日本刀を所持するには、特別な免許証などは必要ありませんが、日本刀を所持するための「心構え」が必要です。実は、日本刀は特別な美術品となるため、所持するにあたっては、守らなければならない法律があります。また、日本刀はとてもデリケートなため、保管方法やお手入れが重要です。日本刀にかかわる法律や手続き、運搬方法や手放す方法まで、日本刀の所持について詳しくご紹介します。
日本刀を所持する場合に、欠かせない法律が「銃砲刀剣類所持等取締法」(じゅうほうとうけんるいしょじとうとりしまりほう)、略して「銃刀法」(じゅうとうほう)です。
銃刀法とは、銃砲や刀剣の所持などを規制する法律のこと。刀剣は武器と見なされ、原則として所持することを禁止されています。
しかし、銃刀法第1章の3条にて、美術品として14条の登録を受けたものに限り、所持が認められると記載されているのです。
日本刀を購入し、銃砲刀剣類登録証を付与されたら、所有者があなたになったことを通知する「所有者変更届出書」を提出する必要があります。
これも、銃刀法の第3章17条で、「二十日以内にその旨を当該登録の事務を行った都道府県の教育委員会に届け出なければならない」とされているためです。
まずは付与された銃砲刀剣類登録証に記載されている教育委員会がどこの都道府県なのかを確認すること。次に、その教育委員会宛てに所有者変更届出書を作成して送付しましょう。
所有者変更届出書の用紙は、刀の購入店でもらえることもありますが、もらえなかった場合には登録証に記載されている都道府県にある教育委員会のホームページにアクセスして、所有者変更届出書のひな形をダウンロードし、空欄に刀の登録記号番号やあなたの氏名、住所、電話番号を記入して送付しましょう。なお、所有者変更届の手続き料金は無料です。
相続で刀を所有した場合には、銃砲刀剣類登録証が見当たらないという方がいるかもしれません。そんな場合には、銃砲刀剣類登録証の再交付を受けることができるので大丈夫です。
まずは、あなたが住む地域の警察署に「刀剣類発見届」を提出し「刀剣類発見届出済証」の交付を受けること。交付料金は無料です。すると、各都道府県の教育委員会から「登録審査会」の案内状が届きます。
その案内された日時と場所に、相続された刀本体と刀剣類発見届出済証を持参して、審査を受けましょう。そこで、登録基準を満たす刀である場合には、銃砲刀剣類登録証を発行してもらえます。再交付の方法は、各都道府県によって違いがあるので、確認しましょう。
審査の申請には1振につき6,300円の手数料が掛かります。なお、銃砲刀剣類登録証がないまま刀を所持したり、「所有者変更手続き」を怠ったりすると、銃刀法違反となり処罰されますので、注意しましょう。
日本刀を所持したら、鑑賞したり、お手入れをしたり、飾ったりして楽しみたいと思うでしょう。
しかし、日本刀はとてもデリケートで、日光と湿気が大敵です。
なるべく、刀身は飾らずに「白鞘」(しらさや:白木で作った鞘)に入れて、日光が当たらない湿気が少ない暗い場所で保管しましょう。
なお、「押入」は、家の中で最も湿気が溜まりやすい場所なので避けること。また、樟脳(しょうのう)などの防虫剤も刀が錆びる原因になるので使用しないことです。
「刀掛け」に刀を飾るという場合は、「拵」(こしらえ:刀の外装)のみを飾るのが一般的です。刀身の代わりに「つな木」と呼ばれる木刀を入れて、日の当たらない場所に飾るのが良いでしょう。
どうしても刀身を飾りたい場合には、「銘」が表になるように、「柄」(つか:刀を持つ部分)を左、「鋒/切先」(きっさき:刃先部分)を右に飾ること。
なお、柄を右に飾ると、すぐに刀を抜ける戦闘態勢であることを意味してしまいます。諍いを起こさないためにも、柄は必ず左に向けて飾りましょう。
なお、「太刀」の場合には、正面から観て「Uの字」になるように刃を下に向けて飾るか、縦向きに飾るのが作法です。一方、「打刀」の場合には、正面から観て「ゆるやかな山形」になるように刃を上に向けて飾ること。打刀の場合には、縦に飾る慣習はありません。
刀は正当な理由がなく持ち運ぶことが、銃刀法により禁止されています。しかし、以下の場合に限っては許可されています。
それは、
刀剣類を持ち運ぶときは、銃刀法第3章18条により、銃砲刀剣類登録証を携帯することが定められています。また、銃刀法第2章10条により、おおいを被せるなど、刀剣類を持っていると分からない状態にする必要があるのです。
公共の場に刀剣類を所持していると分かる状態で持ち歩くと、「危険物」と見なされて、懲役または罰金の対象となります。日本刀を持ち運ぶには、刀袋やジュラルミンケース、ゴルフバッグ等に入れて運びましょう。
日本刀を所持するならば、日本刀を手放すときのことも想定しておくべきでしょう。どんなに大切にしていても、健康状態や経済状態により日本刀のお手入れができなくなって、手放す日が来るかもしれません。日本刀は、価値の高い美術品であり、1点ものの日本の宝です。
したがって、手放す場合にも、きちんと刀が継承してもらえるよう手配するのが重要なのです。刀好きな知り合いに「譲渡」できるのが理想ですが、身近にいない場合には、刀の買取をしている刀剣商(刀剣店)に「売却」するのがおすすめです。
売却する場合は、
- 銃砲刀剣類登録証
- 鑑定書
- 拵や刀装具など付属品を揃えて審査してもらうこと。
なお、刀の買取額の相場は、あなたが刀を買ったときの60~80%の価格が目安となります。刀の価格は流行など、あらゆる要素によって変動があるので、見積額は刀剣商(刀剣店)によって違いがあるもの。何件か見積もりを取り、いちばん高いお店で売却するのが良いでしょう。
残念ながら、状態が悪くて、とても買い取れないと言われることがあるかもしれません。そのようなときでも、「一般ゴミ」や「粗大ゴミ」には、絶対に出してはいけません。
日本刀をゴミに出してしまうと、刀は焼却処分されて作品として取返しがつかなくなるうえ、銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)違反行為となり、罰則を受ける可能性もあります。
不要な刀は、必ず、警察に電話連絡して、引き取ってもらいましょう。警察に引き取ってもらう料金は無料ですが、刀は裁断処分されてしまうため、本当に最終手段とするべきです。