オープンワールドアクションアドベンチャーゲーム【Ghost of Tsushima】(2020年〔Sucker Punch Productions〕開発・〔ソニー・インタラクティブエンタテインメント〕販売)。ゲーム機本体の開発メーカー傘下、アメリカ合衆国のゲーム制作会社が開発。題材は鎌倉時代の元寇。白黒画面設定「黒澤モード」も用意。日本ゲーム大賞2021・年間作品部門・大賞受賞作。
(■本体開発メーカー傘下の海外発の家庭用時代劇ゲーム)
2010年代、家庭用ゲーム機、パソコン、スマートフォン、タブレット端末などを共通プラットフォームとしてソフトが開発される時代に入ります。ゲーム開発もグローバル化が当然の時代になり、情報の均質化も加速します。そんな時代の刀剣が登場する家庭用ゲームでは、従来の東洋趣味を逆手に取った内容や、外国人による間違った日本のイメージではない、外国人による本格的な時代劇を題材にした作品も登場します。
2010年初頭、新たな次世代三大家庭用ゲーム機の時代を迎えます。
海外で先行発売されたWii U(米国発売2012年11月8日・日本発売2012年12月8日。価格31,500円)、同じく海外で先行発売されたPlayStation4、通称プレステ4(北米発売2013年11月15日・日本発売2014年2月22日。価格39,980円)、海外発の家庭用ゲーム機Xbox One(世界発売2013年12月22日・日本発売2014年9月4日。価格39,980円)の3機です。
このうちプレステ4では、CPU(中央処理装置)は汎用品(*他メーカー製で特別製ではない製品)が採用されます。それには、パソコン、スマートフォン、タブレット端末などが共通プラットフォームとなった時代背景があり、その結果、前機種のプレステ3と互換性はなくなるなど時代の大転換点となりました。
プレステ4では、プレステ3から継承した仕様(画像出力解像度、映像出力、サウンド、USB端子とイーサネット端子内蔵、Wi-Fi・Bluetooth・Blu-ray Disc搭載など)以外では、メモリが15倍となり、より高度なゲーム表現が可能になります。
またヘッドセットを同梱し、ワイヤレスコントローラにある SHAREボタンによって動画録画と配信も可能になるなど、これまで以上にオンラインで楽しむことが前提となりました。携帯型ゲーム機・PlayStation Vita(日本発売2011年12月17日)を使ったリモートプレーも可能です。
ソフトの販売方法も変化します。
前機種プレステ3の発売と同時にオンラインストア「PLAYSTATION Store」によるソフトのダウンロード販売もスタート(2006年11月11日)。このパッケージ版(店頭販売)とダウンロード版との並行販売では、年々ダウンロードの比重が増していきます。
プレステ4では、このダウンロード版による刀剣が登場する作品が配信されています。
自主制作パソコンゲームのバトルアクションゲーム【巫剣神威控】(みつるぎかむいひかえ:2013年〔ゼニスブルー〕)です(2015年プレステ4版ダウンロード開始)。プレイヤーは日本刀を武器とする女子高校生を操作し、自身の師から魔剣を奪って逃走した同門の女子高校生の打倒を目指します。
プレステ4本体の発売に併せて12タイトルが発売されます。アクションゲーム、シューティングゲーム、レーシングゲーム、スポーツゲーム、歴史シミュレーションゲームなど多彩なジャンルがそろえられました。
そのうちの1本は、アクションアドベンチャーゲーム【龍が如く 維新!】(2014年〔セガ〕)です。
東京の架空の繁華街を舞台にアウトローを主人公とするプレステ発の人気シリーズ「龍が如くシリーズ」のスピンオフ(派生作)で、プレステ3にて宮本武蔵を主人公とした【龍が如く 見参!】で行われた時代劇化に次ぐ第2弾でした。
龍が如く 維新!では、プレイヤーは坂本龍馬を操作します。坂本龍馬は、暗殺された恩師・吉田東洋の敵討ちのため、素性を隠して新撰組に入り、斎藤一を名乗る独自のストーリーです。
ゲーム内に登場するキャラクターは著名な俳優をモデルとし、「龍が如くシリーズ」と同様に、龍が如く 維新!では、高橋克典、大東駿介、徳重聡、桜庭ななみなどが声優として参加しました。
日本ゲーム大賞2013のフューチャー部門で優秀賞を受賞しています。
また、多くのタイアップ版も制作されたプレステの人気シリーズ「無双シリーズ」では、プレステ4でも漫画の人気キャラクターや、大河ドラマとのタイアップ版が制作されました(【アルスラーン戦記×無双】、【ベルセルク無双】、【戦国無双 〜真田丸〜】)。
プレステ4では、人気のアクションRPGのシリーズ作も登場します。
