ドラマチックアドベンチャーゲーム【サクラ大戦】 (1996年〔セガ〕)。第1回CESA大賞(現・日本ゲーム大賞)で大賞にあたる作品賞を受賞。プレイヤーは青年軍人を操作し、霊剣荒鷹を愛刀とする女性キャラクターを含む6人の隊員と帝都・東京を狙う悪の組織に立ち向かう。
(■作品賞を受賞:アドベンチャーゲームの刀剣女性キャラクター)
32ビットの家庭用ゲーム機の登場によって3D表現が先鋭化します。伴って声優を起用したアニメーション的音声表現も高度化します。またオンラインゲームへの移行期にも入ります。新たなメディアミックス化が急速に進んだ時代、刀剣が登場するゲームでは女性キャラクターの活躍が増加しています。
1994年、CPU(中央処理装置)の演算処理能力が32ビットの家庭用ゲーム機が各メーカーから一挙に発売されます(3DO REAL、セガサターン、PlayStation、メガドライブの周辺機器スーパー32X、PC-FX)。その翌年にも発売され(バーチャルボーイ)、さらにその翌年には64ビットの家庭用ゲーム機も続き(NINTENDO64)、家庭用ゲーム機は3D表現を前提とする時代に入ります。
32ビットの家庭用ゲーム機が一挙に登場する前年、業務用ゲーム(アーケードゲーム)では世界初の3D対戦型格闘ゲーム【バーチャファイター】(1993年〔セガ〕)が登場していました。
同ゲームを、家庭用ゲーム機の第1弾ソフトにしたのがセガサターンです(1994年11月22日発売。価格44,800円)。32ビットCPUを2基搭載したことから64ビット級と謳われました。
セガサターンの発売年のソフトは全8タイトルです。翌年には144タイトルが発売され、【バーチャファイター CGポートレートシリーズ】(1995年〔セガ〕)と題したゲーム内の人気キャラクターを取り上げたソフトも登場しました。
同シリーズは、アメリカ人女子大学生サラ・ブライアントを皮切りに、ジャッキー・ブライアント、結城晶、パイ・チェン、ウルフ・ホークフィールド、ラウ・チェンなど、ロックサウンドに乗せたプロモーション映像でした。
【バーチャファイター2】もアーケード版登場の翌年、セガサターンに移植されます(1995年〔セガ〕)。同年にはバーチャファイターシリーズを使った競技会の全国大会も開催され、「鉄人」と呼ばれる名プレイヤーが誕生するなど、バーチャファイターは社会現象となりました。
セガサターン発売の翌年の夏、「ハマるロープレ」、「ロープレ王国」、「フル3Dタクティカル・ロープレ」のキャンペーンが掲げられます。ロールプレイングゲーム(RPG)とは、物語性が重視された世界観のなかで経験値を上げて成長していく登場人物を操作して仲間と共に旅をするゲームジャンルです。
同キャンペーンでは、シミュレーションRPG【リグロードサーガ】(1995年〔マイクロキャビン〕開発・〔セガ〕販売)、シリーズ第7作にあたるアクションRPG【シャイニングウィズダム】(1995年〔ソニック〕開発・〔セガ〕販売)、アクションRPG【魔法騎士レイアース】(マジックナイトレイアース:1995年〔セガ〕)の3タイトルが発売されます。
なかでも、魔法騎士レイアースは女性漫画家集団CLAMPの少女漫画が、原作・オリジナルデザインです。異世界に召喚された3人の女子中学生が魔法騎士となり、武器を手に魔物がのさばる異世界の危機を救います。3人は巨大兵器・魔神も乗りこなします。漫画連載の翌年、平野俊弘監督でテレビアニメ化されており、その同年には携帯型ゲーム化もされていました(1994年・ゲームギア)。
セガサターン版ではテレビアニメの場面も導入されます。声優陣(椎名へきる・吉田古奈美・笠原弘子・緒方恵美など)による、ほぼフルボイス仕様のメディアミックス作となっていました。
ディレクターは小玉理恵子、ゲームデザイン&シナリオは西山彰則です。小玉理恵子は開発会社初のRPGで女性を主人公として始まった【ファンタシースター】(1987年〔セガ〕)シリーズの制作陣のひとりでした。
この時期、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が家庭用ゲームを対象にした賞、日本ゲーム大賞(当初はCESA大賞)をスタートしています(1996年)。
第1回CESA大賞(現・日本ゲーム大賞)で大賞にあたる作品賞は、ドラマチックアドベンチャーゲーム【サクラ大戦】(1996年〔セガ〕)が受賞しました。
元々ボードゲームとして企画された同作は家庭用ゲーム化の翌年には小説版、ドラマCD化、舞台化、オリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)化がなされ、メディアミックス作となりました。
