刀剣テレビ時代劇では、テレビ時代劇の変遷を紹介します。テレビ時代劇は、NHKと民放それぞれの特徴で発展してきました。国営放送だからできる時代考証などに手間暇をかけた作品、娯楽性の高い民間放送の作品など、それぞれの良さを時に互いに取り入れながら現在まで多くの視聴者を楽しませています。
1980年代前半、NHK大河ドラマではオリジナルドラマが増加します。そして題材の枯渇が危惧され、近現代にまでその時代が広げられます。近現代シリーズを前に、NHK大河ドラマ最後の時代劇となる可能性から、徳川家康が題材とされます。同時に、時代劇の灯を消さないためにNHKでは新大型時代劇をスタート。宮本武蔵、真田幸村を題材とします。民放では、連続テレビ時代劇が減少する一方で、長時間スペシャルが各局で始まります。
1980年代後半、NHK大河ドラマは題材を近現代劇から時代劇に戻した時期です。1987年に始まる時代劇復活から3年間の作品は、現在NHK大河ドラマ歴代平均視聴率のトップ3を誇ります。この時代劇復活の動きは、民放で減少していた連続テレビ時代劇の復活を促します。 大河ドラマの始まり、名称の変遷をはじめとした歴史と視聴率について詳しくご紹介します。
1950年代、NHK、民放各社が一斉に開局。テレビ時代劇の幕も上がります。当初は映画俳優を抱える映画会社各社からの協力が得られず、歌舞伎役者や無名の舞台役者を中心にキャスティングしたドラマを制作します。生放送のみの時代からやがてVTR収録が普及。なかでも特に子供向けのテレビ時代劇が視聴者の心をつかみます。東京オリンピック(1964年)開催を控えた時期、モノクロテレビが家庭にほぼ普及した頃、NHKは開局10周年の記念年「大型時代劇」(のちの大河ドラマ)をスタートします。本格的なテレビ時代劇の制作が始まります。
1960年代後半は、人気映画スターが独立し、自身のプロダクションを興してテレビ時代劇に積極的に出演し始めた時期です。先駆者の三船敏郎のあとには、勝新太郎、中村錦之助(萬屋錦之介)がこの時期続きます。大手広告代理店・電通と黒澤明作品の脚本家達が組んだテレビ時代劇の制作会社もスタートするなど、テレビ時代劇でも映画のようなこだわりを持った作品が次々と登場します。折しも時代は明治100年の時期にあたっており、幕末を題材にしたテレビ時代劇も増加します。
1970年代前半、NHK大河ドラマではその題材が戦国・幕末・忠臣蔵の3本柱が確立した時期にあたります。民放では、【水戸黄門】に【大岡越前】と【江戸を斬る】が加わった3本柱や、【子連れ狼】と【伝七捕物帳】、【遠山の金さん】など、各局で定番となる連続テレビ時代劇が始まります。同時に、【木枯らし紋次郎】に端を発するアウトローな人物を主人公とする連続テレビ時代劇が数多く放送されます。アウトロー作品の多くは、著名な映画監督がテレビ演出を手がけます。
1970年代後半、NHKが「大型時代劇」に「大河ドラマ」の呼称を公式に使用します。その内容もこの時期は、それまでの英雄物語から無名の商人や女性が題材となります。民放におけるテレビ時代劇では、【水戸黄門】がこの時期に印籠の披露が定番化。また、【桃太郎侍】と【新五捕物帳】、【遠山の金さん】と【暴れん坊将軍】、【銭形平次】と【新座頭市】など各局で定番の時代劇が確立します。
1990年代前半、NHK(現・NHK総合)で正月時代劇がスタートします。1980年代後半に放送されたNHK大河ドラマ人気の影響が背景にあり、その時期の3作は現在もNHK大河ドラマ歴代平均視聴率のトップ3を誇ります。民放でもこの時期、それまで減少傾向にあったテレビ時代劇の制作本数が激増します。
1990年代後半、テレビの視聴測定に個人視聴率が導入されます(1997年)。消費意欲が高くないとされる高齢者層に支えられるようになっていたテレビ時代劇は、広告的効果から民放においては制作本数減少の加速につながります。そうした時代、NHK大河ドラマでは原点回帰がなされ、民放では衛星放送にて時代劇の専門チャンネルがスタートします。
2000年代前半、NHK大河ドラマではこれまで夫婦を題材にした内容はありましたが、夫婦の名が初めてタイトルになった作品が登場します。また、主演に男性アイドルの起用が増加します。こうした時期、民放では大奥を題材にした時代劇がヒットするなど、女性視聴者を強く意識した内容に注目が集まります。
2000年代後半、NHK大河ドラマでは司馬遼太郎作品で希少な夫婦の物語が選ばれた時期にあたります。NHKではまた、歴史の教科書には載らない無名の人々の生き方をタイムワープによって描く歴史エンターテインメント番組が人気となります。そして全民放ではテレビ時代劇のレギュラー放送枠が【水戸黄門】のみとなったこの時期、SF的な時代劇漫画原作が好評を博します。こうしたSF作品は時代劇の伝統的な制作会社以外が手がけ、テレビ時代劇に新風を送り込みます。
2010年代前半のテレビ時代劇では、国営の衛星放送で新しいテレビ時代劇の放送枠がスタートします。旧作の放送が中心だった民間の衛星放送局・時代劇専門チャンネルでも新作の制作・放送が開始。民放ではSF的な時代劇漫画を原作とするテレビ時代劇が量産されるなど、2010年代前半は各局でテレビ時代劇が花盛りとなります。
2010年代後半は、テレビ時代劇においてもジェンダーレス社会が強く意識されます。それまでも女性主人公は数多く取り上げられていたNHK「大河ドラマ」に、女性城主という初めての題材が登場します。同じくNHK総合で1960年代から続く時代劇枠でも少女漫画原作が初めて登場し、足軽となる女性が題材です。この時期、文化庁芸術祭・テレビ部門ドラマ・大賞を獲得したテレビ時代劇も女性絵師が題材です。