協力を得ながら、師の敵討ちとなる悪霊の王・魔狂神の打倒を目指します。

スーパーファミコンソフト【ファーストサムライ】

シミュレーションロールプレイングゲームの発展と刀剣

ファミコンのソフト数のピーク(1990年)前後、パソコンゲームでは人気ジャンルとなっていたシミュレーションロールプレイングゲーム(SRPG)がスーファミに登場します。

戦術を駆使した模擬実験(シミュレーション)と、物語性が重視された世界観のなかで経験値を上げて成長していく登場人物が仲間と共に旅をする(ロールプレイング)と言う2つのゲームジャンルの組み合わせです。

同ジャンルの火付け役は、【ファイアーエムブレム 紋章の謎】(1994年〔インテリジェントシステムズ〕開発・〔任天堂〕販売)です。同ゲームを原作にOVA化もされました(1996年)。

同作には、シリーズ第1弾であるファミコンのSRPG【ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣】(1990年〔インテリジェントシステムズ〕開発・〔任天堂〕販売)のリメイクを第1部として収録しています。王である父を竜人族に殺された王子が軍(ユニット)を率い、神剣を手に入れ、竜退治を行う物語です。シリーズのデザイナー・シナリオは加賀昭三です。

開発会社は同シリーズ以前に、ファミコンのウォー・シミュレーションゲーム【ファミコンウォーズ】(1988年〔インテリジェントシステムズ〕開発・〔任天堂〕販売)を制作していた実績がありました。

  • スーパーファミコンソフト【ファイアーエムブレム 紋章の謎】

    スーパーファミコンソフト
    【ファイアーエムブレム 紋章の謎】

  • スーパーファミコンソフト【ファイアーエムブレム 紋章の謎】「第2部 SRPG場面」

    スーパーファミコンソフト
    【ファイアーエムブレム 紋章の謎】
    「第2部 SRPG場面」

この時期、スーファミSRPG【第3次スーパーロボット大戦】(1993年〔ウィンキーソフト〕開発・〔バンプレスト〕発売)も登場しています。

テレビアニメの人気ロボット同士の共闘を初めて可能にしたゲームボーイSRPG【スーパーロボット大戦】(1991年〔ウィンキーソフト〕開発・〔バンプレスト〕発売)と、ファミコンSRPG【第2次スーパーロボット大戦】(1991年〔ウィンキーソフト〕開発・〔バンプレスト〕発売)に続くシリーズ作でした。

  • スーパーファミコンソフト【第3次スーパーロボット大戦】

    スーパーファミコンソフト
    【第3次スーパーロボット大戦】

  • スーパーファミコンソフト【第1話 SRPG場面】

    スーパーファミコンソフト
    【第1話 SRPG場面】

スーファミでは和風SRPGも登場します。SRPG【平安風雲伝】(1995年〔ナツメ〕開発・〔ケイエスエス〕発売)です。

プレイヤーは、平安時代を生きる剣客の少年・神楽(天皇の隠し子。双子として産まれたことで忌み嫌われ、陰陽師・安倍晴明の手配によって熊野で生き延びる)を操作し、仲間(最大15名。同時使用は8名)と共に京の都を守ります。

討伐の依頼主は、一条天皇の義父・藤原道長。敵は呪いを生業にする一族・山童(やまわら)です。朝廷を恨む彼らは安倍晴明の弟子・道摩法師を頼り、朝廷に逆らって討伐された藤原純友・平将門の復活を目論みます。企画・脚本・作画監督は森本幸雄です。

式神使いの主人公の仲間の種類には武士、僧兵、密教僧、修験道師があり、武士では藤原道長の側近・源頼光や彼に仕えた四天王(渡辺綱・坂田公時・碓井貞光・卜部季武)、そして藤原道長に仕えた藤原保昌と源頼信などが登場します。

