著名な門前町

門前町とは
/ホームメイト

門前町とは 門前町とは
文字サイズ

日本各地の中心的な土地の多くは、城下町(じょうかまち)から発展したと言われています。一方、門前町(もんぜんまち)から発展した都市は、長野県長野市や三重県伊勢市などが代表的。どちらもその地域が発祥の起源となっていますが、門前町と城下町にはどのような違いがあるのでしょうか。門前町について詳しく解説し、城下町との差異や有名な門前町についてご紹介します。

門前町とは 

門前町

門前町

寺院や神社の周辺に作られた商店街を指し、名高い寺や神社の門前に宿や飲食店が立ち並ぶことから、「門前町」と呼ばれるようになりました。

門前町は寺院や神社へ訪れる多くの参拝客と商工業者達によって形成されています。

城下町との違い

門前町と似た形態に、城下町があります。城下町は門前町とは異なり、お城を中心に武士や町民らの居住地域として形成された町。

戦国時代には、敵からの攻撃を防ぐ要塞として使用されていましたが、「徳川家康」の治世以降は政治や経済の中心地となりました。

門前町の構成要素

門前町の中心的な存在は寺院や神社。多くの場合において、その参道には鳥居や灯籠(とうろう)などが設置され、また参道の両側には寺院の正式な入口である山門や、参拝者のための宿泊施設である宿坊が立ち並んでいます。

門前町の歴史

清水寺

清水寺

門前町は、寺院や神社への参拝行事と深くかかわる存在。

門前町の歴史を理解するためには、寺院や神社の起源について知ることが大切です。

ここからは、寺院と神社の歴史と門前町の始まりについて詳しく見ていきましょう。

寺院の歴史

古代インドの修行僧達が仏の教えを学び、瞑想を行っていた場所が寺院の起源。

釈迦の死後は、遺骨である「仏舎利」(ぶっしゃり)を納めるための仏塔が建てられるようになり、次第に仏像や雨風をしのぐための仏堂も作られるようになったのです。

日本に仏教が伝わったのは6世紀後半。奈良時代には仏教が広く普及し、各地に「国分寺」(こくぶんじ:聖武天皇が仏教による国家鎮護のため、当時の各国に建立を命じた寺院)・「国分尼寺」(こくぶんにじ:国分寺と同時期に建立された尼寺)が建立されました。

明治時代には、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく:仏教の排除)によって仏教離れが加速。しかしながら、第二次世界大戦後の「神道と国家の分離令」が発布されると、仏教への信仰が次第に回復していきました。

神社の歴史

神社の起源は、神が宿るとして崇められていた大きな木や岩などに祭場や建物が建造されたこと。

平安時代に入ると仏教と神道を同一のものとみなす神仏習合が進み、仏教が主、神道が従となりました。明治時代には廃仏毀釈によって神道から仏教が排除され、第二次世界大戦前まで神社への信仰が厚くなります。

神社は、時には政治へも影響するほど大きな権力を持っていましたが、第二次世界大戦後の神道と国家の分離令によって、他の宗教と同様に扱われるようになりました。

門前町が作られるようになったきっかけ

平安時代以前は、地域ごとにその土地の神を信仰することが一般的でしたが、平安時代中期頃から、地域を越えた場所に神が祀られるようになりました。

それに伴い、神を祀っている土地に各地からの参拝者が集まるようになります。参拝者が増えると、自然と寺院や神社周辺に参拝客用の宿場や食事処なども作られ、それが門前町へと発展したのです。

有名な門前町

歴史あるスポットとして、今も多くの人々を惹き付けている門前町。日本全国にある有名な門前町を9つご紹介します。

浅草

浅草の門前町は「浅草寺」(せんそうじ:東京都台東区)を中心に形成されました。

浅草寺の始まりは、628年(推古36年)、飛鳥時代のこと。漁をしていた網に観音像がかかったことをきっかけに漁師の主人が出家。主人は自宅を観音像供養のために寺へと改装しました。

中世以降になると浅草寺周辺が寺領として寄進され、門前町が発展。現在も残る江戸の風情と大衆娯楽文化の雰囲気が多くの参拝客を惹き付けており、年間約30,000,000人の人々が参拝に訪れています。