高難易度から「死にゲー」なる言葉を普及させた【デモンズソウル】と【ダーソウル】に連なるアクションRPG【ブラッドボーン】(2015年〔フロム・ソフトウェア〕〔SCEジャパンスタジオ〕開発・〔ソニー・コンピュータエンタテインメント〕発売)です。
プレイヤーは中世ファンタジー風のダークな世界観のなかで狩人を操作し、獣となった人を狩り続けます。狩人の主な武器は右手で持つ変形刀剣と左手で持つ銃です。
日本ゲーム大賞2015・年間作品部門・優秀賞を受賞しています。
プレステ4ではオリジナルの和風のアクションRPGも制作されます。
「戦国死にゲー」が掲げられた戦国時代末期を舞台にしたダーク戦国アクションRPG【仁王】(2017年〔チームニンジャ/コーエーテクモゲームス〕)です。
プレイヤーは日本に辿り着いた西洋人海賊ウィリアムを操作し、5種類の刀剣を武器に敵と戦います。ウィリアムは、徳川家康に仕えたイングランド王国の航海士・三浦按針(みうらあんじん)がモデルです。
ゲーム内でウィリアムは、徳川家康方の忍び・服部半蔵と、その弟子の女性の忍び・お勝と行動を共にします。敵は、石田三成と錬金術師エドワード・ケリーです。
徳川家康役には市村正親、女性の忍び・お勝役には武井咲を起用。オープニングムービーは黒澤明監督作のリメイク版【隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS】を監督した樋口真嗣、音楽には大河ドラマ第53作【軍師官兵衛】を担当した菅野祐悟が手がけるなど、映画さながらの豪華な家庭用ゲームとなりました。
同作は、映画監督・黒澤明の遺稿をもとにしたメディアミックス作「鬼」が原点です。当初はプレステ3発売(2006年)に併せて制作が目指されており、完成までに12年もの時間を要しました。
ゲーム開発は「歴史シミュレーションゲーム」の言葉を普及させたパソコンゲーム【シミュレーションウォーゲーム 信長の野望】(1983年〔光栄マイコンシステム/光栄〕・PC-8001/PC-8801版他)の生みの親、シブサワ・コウが主導しました。完成にあたり、シブサワ・コウ35周年が掲げられました。日本ゲーム大賞2017・年間作品部門・優秀賞を受賞しています。
仁王は有料ダウンロードコンテンツ(DLC)も配信されます。
東北を舞台に伊達政宗を中心とした「東北の龍」、大坂冬の陣を舞台に真田幸村を中心とした「義の後継者」、大坂夏の陣を舞台に豊臣秀頼と淀君を中心とした「元和偃武」(げんなえんぶ)が制作されました。
仁王は3年後、同じく戦国時代を舞台にした和風ダークファンタジーゲーム【仁王2】(2020年〔チームニンジャ/コーエーテクモゲームス〕)へ続きます。日本ゲーム大賞2020・年間作品部門・優秀賞を受賞します。
プレイヤーは半分妖怪(半妖)である主人公・秀の字/秀千代(男女選択可能)の侍を操作。サブキャラクターである藤吉郎と行動を共にし、妖怪退治に臨みます。秀の字/秀千代と、のちに豊臣秀吉となる藤吉郎、この2人の「秀」によるひとつの「秀吉」の物語がゲーム内では展開されます。
藤吉郎役に竹中直人、妖怪を狩る一族の無明役に波瑠(はる)が起用されました。
仁王2も有料ダウンロードコンテンツ(DLC)が配信されます。
仁王2では、坂上田村麻呂の愛刀ソハヤマルが重要なアイテムとなっています。そのソハヤマルにまつわる過去が平安時代を舞台に巡られます。
源義経が登場する「牛若戦記」、女性化された源頼光が登場する「平安京討魔伝」、そして最終章となる「太初の侍秘史」の3作が制作されました。
死にゲーを普及させることになったデモンズソウル、ダーソウル、ブラッドボーンのダークファンタジー系のアクションRPGを手がけたゲーム制作会社は、戦国時代末期を舞台にしたゲームを発表します。
Xbox Oneと同時発売された和風アクションアドベンチャーゲーム【SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE】(2019年〔フロム・ソフトウェア〕〔アクティビジョン〕開発・〔フロム・ソフトウェア〕発売)です。
略称「隻狼」の同作でプレイヤーは隻腕の忍び・狼(おおかみ)を操作し、主である御子の奪還を目指します。敵は狼が仕えていた剣聖一族の継承者です。
主人公がゲーム内で何度も死んではやり直すことになる高難易度から、死にゲーと呼ばれる通り、隻狼でもその仕様は継承されています。
同作は、日本ゲーム大賞2019・年間作品部門・優秀賞を受賞、アメリカ合衆国のゲーム賞The Game Awardsの2019でGame of the Yearを受賞するなど、様々な賞を獲得しました。
プレステ4では、海外発の和風ゲームも販売されます。
和風タクティカルアクションゲーム【Shadow Tactics:Blades of the Shogun】(2016年〔Mimimi Productions〕開発・〔Daedalic Entertainment〕発売)は、ドイツ連邦共和国を拠点とするゲーム制作会社が手がけました。パソコン版が先行後、海外発の家庭用ゲーム機Xbox One版とプレステ4版が同時発売されました。