  • スーパーファミコンソフト【平安風雲伝】

    スーパーファミコンソフト
    【平安風雲伝】

  • スーパーファミコンソフト【平安風雲伝】「SRPG場面」

    スーパーファミコンソフト
    【平安風雲伝】「SRPG場面」

リアルタイムシミュレーションロールプレイングゲームの発展と刀剣

パソコンゲームで発展していたジャンル、リアルタイムシミュレーションロールプレイングゲーム(リアルタイムSRPG)もスーファミで発展します。

多くのシミュレーションゲームでは物語都合から、プレイヤーによる行動指示の順番は決められています(ターン制)。じっくりと次の行動指示を考えられるターン制に対し、リアルタイムとは指示の順番を待つことなく、随時臨機応変に行動指示を行う、より現実の時間に近い仕様です。

ファミコンにおけるリアルタイムSRPGの先駆けであり、また召喚機能(プレイヤーの都合で強力なキャラクターを呼び出すこと)を初めて導入したとされる【半熟英雄】(はんじゅくヒーロー:1988年〔スクウェア〕)は、スーファミで【半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!】(1992年〔スクウェアソフト/スクウェア〕)となりました。

プレイヤーは王子となって将軍(最大32人)や召喚するエッグモンスターを差配し、敵の城を落とすことを目指します。全12人いる敵の1人は、織田信長がモデルのノブナーガです。

自分で敵の城を攻める方策を思案中も、味方の将軍は動き、敵はこちらの城を攻め、またフィールド上で敵と遭遇することもあると言うリアルタイム性が視覚化されています。

ディレクターは青木和彦、シナリオ・ディレクターは時田貴司、音楽はすぎやまこういちです。

  • スーパーファミコン【半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!】

    スーパーファミコン
    【半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!】

  • スーパーファミコン【半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!】「第8話 ノブナーガ登場場面」

    スーパーファミコン
    【半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!】「第8話 ノブナーガ登場場面」

その翌年、リアルタイムSRPG【伝説のオウガバトル】(1993年〔クエスト〕〔インフィニティー〕開発・〔クエスト〕発売)が発売されます。

プレイヤーは、解放軍の騎士(男女選択可能)となって様々な種族で構成するユニットと呼ぶ部隊(最大5人)を指揮。魔法使いによって恐怖政治が敷かれた帝国の各都市の城を落とし、民衆の解放を目指します(全29話)。同作でもプレイヤーは主人公の行動指示を思案中に、味方も動かし、敵も随時動き続けています。

さらに「カリスマ(英雄的資質)」と「アライメント(心の善悪率)」、そして「カオスフレーム(民衆からの支持率)」のパラメータ(変数)が用意されました。キャラクターの行動に反映された心の善と悪の割合と、民衆からの支持率との関係性によって(例えば制圧後の都市に善の心の低いユニットを配置するなど)、物語の結末が変わる仕様でもありました(バットエンディングとグットエンディング)。

仲間のキャラクターは、サムライやニンジャを含む戦士・騎士系、魔法使い系、僧侶系、魔獣使い・魔獣系に分かれます。通常攻撃は2回に対し、戦士・騎士系は3回できる特徴を持っています。

企画・ディレクターは松野泰己です。同作はシリーズ化される人気作となりました。

  • スーパーファミコンソフト【伝説のオウガバトル】

    スーパーファミコンソフト
    【伝説のオウガバトル】

  • スーパーファミコンソフト【伝説のオウガバトル】「第23話 ニンジャ登場場面」

    スーパーファミコンソフト
    【伝説のオウガバトル】
    「第23話 ニンジャ登場場面」

アクティブタイムバトルシステムの登場と刀剣

スーファミで初めて登場した仕様もあります。

主人公と仲間による冒験物語が展開される人気RPGファイナルファンタジーシリーズでは、ファミコン版以来、新しい仕様を導入していました(キャラクターの初期設定ではなくゲーム内の行動によって能力タイプが変化、キャラクタークラスを途中で変更可能など)。

シリーズ初のスーファミ版であり、暗黒剣を主要な武器とする暗黒騎士を主人公として操作するRPG【ファイナルファンタジーIV】(1991年〔スクウェア〕)では、戦闘場面に初めてリアルタイム制を導入します。アクティブタイムバトルシステム(ATB)です(当時特許を取得)。