総合プロデューサーは広井王子、キャラクターデザインは藤島康介、構成・脚本はあかほりさとる、作曲・音楽監督は田中公平、キャラクター総製作は松原秀典、アニメーション製作はキョクイチ東京ムービー事業部で演出は大賀俊二です。
以後、人気シリーズとなります(【サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~】など)。
プレイヤーは、帝国華撃団の新任少尉・大神一郎(二天一流)を操作。霊剣荒鷹(れいけんあらたか)を愛刀とする真宮寺さくら(北辰一刀流)を含む6人の隊員を指揮し、帝都・東京を狙う悪の組織に立ち向かいます。ゲームの舞台は大正時代が模された世界観で描かれ、隊員は普段は帝国歌劇団の団員と言う設定です。歌もアニメーションもふんだんに取り入れられ、声優も参加しています(陶山章央、横山智佐など)。
同ゲームは、アドベンチャーパートとバトルパートに分かれています。アドベンチャーパートは恋愛アドベンチャーにもなっており、バトルパートは兵器・霊子甲冑(りょうしかっちゅう)に搭乗したウォー・シミュレーションゲームとなっています。
セガサターンでは、刀剣が登場するアクションRPGはその後も発展します。
伝説の剣を手にする主人公を操作する格闘RPG【ガーディアンヒーローズ】(1996年〔トレジャー〕開発・〔セガ〕販売)、「パラレルシナリオ」を謳ったアクションRPG【ダークセイバー】(1996年〔クライマックス〕開発・〔セガ〕販売)、アクションRPG【プリンセスクラウン】(1997年〔アトラス〕〔セガ〕開発・〔セガ〕販売)などです。
なかでも、プリンセスクラウンでは、先代の女王エルファーランから王位を継承した末娘、少女グラドリエル=ド=ヴァレンディアを操作し、王家の剣を手に敵を倒します。敵は王国に災いをもたらす闇の神です。
同作では総アニメパターン1万5千種類、そのアニメーションパターンを生み出す「モーフィングシステム」が搭載され、少女のかわいらしい動きが表現されました。モーフィングシステムとはコンピューターグラフィックスによって動きを滑らかに見せる映像手法です。
多くの家庭用ゲーム機と同様に人気ジャンルRPGに注力したセガサターンでは、シミュレーションRPG、ロマンテック・ストーリーRPG、マップメイキングRPGなど多彩化しました(100対100の兵士が戦う【ドラゴンフォース】、美術監督・永野護【エアーズアドベンチャー】、キャラクター・モンスターデザイン山田章博【テラ ファンタスティカ】、【パネルティアストーリー ケルンの大冒険】など)。
セガサターンは発売から3年後、ソフト数がピークを迎えます(1997年)。
同年、本格的RPG【グランディア】(1997年〔ゲームアーツ〕開発・〔ESP〕〔ゲームアーツ〕発売)が、第2回CESA大賞(現・日本ゲーム大賞)で優秀賞を受賞します。
物語の舞台は、世界の果てができた大航海時代後。プレイヤーは、刀剣を武器とする少年を操作します。少年は冒険家だった亡き父の形見・精霊石の秘密(古代魔法文明を崩壊させた生物兵器復活に必要)と古代遺跡の謎を探るべく、海の向こうの新大陸を目指します。相棒は少女の冒険者です。最後の敵(ラスボス)との戦闘には、精霊の剣が必要となっています。
監督は宮路武・本谷利明、演出は高橋秀信、ゲームグラフィックは安住政敏、システムデザインは小山洋幸、ゲームデザインは岡野崇宏、ゲームシナリオははせべたかひろ、キャラクターデザインは草薙琢仁・大上浩明(本猪木浩明)、アニメーションは森川定美、世界設定デザインは小林治・野田弘一、作曲は岩垂徳行などです。アニメーション作成はA.P.P.P.です。
同作では背景は3D、声優(瀧本富士子、日髙のり子など)を起用したキャラクター部分は2Dと言う表現を選択。戦闘では行動ゲージの導入で、順番(ターン制)ではなく、素早さを有するキャラクターの性質に合わせ、コマンド(行動指示)方式によるリアルタイムに戦闘がなされます。
同作は、以後シリーズ化されています。
その後もセガサターンでは、様々なジャンルで刀剣は登場します。
歴史シミュレーションゲーム(【天下制覇】)、アドベンチャーゲーム(【少女革命ウテナ いつか革命される物語】)、シミュレーションRPG(【斬魔超奥義ヴァルハリアン】、イラストつちやきょうこ【BLACK/MATRIX】)などです。
なかでも、アドベンチャーゲーム【少女革命ウテナ いつか革命される物語】(1998年〔セガ〕)は、前年に放送された幾原邦彦監督によるテレビアニメに基づきます。少女漫画化(キャラクター原案を担当したさいとうちほ)、舞台化、小説化と連動していたメディアミックス作でした。