長野

長野県の門前町は、「善光寺」(ぜんこうじ:長野県長野市)を中心に形成されました。

この善光寺の門前町は数百年もの歴史があり、江戸時代から明治時代には善光寺町と外の町をつなぐ街道が大変賑わったと言われています。

年間約6,000,000人の観光客が訪れる、非常に活気のある門前町です。

津島

津島は、「津島神社」(愛知県津島市)を中心として栄えた門前町。

津島神社はかつて除疫、授福の神である「牛頭天王社」(ごずてんのうしゃ)と呼ばれ、昔から厚く信仰されていました。

江戸時代においては全国各地に津島社信仰の分社が建立。本社である津島神社へは多くの人々が参拝し、門前町が発展しました。地元では津島神社のことを「津島さん」「天王さん」などと呼んで崇敬されており、年間約240,000人の人々が訪れます。

坂本

坂本の門前町は、「日吉大社」(ひよしたいしゃ:滋賀県大津市)と「比叡山延暦寺」(ひえいざんえんりゃくじ:滋賀県大津市)を中心に形成。坂本には僧侶達が仏道修行する「里坊」(さとぼう)が50ヵ所存在し、石積みで囲まれています。

石積みの景観は美しく落ち着いた雰囲気であり、町並みは1997年(平成9年)に重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。

嵯峨鳥居本

嵯峨鳥居本は、「火伏せの神」として知られる「愛宕神社」(あたごじんじゃ:京都市右京区)の門前町。

鳥居本は嵯峨野の最も奥に鎮座します。江戸時代以降、火伏せ祈願として愛宕神社を参拝する人が多くなり、嵯峨鳥居本一帯が栄えました。

瓦屋根や茅葺の民家が立ち並ぶ情緒豊かなスポットでもあり、愛宕街道に沿った長さ600mの通りは、1979年(昭和54年)に国の重要伝統的建造物群保存地区に登録されています。

産寧坂

産寧坂の門前町は、「清水寺」(きよみずでら:京都府京都市東山区)、「八坂神社」(やさかじんじゃ:京都府京都市東山区)、「法観寺」(京都府京都市東山区)などを中心に発展。

明治時代や大正時代に作られた町並みが残され、歴史を感じられる光景が広がっています。

1976年(昭和51年)には、京都市産寧坂伝統的建造物群保存地区と重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

奈良三条通り

春日神社

春日神社

奈良三条通り(奈良県奈良市)は、「春日大社」(かすがたいしゃ:奈良県奈良市)の鳥居からJR奈良駅までを結び、奈良市の中心市街地を東西に貫く街路。

地元向け老舗商店や観光客向けの土産店・飲食店・ホテル・金融機関などが混在し、多くの通行人や観光客で常に賑わっています。

初瀬

初瀬は「長谷寺」(はせでら:奈良県桜井市)の門前町。長谷寺の始まりは727年(神亀4年)、「徳道上人」(とくどうしょうにん)が本尊十一面観音像を造ったことがきっかけと言われています。

室町時代以降、伊勢神宮への参拝が広く普及し、伊勢へつながる初瀬地方は大きく繁栄しました。初瀬には多くの宿場が作られたため、今も多くの旅籠の流れをくむ旅館を見ることができます。

おはらい町

おはらい町は、「伊勢神宮」(三重県伊勢市)の門前町として発展。

五十鈴川(いすずがわ)に沿って約800m続く通りは石畳になっており、多くの土産物店や飲食店が並んでいます。江戸時代には「お伊勢参り」として、全国各地から参拝客がやってきたことでも名が知られています。

神宮道場や祭主職舎などの歴史的建造物もあり、古くからの風景が残る町並みも楽しみに年間約8,000,000人がおはらい町を訪れます。

門前町とはをSNSでシェアする

名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク) 名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)
名古屋刀剣ワールド/名古屋刀剣博物館(名博メーハク)では、重要文化財などの貴重な日本刀をご覧いただくことができます。
キャラクターイラスト
キャラクターイラスト
キャラクターイラスト

「著名な門前町」の記事を読む


時代によって変化する門前町

時代によって変化する門前町
日本の各都道府県を代表する都市部は、ほとんどが近世に「城下町」として発展した場所だと言えます。しかし、なかには「港町」・「宿場町」(しゅくばまち)など、流通や人流によって街道が都市へと発展した例もあり、そのひとつが「門前町」(もんぜんまち)です。門前町とは、社寺の門前に発展した町のことで、古くから有名な神社や寺院などの周囲に人々が集まって発達し、現代ではその多くが観光名所となっています。