コマンド(行動指示)方式による戦闘場面では、キャラクターの性質ごとに待ち時間が設定されました(同作では表示されない内部数値。以後のシリーズではゲージ化へ)。そのため、攻撃は順番(ターン制)ではなく、味方も敵も入り乱れて素早さを有するキャラクターの性質に合わせてリアルタイムになされます。

ディレクターは坂口博信、デザイナー・シナリオは時田貴司、キャラクターデザインは天野喜孝です。

  • スーパーファミコンソフト【ファイナルファンタジーIV】

    スーパーファミコンソフト
    【ファイナルファンタジーIV】

  • スーパーファミコンソフト【ファイナルファンタジーIV】「ゴルベーザと主人公達との戦闘場面」

    スーパーファミコンソフト
    【ファイナルファンタジーIV】
    「ゴルベーザと主人公達との
    戦闘場面」

RPG【ライブ・ア・ライブ】(1994年〔スクウェアソフト/スクウェア〕)でも独自の仕様が導入されました。

チェッカーバトルと呼ぶ戦闘場面は、ターン制ではあるものの、行動ポイント(同作では表示されない内部数値)によって味方が攻撃を終えていなくても敵に攻撃が移ります。

7人の主人公、7つの時代が描かれる同作の幕末編では、天草四郎、宮本武蔵、坂本龍馬が登場します。ディレクター・シナリオは時田貴司です。キャラクターデザインは7名の人気漫画家です(小林よしのり・青山剛昌・藤原芳秀・石渡治・皆川亮二・島本和彦 田村由美)。

  • スーパーファミコンソフト【ライブ・ア・ライブ】

    スーパーファミコンソフト
    【ライブ・ア・ライブ】

  • スーパーファミコンソフト【ライブ・ア・ライブ】「チェッカーバトル上の宮本武蔵との戦闘場面」

    スーパーファミコンソフト
    【ライブ・ア・ライブ】
    「チェッカーバトル上の宮本武蔵との
    戦闘場面」

RPG【クロノ・トリガー】(1995年〔スクウェアソフト/スクウェア〕)の戦闘場面では、ATB Ver2が導入され、可視化されました(ATBゲージ)。

同作は、ファイナルファンタジーシリーズの制作陣にドラゴンクエストシリーズの制作陣が参加したドリームプロジェクトです。ディレクターは北瀬佳範と時田貴司、シナリオは加藤正人。そこにドラクエチーム、シナリオ監修の堀井雄二と美術に鳥山明が加わっています。

地球の危機を救うため、地球の5つの時代を移動しながら、仲間と共に敵と戦うこの物語(マルチエンディング)では、主人公の少年クロノは剣術の達人で日本刀が主要な武器です。

最初に木刀を手にしているクロノは、物語が進行するなかで刀剣を購入したり、敵から入手するなどで、日本刀が強くなります(ソイソー刀、天王剣、夜叉、燕、鬼丸、朱雀、虹など)。けれどもクロノは経験値を上げて強くなるのではなく、最初から強いと言う独自設定でもありました。クロノの仲間には伝説の剣グランドリオンを手にする勇者の騎士・カエル、大鎌を武器にした魔王もいます。

  • スーパーファミコンソフト【クロノ・トリガー】

    スーパーファミコンソフト
    【クロノ・トリガー】

  • スーパーファミコンソフト【クロノ・トリガー】「ATBゲージが表示された魔王との戦闘場面」

    スーパーファミコンソフト
    【クロノ・トリガー】
    「ATBゲージが表示された魔王との
    戦闘場面」

フリーシナリオと刀剣

フリーシナリオを目指したPRGもスーファミに登場します。

パソコンゲームですでに登場していたフリーシナリオとは、1本のシナリオに沿って物語が展開されるRPGに対し、分岐と結末が複数用意され、プレイヤーごとに独自の物語展開や結末を可能にする仕様です。