ゲーム内ではテレビアニメ部分もふんだんに使用され、アニメ版の声優によるフルボイス仕様です(川上もと子、渕崎ゆり子など)。多彩なキャラクターによる複雑な人間関係も描かれ、様々な結末が用意されたマルチエンディングでした。
セガサターン版では、ディレクターは山路和紀、脚本は大河内一楼、ゲーム内のアニメーション監督は桜井弘明、キャラクターデザインは長谷川眞也、アニメーション制作はセクシズです。
プレイヤーはゲーム版オリジナルの主人公である転校生の少女を操作し、時にサーベルを武器に戦うことになります。ゲーム版オリジナルでは他に、主人公と同じく転校生の少女・三条院千種が登場し、主人公の父親がかつて部長を務めていたフェンシング部で起きた恋愛を巡る因縁が描かれます。
そしてセガサターンの後継機、ドリームキャストが開発されます。(1998年11月27日発売。価格29,800円)。当時普及し始めていたオンラインを前提に開発が進められ、インターネット用通信のアナログモデムの搭載が特徴でした。ドリームキャストの名称が付く前のコードネームは「KATANA」です。
ドリームキャストでは、惑星探索の物語でオンラインネットワークにも対応した3DRPG【ファンタシースターオンライン】(2000年〔ソニックチーム〕開発・〔セガ〕販売)が、第5回日本ゲーム大賞で大賞を受賞しています。これまでのファンタシースターシリーズと同様にオフラインによる冒険の他に、オンライン(コンピュータ同士がネットワークでつながった状態)で最大4人の冒険が可能になっています。
ドリームキャストでも刀剣は、当時多彩化していたゲーム表現のなかで発展します。
オンライン対応の銃や剣による3Dロボット対戦型格闘ゲーム【フレームグライド】(1999年〔フロム・ソフトウェア〕)。剣士など全6人の主人公で楽しむ3D自動生成型ダンジョンRPG【クライマックスランダーズ】(1999年〔クライマックス〕開発・〔セガ〕販売)。3Dアクションアドベンチャーゲーム【魔剣X】(1999年〔アトラス〕)などです。
なかでも魔剣Xは戦闘場面が、ファースト・パーソン・シューター/ファースト・パーソン・シューティング(FPS)ゲームと呼ばれる一人称視点(本人視点)です。プレイヤーは、人々にブレインジャック(脳に入り込み操作すること)ができる人工生命体の魔剣(マキーナ)を操作し、魔剣争奪を制します。
物語の進行役は、魔剣の開発者の娘で魔剣と同居・結合した女子高校生の相模桂ことケイ(声優は飯塚雅弓)です。魔剣は精神病治療としての医療器具として表向きは開発され、その真の目的は人々の精神を支配して人類を破滅に導こうとする悪の存在を滅ぼす武器でした。物語は選択による分岐によって変わるマルチエンディングです。
アートディレクターは金子一馬、ディレクターは橋野桂、シナリオライターは境一憲です。
ドリームキャストではソフト数がピークを迎えても(2000年)、多彩なゲームジャンルで刀剣が登場する作品は続きます。
二刀を武器とする空賊の少年を主人公とし異国の少女と共に世界を旅する3D RPG【エターナル アルカディア】(2000年〔オーバーワークス〕開発・〔セガ〕販売)。少年王と少女王を主人公に敵陣を落とすオンライン対応3Dリアルタイムストラテジーゲーム【ハンドレッドソード】(2001年〔スマイルビット〕開発・〔セガ〕販売)。
そして、不思議のダンジョンシリーズ(NINTENDO64)の人気サブキャラクターを主人公にしたオンライン対応の3Dローグライクゲーム【不思議のダンジョン 風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!】(2002年〔チュンソフト〕監修・〔ネバーランドカンパニー〕開発〔セガ〕販売)などがあります。
不思議のダンジョン 風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!は、鋼賀(こうが)編と八魔天編との2部構成です。
鋼賀編ではプレイヤーは、風来修業を続ける女性剣士アスカを操作して天輪国・十六夜(いざよい)の里の危機を救います。敵は忍の集団「鋼賀」です。彼らはかつてモンスター退治を生業とし人々から信頼を得ていたものの豹変していました。アスカは鋼賀を倒すため、剣などのアイテムを拾いながら、樹海奥深くにある鋼賀城を目指します。
総監修は中村光一、企画・シナリオは斉藤宏明です。オンライン対応の同作では、オフラインのダンジョン以外にも、オンラインを通じてさらにタンジョンを楽しむことができました。
3D表現の先鋭化が起こった32ビットの家庭用ゲーム機の時代の到来。そんな時代、刀剣が登場するゲームでは女性キャラクターの活躍が増加しました。ハード機器の発展はゲームの可能性を広げ、ユーザーのすそ野も広げることになりました。