梨子地肌
なしじはだ
「梨地肌」とも書かれる、地鉄(じがね)の特徴のひとつ。梨の切り口に見られる、粒々とした肌模様のこと。梨のことを有りの実と言うことから「有りの実肌」、または省略して梨肌、あるいは「新藤五国光」(しんとうごくにみつ)の典型であるため、新藤五肌(しんとうごはだ)と呼ばれることもある。
梨子地肌は、沸梨子地肌(にえなしじはだ)、白梨子地肌(しろなしじはだ)、泥梨子地肌(どろなしじはだ)の3種に分類される。
沸梨子地肌とは、地沸(じにえ)に似た肌模様のこと。刀身が焼刃土(やきばつち)に蒸された際に、沸えきれなかったために表出した梨子地肌とされる。相州物、備中水田物、新刀薩摩物などに見られる。
白梨子地肌とは、草葉の上に置いた霜のように、よく練られた地に、針の先で突いたような白い肌模様のこと。上作のみに現れると言われている。
泥梨子地肌とは、白けた肌の底に小さな黒紺色の粒々が一面にある肌模様のこと。泥梨子地肌は甲伏造り(こうぶせづくり)の刀剣に見られる。
甲伏造りとは、面鉄(おもてがね)と言われる、よく鍛えた鉄を割り竹のようにUの字型に成形し、その中に芯となるやわらかい心鉄(しんがね)を包み込んで刀剣の形へ整える鍛錬方法のこと。面鉄の鍛え方から9通りの甲伏せ法があると言われており、古刀では粟田口物、大和物の他、備前物、筑紫物などが甲伏造りとなっている。