ゲームボーイから始まったRPGサガシリーズ第4作で、スーファミ版初となった【ロマンシング サ・ガ】(1992年〔スクウェア〕)では、プレイヤーは主人公を8人(男女各4名)から選択し、8人分の違う物語が入り乱れ、邪神復活を食い止めます。

また同作では、利き腕も選択します。左手で持つと攻撃力が上がる片手剣が登場するなど(レフトハンドソード)、刀剣でも独自設定がなされました。

ディレクターとシナリオは河津秋敏、キャラクターデザインは小林智美です。

  • スーパーファミコンソフト【ロマンシング サ・ガ】

    スーパーファミコンソフト
    【ロマンシング サ・ガ】

  • スーパーファミコンソフト【ロマンシング サ・ガ】「レフトハンドソード入手場面」

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    【ロマンシング サ・ガ】
    「レフトハンドソード入手場面」

ローグライクゲームの発展と刀剣

いわゆるローグライクゲームもスーファミに登場しました。ローグライクと言う名称はその仕様が初めて登場したパソコンRPG【ローグ】(1984年)に由来します。ゲームをプレーするたび、主人公が移動するマップが変更される仕様(自動生成ダンジョン)です。

ローグライクゲームは、RPG【トルネコの大冒険 不思議のダンジョン】(1993年〔チュンソフト〕)で広く知られることになりました。ファミコンRPG【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】(1990年〔チュンソフト〕開発・〔エニックス〕発売)に登場した武器商人を主人公にしたドラクエの外伝です。

プレイヤーは主人公を操作し、モンスターを倒しながら、不思議のダンジョンを巡ってお宝を探します。ダンジョンに落ちているアイテムは、同時に最大20個を持つことができ、不規則に登場する剣を含むアイテムの何を持ち、何を捨てるのかがゲームポイントです。宝物を見付けるか、モンスターに倒されるかでゲームは終了し、やり直すたびにダンジョンが変わります。

プロデューサーは中村光一(ドラクエシリーズのディレクター)です。

  • スーパーファミコンソフト【トルネコの大冒険 不思議のダンジョン】

    スーパーファミコンソフト
    【トルネコの大冒険
    不思議のダンジョン】

  • スーパーファミコンソフト【トルネコの大冒険 不思議のダンジョン】「ダンジョン場面」

    スーパーファミコンソフト
    【トルネコの大冒険
    不思議のダンジョン】
    「ダンジョン場面」

その第2弾、和風RPG【不思議のダンジョン2 風来のシレン】(1995年〔チュンソフト〕)では、プレイヤーは三度笠と縞合羽をまとった主人公を操作し、本編では黄金郷の伝説が残る山頂を目指します。

プロデューサーは中村光一、シナリオ・デザインは冨江慎一郎です。

  • スーパーファミコンソフト【不思議のダンジョン2 風来のシレン】

    スーパーファミコンソフト
    【不思議のダンジョン2 風来のシレン】

  • スーパーファミコンソフト【不思議のダンジョン2 風来のシレン】「山中場面」

    スーパーファミコンソフト
    【不思議のダンジョン2 風来のシレン】
    「山中場面」

歴史シミュレーションゲームから恋愛シミュレーションゲームへ

スーファミでも歴史シミュレーションゲームでは定番になった題材のソフトが制作されました(【三国志正史 天舞スピリッツ】、【信長公記】、山岡荘八原作/横山光輝作画【織田信長 覇王の軍団】など)。

スーファミでは、歴史シミュレーションゲームと言う言葉を生み出した開発会社は、恋愛シミュレーションゲームを制作します。「ネオロマンスゲーム」を掲げた【アンジェリーク】(1994年〔ルビーパーティー/コーエー〕)です。キャラクターデザインは由羅カイリ、音楽は葛生千夏、アニメーション制作はスタジオライブです。

プレイヤーは宇宙を司る女王の候補に選ばれた女子高校生アンジェリーク・リモージュを操作。9人の男性守護聖の助けを得ながら街を作り、ライバルの女王候補以上の成果を目指します。女王判定の他、9人の守護聖とのロマンスによるエンディングも用意されました。

