刃区(はまち)の部分から刃文が始まる通常の物とは異なり、刃区の下から深く焼き込まれた焼出し。
刃に沿って真っ直ぐに走る刃文の直刃(すぐは)のうち、焼幅(やきはば)が特に広い直刃のこと。
「粟田口物」、「来物」(らいもの)、「古備前物」、「古青江物」、「古三原物」に見られる。多くは小乱(こみだれ)や足(あし)などを交える。
古来より沸出来(にえでき)の刀は折れやすいと言われており、また広直刃は強度に欠点が出やすいため、新刀の時代にはほとんど作刀されなくなった。
なお、刀の切れ味の良し悪しについて、直刃や乱刃(みだれば)が関係しているという説があるが、これは現代では否定されている。刀が折れたり曲がったり、切れ味が悪いなどの原因は、刃文の種類ではなく、刀の形状や焼き入れの上手・下手、また使用者の腕前など様々な理由があるとするのが定説。
明治時代の日本海軍元帥「東郷平八郎」の愛刀である「刀 銘 備前国住長船十郎左衛門尉春光 天文十六年丁未八月吉日」は、室町時代後期に備前国(現在の岡山県東部)で活躍した刀工「長船春光」(おさふねはるみつ)が作刀した広直刃調の刀。末備前物の特徴がよく現れた1振となっている。