時代によって変化する門前町

門前町 浅草

門前町 浅草
東京都台東区は、家屋・マンションが密集する大都会の市街地ですが、歴史を感じられる門前町が今も残されています。東京の代表的な門前町と言えば、浅草や門前仲町、亀戸など。門前仲町から浅草までの道のりには、江戸の雰囲気を感じられる両国や蔵前があり、電車で約30分、徒歩でも約1時間の距離なため、ゆったりと史跡スポットを巡るコースとしても人気です。今回は東京都の中でも特に有名で、毎年多くの観光客が訪れる門前町・浅草と「浅草寺」(せんそうじ:東京都台東区)の特徴や歴史についてご紹介します。

門前町 浅草

門前町 長野

門前町 長野
長野県長野市にある、門前町長野は日本で唯一、門前町から県庁所在地になった地。長野は「上杉謙信」(うえすぎけんしん)と「武田信玄」(たけだしんげん)による激戦・「川中島の戦い」(かわなかじまのたたかい)が行われた場所でもあります。門前町長野の形成の過程と、時代とともにどのような発展をしていったのかを詳しくご紹介します。

門前町 長野

門前町 津島

門前町 津島
愛知県津島市にある門前町・津島は、歴史的建造物や国の重要文化財が数多く存在する、昔ながらの落ち着いた雰囲気。観光地化されている訳ではないため、今もかつての姿を垣間見ることができます。特に本町通りの街道沿いには古い街並みが残されており、江戸時代から明治、昭和初期の建物が混在しているのも魅力のひとつ。愛知県の中でも歴史を感じられるスポットである門前町津島と「津島神社」について、詳しくご紹介します。

門前町 津島

門前町 坂本

門前町 坂本
滋賀県大津市坂本は、比叡山の東麓、及び琵琶湖の南西岸に位置しており、「比叡山延暦寺」(ひえいざんえんりゃくじ)や「日吉大社」(ひよしたいしゃ)を擁する門前町として有名。門前町坂本の特徴や比叡山延暦寺の歴史について、詳しく見ていきましょう。

門前町 坂本

門前町 嵯峨鳥居本

門前町 嵯峨鳥居本
京都府京都市右京区の、世界的に有名な観光地である京都・嵐山から徒歩圏内に、「愛宕神社」(あたごじんじゃ)の門前町として栄えた嵯峨鳥居本(さがとりいもと)があります。レトロで静かな嵯峨鳥居本は、あまり知られていない京都の穴場観光スポット。嵯峨鳥居本と愛宕神社について、詳しくご紹介します。

門前町 嵯峨鳥居本

門前町 産寧坂

門前町 産寧坂
京都府京都市東山区にある祇園祭の胴元の「八坂神社」(やさかじんじゃ)やランドマークの塔で名高い「法観寺」(ほうかんじ)、清水の舞台で知られる「清水寺」(きよみずでら)は、京都の有名観光スポット。これらの寺社に行くために通過するのが産寧坂(さんねいざか)です。産寧坂には数多くの土産店や飲食店が並んでおり、常に多くの観光客で賑わっています。今回は、産寧坂・八坂神社・法観寺・清水寺について詳しく見ていきましょう。

門前町 産寧坂

門前町 奈良三条通り

門前町 奈良三条通り
奈良県奈良市にある1,000年以上の歴史を誇る古寺の「興福寺」(こうふくじ)と奈良を代表する鹿が集うことで有名な「春日大社」(かすがたいしゃ)は、奈良県でも屈指の人気観光地。興福寺と春日大社に繋がる奈良三条通りは、おしゃれなカフェをはじめ飲食店が立ち並ぶ「ならまち」をゆるりと散策できるだけでなく、お土産処としても有名です。奈良三条通りと興福寺、春日大社の歴史や見どころについて詳しくご紹介します。

門前町 奈良三条通り

門前町 初瀬

門前町 初瀬
「長谷寺」(はせでら:奈良県桜井市)は、奈良県でも人気の観光スポット。自然豊かな山間に位置しており、四季の花や紅葉を楽しめる場所としても有名です。長谷寺の繫栄と共に栄えたのが、門前町初瀬。古今和歌集で名高い「紀貫之」(きのつらゆき)の詩にも登場するほど古来より栄えてきました。今も飲食店や土産店が立ち並び、散策をしながら長谷寺へと向かうことができます。門前町初瀬と長谷寺の特徴や歴史について見ていきましょう。

門前町 初瀬

注目ワード
注目ワード