登場人物一の遊び人、炎の守護聖オスカーは剣の達人でした。

  • スーパーファミコンソフト【アンジェリーク】

    スーパーファミコンソフト
    【アンジェリーク】

  • スーパーファミコンソフト【アンジェリーク】「炎の守護聖オスカー登場場面」

    スーパーファミコンソフト
    【アンジェリーク】
    「炎の守護聖オスカー登場場面」

定番の和風RPGも

スーファミでは、「ブレイド(刃)」や「ソード(剣)」をタイトルに取り入れ、西洋を舞台にしたRPGも多数制作されています(【ソウルブレイダー】、【ソウル&ソード】、【ソードワールド】、【聖獣魔伝ビースト&ブレイド】など)。

同時に、定番の和風のRPGも多数制作されました。ゲームボーイで始まった大人気作ポケットモンスターに関連していく作品でした。

PCエンジンPRGの続編となるRPGで鎌倉時代を舞台にした【弁慶外伝 沙の章】(1992年〔サンソフト〕)は、脚本を中村一朗(共著【クリエイターのためのゲーム 「ハード」 戦国史 「スペースインベーダー」 から 「ポケモンGO」】)が手がけています。

江戸時代をモチーフにしたRPG【カブキロックス】(1994年〔アトラス〕〔レッドカンパニー〕開発・〔アトラス〕発売)は、シナリオを吉川兆二(テレビアニメ【ポケットモンスター】シリーズのアソシエイトプロデューサー、映画版【ポケットモンスター】シリーズのプロデューサー)が手がけました。

日本神話をモチーフにしたRPGファンタジー【BUSHI青龍伝〜二人の勇者〜】(1997年〔ゲームフリーク〕開発・〔T&Eソフト〕発売)は、田尻悟(ポケットモンスターの生みの親)がコンセプト&ゲームデザインを手がけています。

  • スーパーファミコン【弁慶外伝 沙の章】

    スーパーファミコン
    【弁慶外伝 沙の章】

  • スーパーファミコンソフト【カブキロックス】

    スーパーファミコンソフト
    【カブキロックス】

スーパーファミコンソフト【BUSHI青龍伝
〜二人の勇者〜】

3D家庭用ゲーム機の登場

スーファミ発売から5年後、家庭用3Dゲーム機も発売されます。32ビットのバーチャルボーイです(1995年7月21日発売。価格15,000円)。

32ビット家庭用ゲーム機(3DO REAL、セガサターン、PlayStation、メガドライブの周辺機器スーパー32X、PC-FX)が一挙に発売された翌年の出来事です。

スポーツゲームやアクションゲームが中心だったバーチャルボーイの発売の翌年には、スーファミの後継機、64ビットのNINTENDO64が続きます(1996年6月23日発売。価格25,000円)。1990年代中盤は家庭用ゲーム機のCPUの演算能力が飛躍的に向上し、3D以前以後と大きく時代が分かれることになります。

一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が家庭用ゲームを対象にした賞、日本ゲーム大賞(当初はCESA大賞)をスタートしたのもこの年でした(1996年)。

  • 【バーチャルボーイ】外箱

    「バーチャルボーイ」外箱

  • 【NINTENDO64】外箱

    「NINTENDO64」外箱

Z注目システムと一人称視点

NINTENDO64も3Dのアクションゲームが売りでした。開発メーカーの人気シリーズの画面の3D化が注目されます(【スーパーマリオ64】、【マリオカート64】など)。

なかでも、マスターソードが重要な要素となっている3DアクションRPG【ゼルダの伝説 時のオカリナ】(1998年〔任天堂〕)では「Z注目システム」、いわゆるロックオン機能が初めて登場します。

主人公の全身が画面に見えている独自の一人称視点による画面構成でした。その視点の着想は、チャンバラ場面の参考のために訪れた東映太秦映画村での忍者ショーにあったと言います(開発者インタビューより)。