プレイヤーは、カゲサマと名付けられた男女5名(忍者・侍・芸者・罠師・狙撃手)を操作し、江戸時代初頭を舞台に、将軍に対抗する勢力を倒します。
和風の要素もあるメレー(近接攻撃)アクションゲーム【For Honor】(2017年〔Ubisoft Montreal studio〕開発・〔ユービーアイソフト〕発売)は、フランス共和国に拠点を置くゲーム開発会社のカナダ支社が開発を担当しました(代表作は暗殺アクションゲーム【ASSASSIN’S CREED】など)。パソコン版・Xbox One版・プレステ4版が同時発売されました。
プレイヤーは、侍、ヴァイキング、ナイトの3種類の戦士から1人を選択し、自らの軍勢を有利に導きます。その激しいアクション描写から販売対象は18歳以上のみです。
プレステ4本体開発メーカー傘下の海外ゲーム制作会社も、刀剣が登場する家庭用ゲームを開発しています。
アクションRPG【Horizon Zero Dawn】(2017年〔Guerrilla Games〕開発・〔ソニー・インタラクティブエンタテインメント〕販売)は、本体開発メーカー傘下のオランダ王国のゲーム制作会社が開発を担当しました。
プレイヤーは文明崩壊後の近未来を舞台に、弓や槍を武器とする女性狩人を操作し、襲ってくる機械獣などを倒します。
そして、オープンワールド時代劇アクションアドベンチャーゲーム【Ghost of Tsushima】(2020年〔Sucker Punch Productions〕開発・〔ソニー・インタラクティブエンタテインメント〕販売)が登場します。ゲーム機本体の開発メーカー傘下にあるアメリカ合衆国のゲーム制作会社が開発を担当しました。
題材は鎌倉時代の元寇です。プレイヤーは、冥府からやって来た武士(=Ghost)を操作し、対馬を占領するモンゴル軍に立ち向かいます。主人公は「冥人」(くろうど)と呼ばれ、武士道からすれば卑怯な戦法を駆使する設定です。
オープンワールドと呼ばれる画面の切り替えがなく行動範囲が途切れない仕様は、プレイヤーがストーリーに縛られず、自分の意思で自由に行動できます。そのオープンワールドを活かした対馬の美しい景色や、「黒澤モード」と呼ぶ白黒画面の切り替えも特徴でした。
クリエイティブディレクターのJason Connellは、黒澤明や三池崇史の時代劇映画へ敬愛を明かしています。刀の取り扱いについても専門家を招き、その激しいアクション描写から販売対象は18歳以上のみでした。同作は、日本ゲーム大賞2021・年間作品部門・大賞の他、様々な賞を獲得しました。
さらなる次世代の家庭用ゲーム機Nintendo Switch(2017年3月3日発売)の登場に併せて、プレステ4版とNintendo Switch版とで同時発売も始まります。
ロールプレイングゲーム(物語性が重視された世界観のなかで経験値を上げて成長していく登場人物が仲間と共に旅をする)を得意とするゲームメーカーは、3部作を発売します。
ピュア・ファンタジー&トゥルーRPG【いけにえと雪のセツナ】(2016年〔Tokyo RPG Factory〕開発・〔スクウェア・エニックス〕発売)、RPG【ロストスフィア】(2017年〔Tokyo RPG Factory〕開発・〔スクウェア・エニックス〕発売)、アクションRPG【鬼ノ哭ク邦】(おにのなくくに:2018年〔Tokyo RPG Factory〕開発・〔スクウェア・エニックス〕発売)です。
このうちロストスフィアと鬼ノ哭ク邦は、Nintendo Switch版とプレステ4版との同時発売でした。それぞれ、記憶、輪廻転生を題材に、プレイヤーは刀剣を武器に戦います。
剣術アクションRPG【侍道外伝 KATANAKAMI】(2020年〔アクワイア〕開発・〔スパイク・チュンソフト〕発売)も、Nintendo Switch版とプレステ4版との同時発売です。
「侍道シリーズ」のこのスピンオフ(派生作)では、プレイヤーは借金のカタに取られた刀鍛冶の娘のために体を張ることを買って出た侍を操作します。昼間は刀の売買で資金を稼ぎ、夜は異界の魍魎と戦って刀や材料を手に入れます。その激しいアクション描写から販売対象は18歳以上のみです。
2010年代、家庭用ゲーム機、パソコン、スマートフォン、タブレット端末などが共通プラットフォームとなる時代に入りました。そんな時代の刀剣が登場する家庭用ゲームでは、プレステ4と海外発のXbox One系ではダークファンタジーが、プレステ4とNintendo Switch系ではファンタジーRPGが主流となるなど、母体となる家庭用ゲーム機ごとにその世界観も変化しました。