同作は、第3回 CESA大賞(現・日本ゲーム大賞)で大賞を受賞しています。

  • NINTENDO64ソフト【ゼルダの伝説 時のオカリナ】

    NINTENDO64ソフト
    【ゼルダの伝説 時のオカリナ】

  • NINTENDO64ソフト【ゼルダの伝説 時のオカリナ】「Z注目システム場面」

    NINTENDO64ソフト
    【ゼルダの伝説 時のオカリナ】
    「Z注目システム場面」

NINTENDO64でもスーファミと同様に多くの海外作品の移植やパソコンゲームからの移植がなされました。そのなかに、大刀が成長するシステムを導入したイギリス発のアクションアドベンチャーゲーム【大刀】(だいかたな:2000年〔Ion Storm〕開発・〔ケムコ〕国内発売)があります。

プレイヤーは25世紀を生きる主人公ヒロ・ミヤモト(京都の剣術道場の師範)を操作し、因縁の大刀を奪った富豪カゲ・ミシマの打倒を目指します。ヒロ・ミヤモトは戦国時代にその大刀を鍛えた鍛冶師ミヤモト・ウサギの末裔であり、カゲ・ミシマはその大刀によって滅ぼされた戦国将軍でした。大刀は時空を超えられる不思議な力を有します。

同ゲームでは、プレイヤーは1990年代パソコンのシューティングゲームで発展した、ファースト・パーソン・シューター/ファースト・パーソン・シューティング(FPS)ゲームと呼ばれる本人視点(一人称視点)によって主人公を操作します。FPSの第一人者、ゲームデザイナーのジョン・ロメロ(パソコンゲーム【DOOM】と【Quake】の開発者)が企画・開発しています。

  • NINTENDO64版ソフト【大刀】

    NINTENDO64版ソフト
    【大刀】

  • NINTENDO64版ソフト【大刀】「一人称視点の場面」

    NINTENDO64版ソフト
    【大刀】
    「一人称視点の場面」

家庭用ゲーム機におけるCPU(中央処理装置)の演算処理能力は13年かけて8ビット、16ビット、32ビット、64ビットと向上。それに伴って複雑なゲーム表現が可能になりました。ロールプレイングゲームにおいては、より細やかな仕様が開発され、アクションゲームでは3Dを活かした視点が開発されるなど、技術進歩に伴ってプレイヤーが操作する刀剣もリアルさが増しました。

著者名:三宅顕人

進化する家庭用RPGと刀剣
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名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク) 名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)
名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)では、重要文化財などの貴重な日本刀をご覧いただくことができます。
キャラクターイラスト
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女性ゲームキャラクターと刀剣

女性ゲームキャラクターと刀剣
32ビットの家庭用ゲーム機の登場によって3D表現が先鋭化します。伴って声優を起用したアニメーション的音声表現も高度化します。またオンラインゲームへの移行期にも入ります。新たなメディアミックス化が急速に進んだ時代、刀剣が登場するゲームでは女性キャラクターの活躍が増加しています。

女性ゲームキャラクターと刀剣

新ゲームジャンルと刀剣

新ゲームジャンルと刀剣
各メーカーから一斉に発売された32ビットの家庭用ゲーム機。なかには電子機器メーカーでもありレコード会社でもある企業なども参入し、ゲーム業界の再編も始まります。異業種から参入したメーカーによる新しいこの家庭用ゲーム機には、多くの新興ゲーム会社がソフト開発に携わり、刀剣が登場するゲームにも新風が巻き起こります。

新ゲームジャンルと刀剣

Windows95以前以後と刀剣

Windows95以前以後と刀剣
パソコン用オペレーティングシステムMicrosoft Windows 95(32ビット)の発売をきっかけに、パソコンがより身近な存在となり、パソコンゲームのすそ野も広がります。そんな時代の前後、刀剣が登場する作品は、江戸時代の経営を題材にした新奇作の登場や、18禁アドベンチャーゲームで大いに発展します。

Windows95以前以後と刀剣

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